
500万円以上の大きな工事を請負いたいため、建設業許可の取得を考えています。お金の要件が一番不安です。出費が多く、常に預金が500万円以上超えているわけではありません。それでも建設業許可の申請はできますか?
回答:トラスト行政書士事務所一般建設業許可の場合、財産要件は、「直近の貸借対照表の自己資本額」か「残高証明書」か「融資証明書」で500万円以上あることを証明します。残高証明書の場合、500万円以上継続してもっていることを証明する必要はなく、「500万円以上の資金を調達する能力があること」を証明できれば、要件を満たします。
なので、常に預金が500万円を超えているわけではないという状態であっても、一時的に500万円以上の預金が確認できるタイミングで残高証明書を用意できさえすれば、財産要件を満たすことができます。
ただ、残高証明書の有効期間は2週間以内となり、500万円以上が確認できる残高証明書を発行できるタイミングで建設業許可の申請をしなければいけません。財産要件、残高証明書を取得する時の注意点についてご説明します。
建設業許可を取得するために、銀行口座に500万円以上の預金を常に置いておかなければならない、というわけではありません。
一般建設業許可の場合、財産的基礎については、一定の要件のいずれかを満たす必要があります。
新規申請の場合、代表的には、
- 自己資本額が500万円以上ある
- 500万円以上の資金を調達する能力がある
のいずれかによって確認します。
そのため、決算書上の自己資本が500万円未満であっても、500万円以上の預金残高証明書などによって「500万円以上の資金を調達する能力」が確認できれば、財産要件を満たせる可能性があります。
ただし、
「500万円あれば何でもいい」
というわけではありません。
申請時期、証明基準日、残高証明書の取り方などに注意が必要です。
今回は、建設業許可の「財産的基礎」について、できるだけ分かりやすく解説します。
そもそも、なぜ建設業許可に財産要件があるの?
建設工事は、工事を始めてから完成・引渡しまでに一定の期間がかかります。
その間には、
- 材料費
- 人件費
- 外注費
- 車両費
- 重機費
- その他の経費
など、さまざまな支払いが発生します。
そのため建設業許可では、請負契約を適切に履行するための一定の財産的基礎または金銭的信用を有していることが求められています。
つまり、
「建設工事を請け負ったものの、資金が足りず工事を続けられない」
という事態を防ぐための要件の一つと考えることができます。
建設業許可には「一般」と「特定」がある
建設業許可には、
一般建設業許可
と
特定建設業許可
があります。
この2つは財産要件が大きく異なります。
まず大切なのは、
「500万円以上の工事を請け負いたいから特定建設業許可が必要」
というわけではないということです。
一般建設業と特定建設業の区分は、主として元請として工事を請け負った場合に、一定額以上の下請契約を締結するかどうかによって判断します。
現在、発注者から直接請け負った工事について、特定建設業許可が必要となる下請契約の金額基準は、原則として5,000万円以上、建築一式工事については8,000万円以上です。
したがって、
「500万円以上の工事を受注したい」
という理由だけであれば、まずは一般建設業許可を検討するケースが多いでしょう。
一般建設業許可の財産要件
一般建設業許可では、次のいずれかに該当することが必要です。
①自己資本額が500万円以上
会社の場合、原則として直近の貸借対照表の「純資産合計額」で確認します。
例えば、
資産 1,500万円
負債 900万円
純資産 600万円
であれば、
自己資本額600万円
となります。
この場合、500万円以上なので、財産的基礎の要件を満たすことになります。
②500万円以上の資金を調達する能力がある
では、決算書上の自己資本が500万円に届かない会社は、建設業許可を取れないのでしょうか。
そうではありません。
新規申請などでは、
500万円以上の資金を調達する能力
によって財産要件を確認する方法があります。
具体的には、取引金融機関が発行する、
500万円以上の預金残高証明書
または
500万円以上の融資証明書
などによって確認します。
そのため、
「普段は500万円も預金していない」
という会社でも、資金調達能力を証明できれば許可取得の可能性があります。
