“人工出し”は認められるのか?

先日、新規の建設業許可申請をするために、色々要件の確認と共に社長と打ち合わせをしていたところ、『人工出し』という言葉が出てきました。

建設業の仕事の受注は、1件ずつの工事単位が一般的です。しかし、作業員を1日単位で工事現場に従事させるという作業員の工事作業の1日単位で仕事を受注することがあります。

この、作業員を1日単位で指定された日数を働かせることを『人工出し』あるいは『人夫(にんぷ)出し』と呼びます。

今回の記事では、知らないと法律違反行為にもつながってしまう『人工出し』について説明します。

人工出しについて

 

建設業の働き方、仕事のスタイルとしては「■■工事を完成させることで〇〇円」というのが一般的ですが、中には「作業員を1日現場に行かせることで〇〇円」という形で営業をされている方がいます。

これがいわゆる『人工出し(にんくだし)』です。

『人工出し』は、作業員を他社の現場に貸し出し(派遣し)、作業員がその貸し出し先(派遣先)の会社の指揮命令の下に現場作業に従事する働き方です。

人工出しを行う事業者は、人を貸し出し/派遣することで収益を上げます。

このような人を派遣することで収益をあげる事業を労働者供給事業と言います。

 

労働者供給事業は、労働者派遣法に基づく労働者派遣に該当するものを除き、職業安定法により全面的に禁止されています。また、建設現場への労働者派遣は原則として労働者派遣法により禁止されています(一部の業務を除く)。

要するに、人工出しは、いろんな意味で法的にNGとされています。

 

 

 

 

 

 

 

厚生労働省『労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-』より抜粋

人工出しが行われている理由①

ではなぜこのような、法律で禁止されている『人工出し』が建設業界に残ってしまっているのか?と思われる方も多いと思います。

それは、

・日本全体の少子高齢化
・建設業界への若い就業者の流入不足
・技術者の高齢化による就業者不足

といった、どの業種でも共通する原因が挙げられます。

 

 

建設業の常態化した就業者不足によって、多くの建設業者は人手の状態を前提に工事のペースや工事の受注ペースを考えなければならなくなっています。

しかし人が足りないと、計画していた工事のペースに追いつかない、もしくは作業員が不足して工事が受注できないというのが実態として多くあります。

そんな時に人工出しを受けることで、計画通りに工事が進む、もしくは工事が受注できようになり、人手不足の建設業者は助かっているのです。

 

 

また、人工出しをする建設工事業者からすると、多くの作業員を雇用することで

➀自社の工事を有意に受注できる

②自社の工事がなければ他社の工事に派遣して収益を得られる

といったメリットを受けられるため、事業の幅を広げることにつながります。

つまり、派遣元と派遣先の双方のニーズが合致しているからこそ、今も『人工出し』が行われてしまっているのです。

人工出しが行われている理由➁

人工出しが行われている理由にはもう一つ理由があります。

 

それは、

建設業界が労働者派遣において【ネガティブリスト】に設定されているということです。

 

労働者派遣法は、1999年に大幅な規制緩和が実施されており、原則すべての業種で労働者派遣が可能になりました。

実は、この規制緩和が行われるまでは、労働者派遣ができる範囲を示す方法として【ポジティブリスト方式】が採用されていました。

しかし、原則全ての業種で労働者派遣ができるようになったため、一部の労働者派遣が禁止される【ネガティブリスト方式】に切り替わりました。

 

ネガティブリストには、士業や医療、警備業務、建設業務が定められており、派遣できない職種となったのです。

ネガティブリストに含まれる背景①
建設業がネガティブリストに含まれる背景には、建設業界で下請企業が複数存在する重層下請構造ができあがってしまっていることが挙げられます。
そのため、労働者派遣を認めてしまうと、複数の企業が混在する中で、指揮命令の責任者が誰なのかが曖昧になるという事態をまねきかねず、結果として事故を招きかねません。したがって、建設業に従事する労働者が、雇用する者と指示命令する者が一致する請負形態になるよう、雇用関係の明確化や雇用改善を図るためといえるでしょう。

 

 

ネガティブリストに含まれる背景②
また、建設や土木の現場では、昔から「手配師」という、作業員をあっせんする人が多く存在していました。
そして現場からもらった賃金の一部をマージンとして受け取ったため、作業員の賃金が本来より極端に安くなることが常態化していたのです。この「手配師」は、派遣事業者と同じことをしていましたが、いわゆる暴力団に近い存在だったともいわれています。
この状況を是正するため、『建設業務労働者就業機会確保事業制度』というものが設けられ、建設労働者の雇用の改善を図ることになりました。
そんな黒歴史からも、派遣事業のネガティブリストに建設や土木の現場作業が入っているそうです。

 

労働者派遣を禁止されている建設業務は、土木や建築その他工作物の建設・構造・保存・修理・変更・破壊もしくは解体などの作業やその準備に関わる業務を言います。

いわゆる建設工事の現場で直接的な作業に従事する部分が対象となり、土木、建築業の現場職の求職者を紹介することが禁止されています。

(※事務、営業、施工管理職は主任技術者や監理技術者などは労働者派遣が可能)

 

 

よって、建設会社は人材が不足してしまっても、派遣を使う事が出来ず、本来はハローワークや求人広告等でしか技能者を採用できないのですが、古くから業界で行われている『人工出し』というやり方で人手不足を解消しようとするのです。

ですが、他社が行っているから違反ではない、ということではなくこの従業員や作業員の貸し借りが労働者派遣や労働供給に該当すると判断されると、違法行為になってしまう可能性があります。

