建設業許可を取得したら、毎年決算終了後4か月以内に「決算変更届」を提出することが義務付けられているのはご存じでしょうか。
建設業許可を取得後、新規申請した時の決算が終了したら、「決算変更届」を提出しなければなりません。許可を取得している間は、毎年最新の「決算変更届」を提出します。期限も設けられていて、決算終了後4か月以内に提出しなければなりません。例えば6月決算の場合、10月末日が提出期限ということになります。
決算変更届でこんなお困りごとはありませんか
- 手続きが難しく困っている
- 行政書士に頼まず自社で手続きを進めたいが、なかなか時間が取れない
- 建設業許可に詳しい行政書士に相談しながら決算変更届の手続きを進めたい。
なかなか難しい決算変更届の手続き
決算変更届は、建設業法で独自に決められた書式があり、税理士が作った決算書をそのまま提出することや、丸写しすれば完成というわけにはいきません。いざ自分で作成しようとするといろいろな疑問点が出てきます。
決算変更届を作成するためには決算書を読み取る知識が必要ですが、本来の業務が忙しく知識修得の時間が取れない、工事経歴書・工事施工金額の内記載方法が分からないなどお悩みになることが多いようです。
当事務所にご相談いただくケースでもいつまでに提出したらいいかわからないとかどんな書類を作成したらいいかわからない、書類作成に費やす時間がないなど様々な原因で決算変更届の手続きを進められない方がいらっしゃいます。
そもそも決算変更届はどのような手続きが必要になるのか
ところで決算変更届を行うためには、通常どのような書類をつくり、どんな手続きを進めていくことになるのでしょうか。
決算変更届は、次の決められた書式に作成します。
- 「財務諸表」
貸借対照表、損益計算書・完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表、附属明細表(資本金の額が1億円超であるもの又は直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上である株式会社のみ)
- 「工事経歴書」 主な工事内容を記載します(許可を取得した業種のみ)
- 「直前3年の各事業年度における工事施工金額」業種ごとの売上金額
- 事業報告書
上記に事業税の税証明書を添付します。
- は税理士が作成した「決算書」をもとに、建設業許可の「決算変更届」を作成します。そのまま転記しても大丈夫な場合もありますが、建設業会計の勘定科目に組み替える必要がある場合は、丸写しというわけにはいきません。
- ~④についても記載のルールがありますので、ルールを無視した内容で提出しても「やり直し」となります。
このほかに、この会計期間(たいていは1年間)に従業員数や会社の定款、令3条の使用人が変更になった場合、健康保険に新しく加入した場合(人をはじめて雇用したことにより、雇用保険に新規適用届を提出した場合等)は併せて届出します。
決算変更届作成の注意点
- 財務諸表の勘定科目は、建設業会計特有の勘定科目に組み替える
決算変更届は、建設業会計特有の勘定科目を用いる必要があります。
そのため、税務署に提出した決算書の勘定科目が建設業法施行規則にもとづいていない場合には、勘定科目の組み替えを行う必要があります。
通常勘定科目とは異なる勘定科目
- 売上高➡完成工事高
- 製造原価➡完成工事原価(労務費・材料費・外注費・経費で構成)
- 売上総損益➡完成工事総利益
- 仕掛品➡未成工事支出金
- 売掛金➡完成工事未収入金
- 前受金➡未成工事受入金
- 買掛金➡工事未払金
なお、税務署に提出する決算書を建設業法施行規則に準拠した決算書を作成してもらうよう税理士に依頼しておくことで、余計な手間をかけずに決算変更届を作成することができます。
- 税込み・税抜き表記を統一する
財務諸表、工事経歴書、直前3年の工事施工金額とすべての金額の表記を「税込み」か、「税抜き」かに統一します。決算書が税込み・税抜きのどちらで作成されているかわからない場合は、税理士作成の決算書の「個別注記表」に記載されていますが、それでもわからない場合は税理士にご確認ください。
ただし、経審を受ける場合は「税抜き」で作成します。
- 金額は千円単位で表記する
決算書は1円単位で表記されていますが、千円未満を切り捨てて記載します。こうすると合計の誤差(1、2千円)が生じますが、問題にされることはありません。