500万円を「ずっと」持っている必要はない
ここは非常に誤解の多いところです。
例えば、
「建設業許可を取るためには、銀行口座に500万円を1年間置いておかなければならない」
ということではありません。
一般建設業許可の新規申請では、自己資本額500万円以上のほか、500万円以上の資金を調達する能力があることによって確認することができます。
つまり、
申請時に必要な財産的基礎を証明できるか
が重要になります。
ただし、残高証明書には証明基準日の期限があります。
ここを間違えると、せっかく500万円を用意しても申請に使えない可能性があります。
残高証明書を取得するときの注意点
新潟県の現在の案内では、500万円以上の資金調達能力を残高証明書等で確認する場合、証明基準日が申請日前2週間以内のものが必要とされています。
ここで重要なのは、
「証明書の発行日」ではなく「証明基準日」
です。
例えば、銀行から証明書を受け取った日が10月20日だったとしても、証明基準日が9月1日であれば、申請日との関係で使用できない可能性があります。
したがって、残高証明書を取得するときは、
「建設業許可申請に使用するので、いつの時点の残高証明が必要なのか」
を金融機関に確認することが大切です。
残高証明書は「複数の銀行を合算」できる?
新潟県の現在の取扱いでは、複数の残高証明書を合算して500万円以上とすることもできます。
ただし、その場合は、
同じ証明基準日の残高証明書
を提出する必要があります。
また、預金残高証明書と融資証明書を合算して500万円以上とする方法は認められていません。
どちらか一方だけで500万円以上を確認できるようにする必要があります。
このあたりは、金融機関ごとに証明書の発行方法が違うこともありますので、事前に確認しておくと安心です。
③過去5年間、建設業許可を継続して営業している場合
一般建設業許可では、
許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績
がある場合にも財産要件を満たすことができます。
そのため、すでに建設業許可を取得して5年間継続して営業している会社の場合、新規申請時のように500万円の残高証明書を用意する必要はありません。
新潟県の現在の取扱いでも、更新申請についてはこの「過去5年間継続して営業した実績」によって財産的基礎を確認する仕組みになっています。
業種追加のときも財産要件を確認することがある
ここも建設会社の経営者の方には知っておいていただきたいポイントです。
例えば、
「すでに建設業許可を持っているから、業種追加なら財産要件は関係ない」
とは限りません。
新潟県の現在の取扱いでは、許可取得後5年に満たない場合の業種追加については、自己資本額500万円以上または500万円以上の資金調達能力などによって財産的基礎を確認します。
一方、許可取得後5年を満たしている場合は、過去5年間の許可を受けて継続して営業した実績によって確認します。
したがって、
「業種追加だから財産要件は関係ない」
と考えず、現在の許可取得時期も確認しておく必要があります。
特定建設業の財産要件はかなり厳しい
特定建設業許可の場合は、一般建設業とは異なり、次のすべての要件を満たす必要があります。
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
会社の財務状況から欠損の額を計算します。
単純に「赤字だから特定建設業が取れない」という意味ではありません。
決算書の内容をもとに、所定の計算方法によって判断します。
②流動比率が75%以上であること
計算式は、
流動資産 ÷ 流動負債 × 100
です。
例えば、
流動資産 7,500万円
流動負債 1億円
であれば、
7,500万円 ÷ 1億円 × 100 = 75%
となります。
したがって、この場合は要件を満たします。
③資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上
さらに、
資本金の額が2,000万円以上
かつ
自己資本の額が4,000万円以上
であることが必要です。
この3つはすべて満たす必要があります。
特定建設業は「大きな工事を受注したいから必要」ではない
ここも非常に重要です。
特定建設業許可が必要かどうかは、
元請として工事を請け負い、その工事を施工するために一定額以上の下請契約を締結するか