違反してしまった場合

人工出しを行い労働者派遣法に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。

また、職業安定法の違反においても同様に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。

 

建設業務の人材派遣や職業紹介は禁止されているため、違反した場合には罰則があります。そして罰則があると建設業許可に影響が発生します。

それは、建設業許可の要件には建設業許可を受けようとするものが『一定の欠格要件に該当しない』という項目にあたります。

許可を受けようとする者”には、法人の場合の代表取締役(個人事業主の場合には事業主)や役員、支配人、従たる営業者の代表者などが含まれます。

欠格要件には、該当者が定められた法律の規定に違反して罰金刑に処せられて刑の執行終了日もしくは刑の執行を受けなくて良くなった日から5年を経過していない者という条項があります。

つまり、この定められた法律には、建設業法や建設基準法などと合わせて、職業安定法労働者派遣法が定められているのです、

よって、違反が発生して代表者や役員が罰金刑に処された場合には、その時点で以降5年間は欠格要件に該当してしまうことになり、建設業を継続することは難しい状況になってしまいます。

自身の会社と仕事を守るためにも、法令違反となる『人工出し』については気を付けましょう。

人工出しは全て違反なのか?

ここまで人工出しについて記載しましたが、人工出し=全て違法という訳ではありません。

 

労働者派遣法で派遣することを禁止されている建設業であっても、厚生労働省から『建設業務労働者就業機会確保事業』という許可を得ることで、自社で雇用する従業員を他の事業者が管轄する工事現場で業務に従事させることが可能になります。

 

これが『人工出しが行われている理由➁』でも記載をした、建設労働者の雇用の改善を図るために設けられた制度になります。

この許可を得た事業主団体が間に入って行う場合を除き、派遣することも、受け入れることも禁止です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厚生労働省『建設業務労働者就業機会確保事業』より

 

 

 

 

 

 

 

厚生労働省『建設業務労働者就業機会確保事業』より

 

なお、この許可には要件が認められており、全ての要件をクリアしたうえで計画書を作成

し、申請者の所在地を管轄する都道府県労働局を経由して、厚生労働大臣に申請を行う必要があります。

※申請の代行については、社会保険労務士にご相談ください。

人工出しと建設業許可における“経験”

さて、社長と打ち合わせをしていると「人工出しの経験は実務経験や工事実績に該当するのか?」という質問をよく受けます。

 

結論からいうと、残念ながら認められません。

 

建設業法上工事経歴として認められるのは、「工事を請け負う場合」です。

 

「人工出し」は工事の応援として、工事技術者を派遣しているだけですから、工事を請け負っているとは認められません。したがって、工事経歴書に記載できないのはもちろんのこと、経営業務管理責任者の所定年数の経営経験や専任技術者の実務経験にも含められません。

 

「裏技で何とかなりませんか?」ともよく言われますが、ありません。

ここで言う「裏ワザ」とは、虚偽の内容で本来は満たして無い状況を満たしている体を装う方法です。

つまり、言い方を変えると黒を白にする方法です。

 

虚偽申請は、罰則があります。
当事務所は法令違反に該当する申請のお手伝いはお断りいたします。
人工出しではないけど…

ご相談頂くお客様の中には、実際にきちんと請負契約を結んでいるにもかかわらず、普段から使っている言葉であるが故に、請求書等に【人工出し】と記載していらっしゃるケースも過去にありました。

ですが、【人工出し】という記載では実務経験や工事実績として認められません。

実務経験や工事実績として認められない=証明書として使用することができない

建設業許可を取るためには確実に「建設工事」を施工し、契約書、見積書、請求書にもしっかりと分かるように記入しておくようにしましょう。

まとめ

建設業界で当たり前に行われている『人工出し』ですが、実は法令違反になってしまうのです。

他がやっているから自分達も大丈夫、バレなければ大丈夫、なんて考えていると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。
そして、建設業許可が取得できない、取消・剥奪されてしまいます。
建設業許可が一旦取り消し・剥奪されてしまうとその時点から5年間は許可の再取得ができなくなってしまいますし、建設業許可がなくなると実質的に建設業の営業ができなくなり、建設業としての事業の継続が危うくなります。

知らないうちに法令違反していた、なんてことにならないよう注意しましょう。

また、せっかく他の要件を満たしているのに、証明書が使えなかった、証明できずに許可を取れなかったというのは勿体ないです。
『人工出し』が違法であることをしっかりと認識して事業を行うようにしましょう。

建設業許可取得について

 

建設業許可を取得したいけど、なにから始めたらいいのか疑問に思う方もいると思います。

そもそも、建設業許可とはどういった場合に必要なのか、考えてみましょう。

建設業許可が必要な場合、

 

① 1件の請負代金1500万円以上の建築一式工事

① 1件の請負代金500万円以上の建築一式工事以外の工事

 

これらが該当する場合は、許可申請が必ず必要になります。

 

◆許可取得における要件

 

建設業許可を取得する前にまず、事前に要件にあてはまっているか確認する事が必要です。

大きく分けて、6つの要件があります。

 

【要件①】経営業務責任者がいること

【要件②】専任技術者が営業所ごとにいること

【要件③】誠実性があること

【要件④】財産的基礎又は金銭的信用を有してること(500万円以上)

【要件⑤】欠格要件に該当していないか

【要件⑥】適切な社会保険に加入していること

 

弊所でも、建設業許可を取得したいと相談に来られて、確認すると

この6つの要件のどれかがあてはまらず、断念する方も多くいらっしゃいます。

 