- 完成工事原価報告書の作成
「完成工事原価報告書」は必ず作成しなければなりません。
税理士が作成する決算書の中には「完成工事原価報告書」が無い場合もあります。「完成工事原価報告書」は、次の材料費・労務費・外注費・経費の項目からなり、自分で作成するとなると大変ですので税理士に相談されることをおすすめします。
材料費とは
工事に使用した材料の仕入れにかかった費用。工事のために購入した材料や製品など。
労務費とは
工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料 及び手当等。
アルバイトや正社員など雇用形態に関係なく、給料や賃金、手当は全て労務費に含まれますが、現場代理人や現場事務所の事務員に支払う給料などは、労務費には含まれません。
外注費とは
自社が請け負った業務を他社や個人事業主へ工事を外注した際にかかった費用のことです。ただし、材料費などを自社で負担し、工事のみを外注した場合には、労務費の欄にある労務外注費に含めます。また、人員が足りないなどの理由で、他社に応援を依頼した場合にかかった費用も労務外注費に含まれることが一般的です。
経費とは
材料費・労務費・外注費以外に工事を完成させるためにかかった原価は、全て経費となります。重機の使用料や工事にかかった光熱費、現場代理人や現場事務所の事務員に支払う給料、保険料、家賃、警備にかかった費用など様々なものが該当します。
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- 工事経歴書の作成
1. 経営事項審査を受ける場合と受けない場合での記載方法は異なります。
2. 営業所の専任技術者は、原則として工事現場の主任または監理技術者にはなれません。 ただし、特例として以下の要件を全て満たす場合、営業所の専任技術者は主任または監理技術者になることができます。
特例の条件
① 専任技術者の属している営業所において請負契約が締結された建設工事であること
② 工事現場と営業所が近接(概ね 10km 以内)し、営業所と常時連絡をとる体制にあること
③ 所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
④ その工事の専任を要しない監理技術者等であること
※専任を要する監理技術者等とは、元請・下請の別に関わらず、公共性のある施設または工作物等に関する重要な建設工事で、工事一件の請負代金の額(税込)が 4,000 万円(建築一式工事 にあっては 8,000 万円)以上を請 負った現場に配置されるものをいいます。
- 工事名に個人名が特定されないように記載します。 例 新潟太郎様鄭新築工事➡N様邸新築工事
- 何の工事を請け負っているのかわかるように工事名を記載します。
例 電気工事を取得している場合
✖T様邸新築工事 〇T様邸電気工事やT様邸配線工事など
申請先の行政庁のホームページにて、申請書の書式だけではなく、記載例も詳しく載っていますが、ここでは、「経営事項審査」を受けない場合の工事経歴書の記載方法についてご説明いたします。
- 業種ごとに作成(例 内装仕上工事と電気工事を取得している場合は、 内装仕上工事で1枚作成、電気工事で1枚作成します)
- 金額の大きい工事から順に10件を記載、または各業種の合計金額の5割以上の金額の工事を記載します。
- 10件の中に元請けと下請け工事がある場合、元請け工事から記載します(元請け工事をすべて記載してから下請け工事を記載)。
例 塗装工事と板金工事の2業種を取得している場合
前期の売上高3500万円
内訳 塗装工事売上高1500万円(内、元請け工事1000万円)
板金工事の売上高2000万円(内、元請け工事50万円)
工事経歴書を2枚作成します。
塗装工事-金額の大きい工事を10件記載する、または
工事金額の合計が750万円に達するまで記載する
750万円以上の工事があれば1件の記載で大丈夫です。
金額の大きい工事10件中、元請工事5件、下請工事5件の場合、元請工事を金額の大きい順に5件記載したあと、下請工事を5件を記載する。
管工事-金額の大きい工事を10件記載する、または
工事金額の合計が1000万円に達するまで記載する
1000万円以上の工事があれば1件の記載で大丈夫です