という点がポイントになります。
例えば、
「5,000万円の工事を元請として受注したい」
というだけで、直ちに特定建設業許可が必要になるわけではありません。
自社がどの程度の金額を下請に発注するのかを確認する必要があります。
逆に、元請として大きな工事を受注し、下請契約の金額が基準額以上となる場合には、特定建設業許可が必要になります。
「500万円以上の工事」と「500万円の財産要件」は別の話
建設業許可のご相談で、非常によくある誤解です。
例えば、
「500万円以上の工事を請け負いたいから、500万円の預金が必要なんですよね?」
という質問です。
実は、この2つの「500万円」は別の話です。
工事金額の500万円
建設業許可が必要となる請負金額の基準に関係する金額です。
財産要件の500万円
建設業許可を取得するために、請負契約を履行するための財産的基礎・金銭的信用を確認するための基準です。
同じ500万円という数字が出てくるので混乱しやすいのですが、意味はまったく違います。
財産要件は「申請前に確認」することが大切
建設業許可の申請を準備して、最後に財産要件でつまずくと大変です。
例えば、
「技術者の要件も大丈夫」
「経営業務の管理体制も大丈夫」
「書類もほぼ揃った」
と思っていたところ、
「決算書の自己資本が500万円を下回っている」
ということがあります。
この場合、残高証明書などによって資金調達能力を証明できるかを検討する必要があります。
また、残高証明書を利用する場合には、証明基準日の期限もあります。
そのため、
財産要件は、申請書を作る前に確認しておく
ことをおすすめします。
【ご相談事例】500万円の預金が常に必要だと思っていた会社
以前、建設業許可を検討している会社様から、
「うちは資金繰りの関係で、常に500万円以上の預金があるわけではありません。だから許可は取れないですよね?」
というご相談をいただきました。
詳しく決算書を確認したところ、自己資本額は500万円を下回っていました。
そこで、預金残高証明書によって500万円以上の資金調達能力を証明する方法についてご説明しました。
このように、
「自己資本が500万円未満=建設業許可が取れない」
というわけではありません。
会社の財務状況によって、どの方法で財産要件を確認するのが適切なのかを判断することが重要です。
建設業許可の財産要件を確認するときのチェックポイント
最後に、建設業許可を検討している会社様が確認しておきたいポイントをまとめます。
一般建設業の場合
□ 直近決算の自己資本は500万円以上あるか
□ 500万円未満の場合、500万円以上の資金調達能力を証明できるか
□ 残高証明書の証明基準日は適切か
□ 複数の残高証明書を使う場合、証明基準日は同じか
□ 預金残高証明書と融資証明書を混在させていないか
□ すでに許可を取得して5年以上経過しているか
特定建設業の場合
□ 欠損の額が資本金の20%を超えていないか
□ 流動比率が75%以上あるか
□ 資本金が2,000万円以上あるか
□ 自己資本が4,000万円以上あるか
特に特定建設業の場合は、決算書をもとに複数の財務基準を同時に確認する必要があります。
まとめ
建設業許可の財産要件は、
「銀行口座に500万円をずっと置いておかなければならない」
というものではありません。
一般建設業許可の新規申請では、
①自己資本額500万円以上
または
②500万円以上の資金を調達する能力
などによって財産的基礎を確認します。
また、すでに許可を受けて5年間継続して営業している場合には、過去5年間の営業実績によって確認できる場合があります。
一方、特定建設業許可では、
- 欠損の額
- 流動比率
- 資本金
- 自己資本
について、より厳しい基準が設けられています。
建設業許可は、財産要件だけでなく、
経営業務の管理体制・営業所技術者等・誠実性・欠格要件など、複数の要件を総合的に確認する必要があります。
「500万円はあるけれど、ほかの要件は大丈夫なのか?」
「自己資本が500万円に届かないけれど、許可を取れるのか?」
「特定建設業許可を取得できる財務内容なのか?」
など、分からないことがありましたら、申請準備を始める前にご相談ください。
新潟県で建設業許可をご検討の建設会社様へ
トラスト行政書士事務所では、新潟県内の建設会社様を対象に、
- 建設業許可の新規取得