しかし、これらの要件を満たしてないからと言って諦めないでください。要件を満たす為に、さまざまなやり方があります。

それでは一つずつ見ていきましょう。

 

◆経営業務責任者がいること

 

経営業務責任者になれる人は一定の地位がある人に限られます。具体的には、

◎法人の場合 … 常勤の役員(業務を執行社員、取締役、執行役員又はこれらに準ずるもの)

 

◎個人の場合 … 事業主本人または、支配人登録をした支配人

 

また、下記いずれかに該当する必要があります

 

① 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

 

② 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者準ずる地位にあたる者(経営業務を執行する権原の委任を受

けたものに限る。)として経営業務を管理した経験を有する者

 

③ 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営管理責任者を補佐する業

務に従事した経験を有する者

 

④ 常勤役員等のうち1人が以下のいずれか(イ、ロ)に該当するものであって、かつ、①~③に該当するも

のを該当常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くものであること

 

※取締役1名と取締役を直接補佐する者で経営業務の管理責任者の要件を満たします。

 

 

イ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地

位にあるものとしての経験を有する者(財務監理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者に限る。

ロ、5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し、2年以上役員等としての毛権を有する者

 

直接補佐する者(当該建設業者において5年以上の建設業の業務経験に限る)

① 財務管理の業務経験を有する者

② 労務管理の業務経験を有する者

③ 業務運営の業務経験を有する者

 

①~③は一人が複数の経験を兼ねることができますが、他社での業務経験はみとめられません。

 

これらに満たした方が経営業務管理責任者としてみなされます。

 

◆専任技術者が営業所ごとにいること

 

専任技術者とは、その営業所に常勤(テレワークを含む)して、専らその職務に従事することを要する技術者とされています。

もし、複数業種の許可を取得希望の場合は、1人が要件を満たす場合、兼ねることが可能ですし、経営業務責任者と専任技術者はそれぞれの要件に合致する限り、兼ねることが可能です。

 

そもそも、専任技術者とされるにはどのような要件が必要か見ていきましょう。

 

① 許可を受けようとする建設業種に関し、高等学校又は、中等教育学校において、指定学科を卒業した後、5年以上の実務経験を有する。

大学又は、高等学校を卒業した後3年以上の実務経験を有する。

 

② 許可を受けようとする建設業種に関し、10年以上の実務経験を有する。

 

③ 許可を受けようとする建設業に応じて、建設工事の施工に関連する資格を有している。又は、国土交通省が上記①、②に掲げる者と同等以上の知識及び、技術又は技能を有するものと認定した者

(一般建設業許可を受ける場合)

 

これらの①~③のどれかに該当すれば専任技術者としての要件を満たしていることになります。

 

◆誠実性があること

 

誠実性があるということ。と言われるとどのような基準なのか難しいと思いますが新潟県では、具体的にこのように記されています。

 

① 「不正又は、不誠実な行為」をした事実が覚知された場合

① 建築士法、宅地建物取引業法等で不正又は不誠実な行為等を行ったことにより、免許等の取り消し処分を受け、その処分から5年を経過しない者である場合

※不正な行為とは、請負契約の締結又は履行に際して、詐欺、脅迫、横領、文書偽造など法律に違反する行為

※不誠実な行為とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担について請負契約に違反する行為

 

◆財産的基礎又は金銭的信用を有してること

 

経営業務責任者、専任技術者ともに要件を満たしているが、この金銭的な要件がクリアできず建設業許可取得を諦める方も多いのではないでしょうか。

 

① 自己資本金額が500万円以上あること

② 500万円以上の資金を調達する能力があること

 

上記の①であれば直前の貸借対照表が確認されます。会社設立時又は許可取得前に資本金を500万円以上にしていれば問題ありません。

しかし、資本金が500万円を満たない場合は、通帳の残高証明(500万円以上あるもの)でも可能です。それが②に該当します。

また、②にあるように、資金を調達する能力があること。なので、500万円を持っていない場合は、融資を得て申請することも可能です。

 

◆欠格要件に該当していないか

 

取得するためにやっと経営業務管理責任者と専任技術者が揃った!となっても、

この欠格要件が一つでもひっかかってしまうと建設業許可を取ることはできません。この欠格要件を軽く見てはいけません。

審査中に発覚し、許可が下りない場合もあります。

 

個人事業 … 個人及び支配人等

法人 … 役員及び営業所長等

が欠格要件の対象者になります。

 

許可を受けた後に、申請者が欠格要件に該当することとなった場合、建設業許可が取り消される可能性がありますので、必ず確認しましょう。

(欠格要件に関する記事もありますのでご覧ください。)

 

 

◆適切な社会保険に加入していること

 

「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」それぞれに適切な届出を行っている必要があります。

 

◎健康保険・厚生年金保険

法人又は家族従業員を除く従業員が5人以上の個人事業主の場合は、原則適用事業所になります。

ただし、事業主が健康保険適用除外承認を申請し、年金事務所が承認した場合、適用除外となります。

 

◎雇用保険

・1人でも労働者を雇っている場合、法人、個人の別なく雇用保険の適用事業所となります。

・法人の役員のみ、又は個人事業主及び同居親族のみで構成される事業所の場合、雇用保険は原則適用除外となります。

 

◆まとめ

建設業許可を取得することで大規模な建設工事を請け負うことができる点や、対外的な信用度が上がる点、下請工事を受注しやすくなる点など、多くのメリットが考えられます。

今後の事業の成長・発展という観点からみると、建設業許可を取得するメリットは多くあります。

現在建設業許可の取得をお考えでしたら、トラスト行政書士事務所にお問合せください。

主任技術者と監理技術者の違い

 