金額の大きい工事がすべて下請工事の場合、下請工事を10件記載する
- 元請け工事で下請け業者に発注した金額の総額が4500万円(建築一式工事なら7000万円)をこえる工事の場合は、配置技術者の欄に「監理技術者」を記載。それ以外の工事の場合は「主任技術者」を記載する。
- 配置技術者に関しては、請負金額4000万円以上の工事(建築一式の工事の場合は8000万円以上の工事の場合)は「工事への専任性」を求められるので、他の工事現場との重複は認められない点に注意が必要です
- 納税証明書を添付する
県知事許可を取得している場合は、「法人事業税」、「個人事業税」の納税証明書を取得して添付します。県税の窓口にて取得できます。
証明書の使用目的は「建設業法第11条の変更届出書に添付」ですが、
窓口で何に使用するのか聞かれますので、「建設業の決算変更届に添付します」と伝えてください。
当事務所の解決事例
当事務所では、以上のような手続きを要する決算変更届につき、これまで様々な状況のお客様よりご依頼をいただき、業務にあたってまいりました。
解決事例1
長年、決算変更届の事務を行っていた事務員さんが退職されたとのことでしたが、建設業以外の兼業があり、後任の方にはとても難しく手に負えないとのことで、ご依頼をいただきスムーズに届出を完了することができました。
解決事例2
建設業許可を取得されて初めての決算変更届というお客さまで、ご担当者の方は、異業種で長年経理をされていた方で、経理に関する知識も豊富であるとのことでした。しかし、建設業許可の工事経歴書の記載方法にはルールがあり、そこを理解されないまま、結局書類を完成することができず、当事務所にご依頼いただきました。また、決算書に関して税理士の作成したものを「そのまま」転記するのではなく、建設業会計の勘定科目に置き換える必要があります。ご自身でチャレンジし、かなり苦戦されたようでしたが、当事務所にご依頼いただきスムーズに届出を完了することができました。
決算変更届のこと、当事務所に相談してみませんか
決算変更届の手続きをご自身で進めようとしても、なかなか難しいとか、時間が取れないといった状況も多いのではないでしょうか。
当事務所にご依頼いただきますと決算変更届の手続きをスムーズに進められる、難しい書類作成に悩まされずに済むなど様々なメリットがあります。
決算変更届でお困りの方は、トラスト行政書士事務所に一度ご相談ください。
トラスト行政書士事務所に決算変更届をご依頼いただくメリット
- ご自身で手続きされる場合と比較して圧倒的に時間・労力を削減することができます。
- 決算変更届の手続きだけではなく経審・入札をお考えの方にも対応できます。
- 決算変更届や更新時期には予めお知らせをしますので失念により許可が失効するという事が防げます。
決算変更届の業務内容
事前相談から書類作成、申請までが含まれており、お客様には最低限の労力で完了いたします。
決算変更届の料金
44,000円(税込)
対象地域
新潟県内
お客様にお願いしていること
次の3つことをお願いしています。
1.工事経歴書の記入 ご説明の上、記入見本をお渡しします。
2.委任状の押印(変更届の委任状と納税証明書の委任状の2通)
3.決算報告書写しのお預かり
工事経歴書はご記入いただいたものを確認した上で当事務所にて作成します。
どうしても時間がないお客様には、売上一覧や請求書の控え等をお預かりし当事務所にて作成いたします。
行政書士からのアドバイス
毎年決算終了後4か月以内の届出が義務付けられています。4か月というと結構余裕があるように感じるかもしれませんが、税理士が作成した決算書が手元に届くのは税務申告後になりますので、実質2~3か月ということになります。また、税理士が作成した決算書類をそのまま使用するのではなく、建設業会計の勘定科目に組み替える必要があります。
決算変更届を行わないことにより、更新、業種追加、経審等の許可の申請を受けつけてもらえません。また、建設業法第50条により、6カ月以下の懲役又は100万円以下の罰金とされております。
稀に更新時期直前に5年分まとめての依頼がありますが、本来、決算変更届は毎年決算終了後4カ月以内に提出すべきものです。この部分につきまして、新潟県も指導が厳しくなってきており、コンプライアンスが求められる時代、法律を遵守しましょう。