かつては3K(きつい、危険、きたない)と言われてきた建設現場ですが、建設業は近年大きく変わりつつあるのをご存じでしょうか?
建設業のDX
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ビッグデータやAIなどの最新デジタル技術を活用して、業務や組織を改革していくことで、近年は多くの企業や業界、自治体DXなど公共団体でもDX化が進んでいます。
このDXの波は建設業界にも来ており、国土交通省が推進している「i-Construction」、建設(Construction)と技術(Technology)を掛け合わせた造語である「Con-Tech(コンテック)」などの造語を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。どちらもICTなどの最先端技術を建設現場に導入しようとする取り組みを示す言葉で、建設業のDXを推進しようとする意図があります。
DX化でどのような進化があったのか?
オックスフォード大学が認定した、10年後にはAIに奪われる仕事には、測量技術者、地図作製技術者、建設機器オペレーター、塗装工など多くの建設関係の業種がありました。さすがに、これらすべてが実現している訳ではありませんが、2023年現在でもDX化により建設現場には多くの進化が見られます。
例えば、AIに奪われる仕事にも上げられていた測量ですが、衛星を活用して測量する技術はほぼ出来上がりつつあり、トランシットを利用した現地での測量を行わなくても正確な測量が出来るようになる日も近そうです。同様に、建設重機の自動運転や鉄筋溶接ロボットの活用なども既に建設現場では行われていますし、土木工事ではドローンを活用する現場も多くなっています。
DX化による影響は?
こういったDX化により、危険作業の減少や労働効率の改善などが見られます。例えば、施工管理をアプリで一元管理する現場監督が増えており、各工程ごとの職長への連絡が一括で行えたり、時間単位での工期のズレもリアルタイムで共有できるようになり、連絡ミスや発注ミスを減らすことができます。
また、デジタルサイネージなどを使った、視覚による情報共有では、動画を使った外国人労働者への直感的な説明や、周辺住民へ向けた行程提示などに活用され、現場の負担が大きく減っています。
事実、国土交通省と建設業振興基金による調査によれば建設現場で働く女性技能者も年々増えており、15%程度となっているそうです。全産業での女性就労者の割合は40%を超えているので、まだまだ低い水準ではありますが、年々増えており、働きやすくなっている証拠だと思います。
働きやすい職場に近づく
かつて3Kとして嫌われていた建設現場ですが、DX化により働きやすい職場に変わりつつあります。
DXにより、生産性が向上し、事故も減ることで、建設現場の魅力が向上し、効率化が進むことでワークライフバランスもとりやすくなるでしょう。少ない作業員で事故や無駄も少なく作業ができれば、労働者の賃上げにもつながります。
公共工事においても、週休1日が当たり前だった建設現場で、週休2日を評価するような動きも出て来ておりDX化の影響により働き方改革も実現しつつあります。他業種では週休2日は当たり前ですので、人材不足が深刻な建設業界では、働きやすさはとても大切です。
また、国土交通省も建設キャリアアップシステム(CCUS)などを開始し、DXに合わせて人材確保を目指す動きも目立ちます。
建設キャリアアップシステムは、技能者の資格や経験を客観的に評価し、キャリア形成や処遇改善につなげるシステムで、公共工事ではすでに36道府県と14の政令指定都市が導入しています。技能者にIDカードを持たせ、現場に入る際にカードリーダーにかざすことで、現場の経験を評価していく仕組みで、DX化により普及し始めた制度と言えるでしょう。
キャリアアップシステムが普及することで、技能者の経験を適切に評価することができ、労働者の賃上げにもつながります。
DX化の課題も多い
着実に進んでいる建設業のDXですが、課題も多いです。まず、現場作業員の高齢化です。少し古いですが、平成28年度の調査では、すでに現場作業員の34%が55歳以上であり、ITの活用などには馴染めない方が多いです。
同様に、外国人技能実習生も多く、高齢者や外国人がDXの活用に着いてこれない現場があるのも事実です。また、建設業は民間工事に比べ公共工事が40%を占める特殊な業界です。公共工事は行政が発注しますが、最先端技術は民間から普及していくのが常なので、公共工事に導入されるのはどうしても遅くなりがちです。
まとめ
最後に、課題も多い建設業のDXですが、徐々に普及して来ており、きつい・危険・きたないの3Kと言われていた建設現場も、給与・休暇・希望の新3Kと言われ、誰もが憧れる業界になるといいと思います。