建設工事をする上で、元請け、下請け関係なく、建設業法(26条1項)では現場に「配置技術者」を置くことを義務付けられています。

配置技術者とは、「主任技術者」と「監理技術者」の2種類に分かれています。

今回は役割、それぞれの要件をまとめてご紹介します。

 

 

◎主任技術者

どんな小さな工事現場にも配置が必須になります。

主な仕事の内容が、建設工事を適正に実施するために工事現場において施工計画の作成や工程管理、品質確保の体制整備、仮設物・資材等の品質管理、安全管理、その現場で施工に従事する技術者の指導監督などが役割です。

 

 

◎監理技術者

発注者から直接工事を請け負い(元請け)かつ、4,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上を下請契約して施工する特定建設業者にあっては、主任技術者ではなく、管理技術者の配置が必須になります。

仕事の内容は主任技術者の仕事内容と同じく、建設工事を適正に実施するために工事現場において施工計画の作成や工程管理、品質確保の体制整備、仮設物・資材等の品質管理、安全管理、その現場で施工に従事する技術者の指導監督、

その他にも下請負人の指導、監督するという総合的な役割があります。

その為、主任技術者よりも厳しい資格や経験が求められます。

 

簡潔にまとめると…

 

・主任技術者と監理技術者は、工事の請負金額の大きさで配置する

 

・監理技術者が配置されている現場には主任技術者の配置は不要

 

では、主任技術者と監理技術者それぞれどういった要件でなれるのでしょうか。

 

◆主任技術者の要件

 

  • 許可を受けようとする建設業に応じた一級、二級国家資格者であること
  • 指定学科を修了し、一定の実務経験期間を満たした者
  • 10年以上の実務経験期間を満たした者

 

高等専門学校の指定学科の卒業者 実務経験3年以上
大学の指定学科卒業者 実務経験3年以上
それ以外の学歴の者 実務経験10年以上

 

 

◆監理技術者の要件

 

  • 指定建設業の7業種については、一級国家資格等の取得者であること
  • 指定建設業以外の22業種については、一級国家資格等の資格者であること、若しくは一定の要件を満たした実務経験がある者

 

【指定建設業(7業種)】

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 舗装工事業
  • 造園工事業

 

となります。

 

 

◎主任技術者から監理技術者への変更

当初は主任技術者を設置した工事で、大幅な工事内容の変更等により、工事途中で下請契約の請負代金が4500万円以上となった場合、発注者から直接建設工事を請負った特定建設業者は、主任技術者に代えて、所定の資格を有する監理技術者を設置しなければなりません。

ただし、工事施工当初においてこのような変更があらかじめ予想される場合には、当初から監理技術者になり得る資格を持つ技術者を設置する必要があります。

 

 

◎専任技術者

主任技術者の要件と、建設業許可を取得する際に必要な「専任技術者」の要件は同じですが、役割としては異なっています。

専任技術者は基本的に、請負・契約・入札などについて専門的な知識を持つ資格者です。

営業所で原則常駐が必要なため、基本的に現場に出ることはありません。

ただし、一人親方など、下記要件を満たす場合には、主任技術者との兼任も認められています。

 

1.当該営業所で契約締結された工事である事

2.工事現場と営業所が近接し、常時連絡が取れる事

3.工事現場が『専任』を要しない規模である事

4.建設業者と技術者が恒常的な直接雇用関係であること

 

 

まとめ

以上のように、監理技術者、主任技術者の違い、専任技術者について紹介してきました。監理技術者と主任技術者の役割に大きな違いはありませんが、監理技術者には下請けを指導する事や、広範囲の管理が求められる為、要件のハードルも高いです。ですが、どこの現場にも配置技術者は義務付けられていますし、主任技術者の需要も多いです。

トラスト行政書士事務所では建設業許可のお手続きだけではなく、ご相談も承っておりますので建設業許可の取得をお考えの方はお気軽にご相談ください。

 

自宅を営業所として建設業許可を取ることはできるのか。

ご相談事例

個人で建築事務所営んでおり、私名義の自宅の一室を事務所として使用しています。事務作業は妻が手伝い、他に従業員はいません。建設業許可を取得するには、自宅では難しいと聞いたことがあります。自宅以外の場所に事務所を移さないと建設業許可を取得することはできませんか。

 

 

回答

ご相談者様のように、人を一人も雇っていない場合は、個人・法人に関わらず、自宅の一室や一部を事務所として業務を行っているケースは少なくありません。結論からいいますと、「営業所」としての実態を確認できる資料をそろえることが出来れば大丈夫です。今回のご相談者様のケースでは、次の書類を提出し、自宅の一室が「営業所」であることが認められ建設業許可を取得することができました。

 

 

 

営業所の確認書類

1.  建物謄本(法務局にて取得します)

2.  建物図面(建物内のどこを事務所として使用しているかをわかるように示します)

3.  使用承諾書(事務所の使用については、賃貸契約を結んでいなかったので、使用権原を確認できる書類として作成しました)

4.  写真(建物の外観、看板、事務所内を撮影したもの)

 

 

建設業許可を申請するための許可要件の一つに「営業所」があります。

この営業所について詳しくご説明いたします。

 

建設業許可の「営業所」とは

常時建設工事の請負契約のための見積、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所をいいます。また、他にある店舗や営業所に対し請負契約に関する指導監督を行うなど、建設業に係る営業に実質的に関与する場合も、「営業所」になります。