- 建設業許可の更新
- 業種追加
- 決算変更届
- 経営業務の管理責任者等の変更
- 営業所技術者等の変更
- 経営事項審査(経審)
- 入札参加資格
- 建設業許可の承継・事業承継
など、建設業許可に関する手続きをサポートしています。
また、当事務所には司法書士部門も併設しているため、増資、役員変更、本店移転、会社設立など、建設業許可と関連する会社手続きについても一緒にご相談いただけます。
建設業許可は、
「許可を取れるかどうか」を確認してから準備を始めること
が重要です。
特に財産要件については、決算書を確認することで早い段階から判断できることがあります。
新潟市及び新潟市近郊で建設業許可の取得をお考えの会社様は、お気軽にご相談ください。
一般建設業と特定建設業
まず最初に、建設業の許可は、「一般建設業」と「特定建設業」にわかれています。それにより、財産要件が異なります。
「特定建設業」とは、発注者(注文者)から直接請負う1件の工事につき、総額4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となる下請契約を締結して施工しようとする者。
「一般建設業」 特定建設業の許可を受けようとする者以外の者。
要するに、請負工事の全てが「下請」または、上記金額のような大きな工事の下請契約をしない場合は、「一般建設業」となります。
一般建設業許可の財産要件
下記事項の証明が必要です。
倒産が明白である場合を除き、次に掲げるいずれかの要件を備えていること。
(イ)自己資本の額が500万円以上であること。
(ロ)500万円以上の資金を調達する能力があること。
(ハ)許可申請直前の過去5年間許可を継続して営業した実績を有すること。
直近の決算書類で自己資本額が500万円以上であれば問題ありません。こちらが(イ)に該当します。
自己資本額の計算方法は
貸借対照表の資産総額-負債総額=純資産の合計額(自己資本の額)です。
純資産の額500万円未満の法人は、会社名義の銀行口座に500万円以上のあることを残高証明で確認します。こちらが(ロ)に該当します。
残高証明書の注意点
- 申請日から証明現在日が2週間以内のものを用意して下さい。
発行日ではなく、証明現在日(いつ時点での残高証明か)が重要です。 - 銀行により、どの時点での預金残高証明書を発行できるかはことなります。事前に銀行に確認して下さい。
- 申請書に不備がある場合は、残高証明書を再度提出する必要がありますので、予め申請書類を提出先に確認してもらうといいかもしれません。
万が一、書類に不備があり、提出しなおす際に口座に500万円以上の残高がないと、申請自体できなくなりますので、要注意です。
建設業許可後に財産要件の確認をされる場合はあるのか
建設業許可の有効期間は5年間です。5年ごとに更新の手続きが必要となりますが、更新時は財産要件の確認はされません。
しかし、建設業許可取得後5年以内に業種追加する場合は、再度財産要件の確認が必要となります。
5年ごとの更新手続きを1回でもしていれば、(ハ)に該当し過去5年間許可を継続して営業した実績を有しているので、再度財産要件の確認はありません。
特定建設業の財産要件
倒産が明白である場合を除き、次に掲げる全ての要件を備えていること。
(イ)欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
→こちらは決算書の欠損の額÷資本金=20%を超えていないこと。
(ロ)流動比率が75%以上であること。
→こちらは決算書の流動資産÷流動負債×100=75%以上あること
(ハ)資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること。
→こちらは決算書の資本金が2000万円以上かつ、純資産の額が4000万円以上であること。
決算書より、上記条件を確認します。
特定を受けるには設立と同時には出来ません。前提に決算を迎えていることが必要です。また、更新時にも全てクリアしている必要があります。更新時に該当していないと特定建設業は取り消されます。取り消されると、特定建設業の工事は出来ません。この場合、一般建設業又は業種追加の許可申請をしなければ、500万円以上の工事を請け負うこともできません。特定建設業は大きな仕事をするので資金面も余裕があることが必要で、ハードルが非常に高いです。