次のような事務所は「営業所」としては認められません。

  • 建設業に関係のない本店、支店及び営業所
  • 単なる登記上の本店
  • 単なる打合せスペース
  • 現場の作業事務所

 

営業所の要件とは

  • 請負契約のための見積、入札、契約締結に係る実体的な行為をおこなっていること。
  • 営業所の使用権原があること
  • 看板、標識等を設置していること
  • 備品が揃っていること。(デスク、パソコン、コピー機等)
  • 自宅兼事務所の場合、居住用とは明確に分けていること。
  • 経営業務の管理責任者が常勤していること
  • 専任技術者が常勤していること

 

確認書類とは

要件が満たしているかどうかは、書類の提出により証明します。

営業所の使用権原を確認する書類

(1)自社所有の場合、以下のいずれか1点

・営業所建物の不動産登記簿謄本

・営業所建物の資産評価額証明書

(2)賃貸の場合、以下のいずれか1点

・営業所建物の賃貸借契約書

・公共料金の領収書(賃貸借契約書がない場合)

 

営業所の写真

・営業所の看板を含め、建物の全景を撮影したもの

・執務室内を撮影したもの

・周辺状況も含め、標識(法第40条)の設置場所が確認できるよう撮影したもの

・記載内容が判読できるように標識をアップで撮影したもの

・営業所名が表示された入口等を撮影したもの

・フロア案内を撮影したもの(ビル内に営業所を設けている場合に限る)

 

 

トラスト行政書士事務所では、多くの経験と実績により、「営業所」として要件を満たしているか確認・アドバイスさせていただきます。写真撮影や図面作成もお受けいたします。是非ご相談ください。

個人事業主の経営経験の年数が足りない場合、建設業許可は取得できないのか。

弊所でご相談頂き、建設業許可を取得されたケースです。

相談者様は、3年前に独立し、主に配管工事業を営んでおりました。元請け業者から「これからは、建設業許可を持っていないとなかなか仕事が出せなくなる」と言われて、建設業許可について調べてみたところ、どうやら自分は経営経験の年数が足りていないので、許可をとることは難しいということがわかりました。それでもなんとかして建設業許可を取ることはできないものか。という理由でご相談に来られました。

建設会社で2年勤めてから転職し、個人経営の建設業者で15年勤めたのち独立。役員経験や補佐経験は一切無いということでした。

 

経営者としての経験も経営を補佐した経験もないのにどうやって許可を取得することができたのか。

お話を伺っていくと、既に会社を退職された相談者様のお父様が建設会社で長年役員をされていたということがわかりました。

相談者様は「建設会社の役員をしていたと言っても、自分とは違う電気工事を請負う会社だったため、まさか父親の経験が生かせるとは思ってもみませんでした。」とおっしゃっていました。

もちろん、お父様の経営経験の年数が要件を満たしているからといって、すぐに許可を申請できるわけではありません。相談者様は、個人事業主であったため、個人事業主の場合は、経営経験や補佐経験が事業主になければならないからです。

 

そこで、ご提案したのが、個人事業を法人化し、お父様を役員として迎え入れることです。

ただし、法人化については、顧問先の税理士の先生にもご相談頂くようお願いしました。お父様についても、親子とはいえ役員として就任していただき、重要な立場になられる訳ですから、慎重にお考え頂きたいとお伝えしました。

 

数日後、ご相談者様から連絡があり、「会社を設立することを、税理士事務所に相談したところ、事業も軌道に乗ってきたところでもあり、法人化することは問題ないと言っていただきました。私も今が法人化にするいいチャンスではないかと思いました。父も、第二の人生に生きがいができたと役員を引き受けてくれることになりました。」

相談者様はお父様ととても良好な関係にあり、お父様も相談者様の経営を常に気にかけていらしたということでした。

こうして、会社設立と建設業許可申請の手続きを同時に進め、無事に新規許可を取得することができました。

 

 

建設業許可の要件を「自分で調べた」、「既に許可を取得している同業者に話をきいた」、結果、許可の要件を満たしていないからと建設業許可の取得をあきらめていませんか。

多くの実績をもつトラスト行政書士事務所に是非一度ご相談ください。

弊所では、司法書士事務所も併設しておりますので、会社設立と建設業許可の手続きを同時に進めることが可能です。一度のご来所で会社設立と建設業許可のご相談をお受けすることが出来ますので、お客様の貴重な時間を節約することができます。

 

 

合同会社か株式会社か

これから建設業で起業する方、または個人事業として既に建設業を営んでいる方が法人化し会社を設立するという場合に、株式会社と合同会社どちらがお勧めなのでしょうか。

 

私たちの事務所でお手伝いをさせていただく場合は、圧倒的に株式会社の方が多いですし、株式会社をお勧めしております。

 

株式会社の方が合同会社と比較しても知名度・信用が高い

仮にあなたが一般の方の立場で自宅のリフォーム工事や修繕工事を依頼する場合に、株式会社○○と合同会社▲▲からほぼ同額の見積もりで担当者の対応も同じだとしたらどちらに発注しますか。

やはり、株式会社の方が安心できるのではないでしょうか。

 

株式会社は合同会社より設立費用が高い

株式会社を設立する場合は約30万円、合同会社を設立する場合は約15万円となっており、約倍であり、15万円程の差があります。

ただし、設立後のランニングコストについてはほぼ同額になります。

株式会社、合同会社設立件数

令和2年 令和3年 令和4年
株式会社 85,688 95,222 92,371
合同会社 33,236 37,072 37,127

 

最近は合同会社の設立が増えてきておりますが、やはり設立時の金額が安いというところに理由があると思われます。

 

たとえば、飲食店や美容室等は合同会社でも全く問題ありません。皆さんが食事に行くときに、そのお店が株式会社なのか合同会社なのかは関係ないですよね。

 

そもそもお店の名前には会社名が記載されてなく株式会社なのか合同会社なのかわかりません。

しかし、建設会社においては発注した会社が信用の置ける会社なのかということが重要になってきます。

最近は、建設会社を合同会社で設立した方が株式会社への変更するという依頼を多くいただいております。

会社設立時の僅か15万円程度の費用よりも後々のことも考え「信用」を大切にすべきでしょう。

 

建設会社が会社設立する場合の目的(定款)

会社を設立する場合には、定款という会社の規則を定めた書類を作成しなければなりません。

この定款の中に「目的」という項目があります。

 

目的というと

「地域社会に貢献する」

「地域で一番の住宅会社になる」

というようなイメージがあるかもしれませんが、ここは少し違います。

 

たとえば

「土木工事業」

「リフォーム工事業」

などの取扱業務を記載するような感じになります。

 

あくまでも私の感想、意見になりますが、今まで多くの建設業者様のお手伝いをしてきましてこの目的部分を見ると優良企業かどうかを判断することができます。

 

定款に記載する「目的」は、現在行っている事業だけでなく、将来行う予定の事業を記載することができます。

たとえば、当初は「下水道工事」を行い、近い将来「産業廃棄物収集運搬業」を行いたいと考えていたとします。

現在行っている事業のみ定款で定めるということになると、新規業務を行う時点で定款変更や変更登記の費用が追加で必要になります。

 

そこで通常、会社設立時に司法書士から「将来行う可能性がある事業をあらかじめ記載することによって費用を軽減できますよ」といったアドバイスを受けることになります。

この司法書士のアドバイスは全く間違いではないのですが、ここぞとばかりに目的を20個も30個も定める会社があります。

大谷翔平でさえ二刀流です。

建設業もやってインターネット通販もやって飲食店もやって上手く行くでしょうか。

一つの事業が上手くいかない人が、二つ三つの事業を成功させることは難しいということになります。

 

私の経験上、建設会社で優良企業とされる会社はこの目的が2~3個というケースが多いです(大規模な会社を除く)。

やはり、軸がしっかりしているということなのでしょう。

 

会社の定款の目的と言うより、いかに本業に対して真剣に取り組んでいるかということだと思います。

建設業許可取得に要する事務所の要件

◇建設業許可取得に要する事務所の要件

 

建設業許可を取得する上で、営業所(=事務所)を設置することが必須になります。

建設業許可の申請書では、営業所とする場所の使用権限があるのか、という点と営業所が実在し、事業を行えるような環境であるかどうかを確認するために必要な書類と写真を添付して申請書類として提出します。

 

では、営業所として認められるのはどのようなものなのか、「建設業許可事務ガイドライン」には下記のとおりになっています。

 

 

 

2.営業所の範囲について

「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。

また「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。

 

出典:「建設業許可事務ガイドライン」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001581332.pdf)

 

 

わかりやすくまとめると、

 

請負契約の見積り、入札、請負契約等を発行し、建設業工事に係る業務を行う場所を、建設業法上、営業所となります。

また、営業所自体が請負契約等を行っておらず、他の事務所に対して請負契約に関する指導等の監督を行う場合は営業所として認められることになります。

 

◇営業所としての要件

 

  • 請負契約の見積もり、入札、請負契約等の実態的な業務を行える営業所
  • 電話、机、事務台帳、応接場所が備わっている
  • 他社または住居等と明確に区分されている
  • 経営業務管理責任者または支店長が常勤している
  • 専任技術者が常勤している
  • 営業所としての使用権原を有している
  • 看板、郵便受けに商号・営業所名が表示され外部から建設業の営業所だとわかる

これらの要件をクリアしていることが条件になります。

 

◇「主たる営業所」とは

 

建設業許可の営業所には「主たる営業所」と「従たる営業所」の2種類に分けられます。

 

主たる営業所とは…

・経営業務管理責任者

・専任技術者

が常勤している場所であり、建設業に関する営業を統括する事務所です。

従たる営業所がなく、主たる営業所のみで営業する建設業者が弊所では圧倒的に多いので、一般的には本社や本店といわれるようなところが主たる営業所とされます。

 

しかし、登記上の本店では建設業を営まず、別の事務所が建設業における営業所である場合、建設業許可においては、その営業所のことを事実上の事務所として「主たる事務所」とすることができます。

ここで、気を付けたいところは、

 

・経営業務責任者と専任技術者の常勤

・請負契約等の締結

 

です。これらは営業所で行うことになりますので、会社の代表が経営業務責任者や専任技術者の場合は気を付けなければならないところです。

 

◇「従たる営業所」とは

 

従たる営業所とは、主たる営業所以外で建設業を行う場合必要であり、経営業務管理責任者の代わりに工事請負契約締結等の代理権限を委譲されている者(令3 条に規定する使用人)の常勤が必要となります。

 

また、従たる営業所にも専任技術者の常勤が必要になります。

ですので、従たる営業所1つを設置する場合は、主たる営業所と合わせて専任技術者は2名の方が必要になります。

 

◇営業所として認められないものは?

 

建設業法における営業所には該当しないものは次のとおりです。

 

・単なる登記上の本店

・経理業務等の事務作業を行うだけの事務所

・倉庫

・海外の支店等

 

 

◇申請の提出書類について

 

冒頭でも記載させていただいた通り、建設業許可の提出書類は使用権限があるかどうかの確認と写真(営業所の写真)で判断されます。

新潟県では、自己所有の場合は登記されている場合は、不動産登記簿謄本、未登記の場合は資産評価額証明書の提出が求められますし、賃貸の場合は使用承諾書や賃貸借契約書、公共料金の領収書でも確認資料として認められています。

 

 

◇まとめ

 

建設業許可における営業所の要件をこれまでお伝えしましたが、許可取得後は、建設業許可を受けた業種については、軽微な建設工事(500万円未満の工事)のみを請負う場合でも、届出をしている営業所以外で請負契約(見積・入札など)を締結することはできません。

つまり、基本的に営業所以外での請負契約等はできない、ということです。

逆に取得していない業種については軽微な建設工事しか請け負うことができませんし、営業所以外でも可能になります。

 

また、建設業許可取得後、営業所の住所変更や業種変更、新設は、必ず変更届が必要になります30日以内の届出が必要ですので、提出書類の作成を考えると早くから動き始める必要があります。

 

会社分割(新設分割)をする場合、建設業許可はどうなるのか?

建設業許可を取得して建設業を営んでいる法人が、建設業に関する事業の切り離しを行い、新会社を設立して権利を承継することを『新設分割』といいます。

その際、新会社に建設業許可を引き継ぎたいと考えるのが一般的だと思いますが、新設会社はもともとの法人とは別会社となるので、そもそも引き継ぐことが出来るのかが問題となります。

 

先日、弊所で会社分割(新設分割)のお手続きをご依頼いただいたお客様からも問い合わせがありました。

果たして、建設業許可についても承継できるのでしょうか?

 

承継できるかどうかは許認可によって違う

合併や会社分割といった組織再編を行う際、取得済みの許認可がどうなるかは許認可の種類によって違います。

それぞれの許認可が何に該当するかをまずは確認しなければなりません。

パターンとしては3つ挙げられます。

➀自動的に承継されるもの
事業を承継する際、許認可も承継会社へそのまま承継されるパターン
➁行政庁の承認などが必要なもの
承継することは可能ですが、行政庁の承認を事前に得る必要があるパターン
➂再申請の必要があるもの
会社分割による許認可の承継が認められておらず、新規取得し直す必要があるパターン

 

法律により合併や会社分割で許認可が承継する規定が無い場合は、新たに許認可を取得しなければならないのです。

許認可のことを考えないで、組織再編の手続だけ行うと、後で『許認可が無いから営業ができない!!』なんて大変なことになるので注意が必要です。

 

今までは承継できなかった!?

実はこれまで、建設業者が事業譲渡などの【組織再編(譲渡・合併・分割等)】を行った場合、譲受会社、合併又は分割後の存続会社は許認可を承継することが出来ず、新たに建設業許可を取り直さなければなりませんでした。

そうすると、新たに許可が下りるまでの間、建設業許可の“空白期間”が生じてしまい、建設業を営むことが出来ないという事態に陥ってしまいます。

また、

• 建設業許可番号が変わってしまう
• 建設業許可業者としての地位を引き継ぐことができない
• 経営事項審査の結果を引き継ぐことができない
• 廃業してから新たに許可を取得するまでに500万円以上の工事を受注することができない

 

といった不具合が出てきます。
せっかく、建設業の事業譲渡や、建設会社の合併・分割をして会社の再編を行おうとしているのに、「建設業許可業者の地位を引き継げない」「新たな許可を取得するまでは未許可業者になってしまう」というのでは、会社を再編するメリットが失われてしまいます。
そして、「建設業許可」を引き継ぐことができず、新たに建設業許可を取得しなおさなければならなかったので、手続きも2度手間になります。

 

しかし、令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、

建設業許可に関する会社分割に関する制度が新設されました。
この改正により、【組織再編】を行う場合は、あらかじめ事前の認可を受けることで空白期間を生じることなく、元の会社の建設業者としての地位を承継することができるようになりました。

つまり、これまでできなかった建設業許可の承継が可能となったのです。

※なお、この事前認可においては、承継する会社が建設業の許可要件を備えていることが必要です。

 

認可手続きの流れ(新潟県の場合)

1 事前相談

2 申請書提出(効力発生日の30日以上前)

3 審査

4 認可

5 通知書送付

6 後日提出資料の提出

 

新潟県の場合、空白期間を無くすよう許可を取得するためには最低でも30日以上前に申請書類一式を提出する必要があります。

その前に官公庁との事前協議が必須となりますので、2~3か月前には手続き着手する必要があります。

スケジュールに余裕をもってご相談ください。

 

認可申請の条件

認可申請ができるのは、分割会社(元の会社)と承継される新会社の双方が新潟県知事許可業者、又は建設業を営む営業所が新潟県内にのみある場合に限ります。

 

元の会社と承継される新会社のいずれか一方でも、新潟県以外の許可を受けた建設業者である場合は、国土交通大臣の認可が必要となりますのでご注意下さい。

 

◇承継可能な業種について

許可を取得している業種のうち、一部の業種だけを承継することはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不可能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇引き続き使用できる番号について

分割会社(元の会社)の許可番号が引き継がれます。

ただし、複数の建設業許可業者間での分割(承継)が行われる場合は、引き継ぐ許可番号の選択が可能です。(官公庁との事前協議が必須となります。)

 

◇効力発生日以降の決算報告書について

分割される新会社は、分割会社(元の会社)の建設業許可業者としての地位を承継することとなるため、分割会社(元の会社)の決算報告を提出する義務があります。

分割日時点で分割会社(元の会社)の未提出の決算報告がある場合は、分割される新会社がその分の決算報告を提出する必要があります。

 

◇専任技術者について

承継される許可業種の専任技術者は、分割した日以降も原則として業種毎に同じ専任技術者が引き続き常勤する必要があります。

もし異なる専任技術者を置く場合、分割日から2週間以内に変更届を提出しなくてはなりません。

 

◇認可後の許可の有効期間

分割当日から許可は有効です。許可の有効期間は分割の日の翌日から5年間となります。

 

◇承継の範囲

“建設業者としての地位を継承する”とは、建設業の許可を受けたことで発生する義務や権利のことで、承継した側は承継された側と同じ立場になります。

したがって、承継された側が受けた【監督処分】や【経営事項審査の結果】についても承継することになるので、注意しましょう。

 

一方、罰則については、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った法人に対して刑罰を科すものであるため、承継されることはありません。

 

 

 

まとめ

今回ご依頼いただいたお客様は前もってご相談頂いていたので、空白期間なく許可を承継することが出来ました。

 

会社分割は手続きに長期間を要します。

官公庁においても審査に時間がかかると思われますので、あらかじめ余裕をもって準備し、事前協議する必要があります。

 

また、あまり多いケースではないため、手続きに戸惑ったり大切なポイントを見落としていたなんてことにならないよう、慎重に進めなくてはなりません。

そして、法令や運用は変わる可能性がありますので、組織再編をする際は、常に最新の法令や運用を確認する必要もあります。

 

ぜひ、経験豊富なトラスト行政書士事務所にご相談ください。

辞任(退任)した役員が建設業許可の経管者(経営業務の管理責任者)だった。

更新許可の申請をご依頼頂いたお客様のケースです。

 

新規のお客様より更新許可のご依頼を頂きました。はじめての更新ということでした。

とび・土工・コンクリート、内装仕上、電気工事業の3業種を取得されており、お預かりした書類の確認をすすめていくと、あることに気付きました。少し前に役員1名が辞任しており、変更届は提出されていない状態でした。更に、辞任した役員は経管者(経営業務の管理責任者)であり、取得している建設業許可3業種中(とび、内、電)、1業種(電)の専任技術者であることがわかりました。

 

幸いなことに残る役員の内、1名が経管者(経営業務の管理責任者)の要件を満たしていました。

専任技術者についても従業員の中に資格保有者がおりましたが、もともとこの業種については廃業する予定で役員も辞任されたということでしたので、今回は更新許可を申請する前に、経管者の交代、役員の辞任、専任技術者(電)の削除、業種(電)の一部廃業の変更届を提出し更新の許可を受けることができました。

ご依頼頂いたお客様は、更新許可については期限前に確実に申請しなければならないことはわかっていたけど、それ以外に変更届を提出が必要なことは全く頭になかったということでした。

 

 

このように、建設業許可の経管者(経営業務の管理責任者)であることをうっかり忘れて、辞任(退任)登記を申請してしまい、経管者(経営業務の管理責任者)が不在になってしまった。専任技術者であることをうっかり忘れて交代できるものがいないまま退職を受理してしまい、専任技術者が不在となってしまった場合、どうなるのでしょうか。

 

 

建設業許可は、「経管者(経営業務の管理責任者)」や「専任技術者」が1日でも不在となれば、要件を満たさなくなり許可の取り消しとなります。

許可が取り消しとなれば、請負金額500万円以上の工事(建築一式は1500万円以上)を請負うことができなくなります。契約後であれば、関係者に多大な迷惑をかけてしまうことになり、取引先からの信用を失い、経済的な損害を被るリスクを伴います。うっかりでは済まされません。しかし、要件を満たす者が他にいれば、交代してから2週間以内に変更届を提出し、建設業許可を継続することができます。

 

 

経管者(経営業務の管理責任者)の辞任

法人の場合

  • 5年以上の建設業の経営経験(取締役経験)のある常勤取締役が複数名在籍している場合は、適任者を選ぶ。
  • 外部から要件を満たす人を招き常勤役員として取締役に就任させる。

法人・個人事業主の場合

  • 準ずる地位(一定期間の経営業務を補佐した経験がある)に該当する者に交代する。

個人事業の場合

配偶者や子供、共同経営者など長年補佐してきた者が該当します。

法人の場合

役員に次ぐ職制上の地位にある人であり、取締役会設置会社の執行役員や建設業において業務を行っている部長などです。

この場合、地位や経験を証明する書類が必要になります。役員や個人事業主の経験を証明するより書類も多く、難易度が高いと言えます。

※必要な書類については各都道府県によって異なります。

 

 

専任技術者の辞任

次のいずれかの要件を満たす者を選任する。(一般建設業の場合)

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験
  • 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験、もしくは専門学校卒業後3年以上実務の経験に加えて専門士か高度専門士の称号
  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事で10年以上実務の経験
  • 国家資格者

 

 

次期経営者になりうる人材の育成、従業員に国家資格を取得させる、所定の学科を卒業した者の雇用など、経営者は突然の辞任や退職に備えた早めの対策を考えておかれることをおすすめします。

また、役員変更登記についても、通常、司法書士事務所では、お客様より依頼された通りに手続きをします。よって、許認可に不慣れな司法書士事務所では、役員の辞任について全く疑問に思わないことも少なくありません。許認可をお持ちの事業者様は、許認可に詳しい司法書士事務所にご依頼されることをおすすめします。

 

 

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