建設会社を経営していると、
「会社の資本金を増やしたい」
「金融機関から融資を受けるために増資を検討している」
「事業を拡大するため、資本金を増やしたい」
「特定建設業許可を取得するために増資を検討している」
といった場面があります。
しかし、増資は単純に会社の口座へお金を入れれば完了するものではありません。
会社法に基づく決議や払込みを行い、法務局へ変更登記を申請する必要があります。
また、増資にはいくつかの方法があり、誰が出資するのか、どのような形で出資するのかによって手続きが変わります。
さらに建設会社の場合には、増資と建設業許可、特に特定建設業許可の財産的基礎との関係についても確認しておくことが重要です。
この記事では、建設会社の増資について、行政書士法人・司法書士法人として会社登記と建設業許可の双方をサポートしている立場から、わかりやすく解説します。
建設会社の増資でこんなお困りごとはありませんか?
- 増資をしたいが、何から始めればよいのかわからない
- 株主総会の決議方法がわからない
- 株主割当と第三者割当の違いがわからない
- 増資に必要な書類がわからない
- 本業が忙しく、手続きをする時間がない
- 社長から会社への貸付金を資本金にしたい
- 建設機械や車などを現物出資したい
- 建設業許可との関係で増資を検討している
- 特定建設業許可を取得したい
- 特定建設業許可の財産的基礎を満たせるか確認したい
- 経営事項審査(経審)への影響を確認したい
- 専門家に相談しながら増資を進めたい
このようなお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。
そもそも「増資」とは?
増資とは、簡単にいうと、会社の資本金を増やすことです。
一般的には、会社が新しい株式を発行し、その株式を引き受ける人から払込みを受けることによって増資を行います。
例えば、現在の資本金が500万円の会社が1,500万円の増資を行い、全額を資本金に組み入れた場合、増資後の資本金は2,000万円となります。
ただし、増資した金額のすべてを資本金にする必要はありません。
払込金額の一部を資本金とし、残りを資本準備金とすることもできます。
そのため、
「いくら増資するのか」
だけでなく、
「増資額のうち、いくらを資本金にするのか」
についても検討する必要があります。
建設会社が増資する主な理由
建設会社が増資を検討する理由はさまざまです。
財務基盤を強化したい
増資によって自己資本を増やすことで、会社の財務基盤を強化することができます。
建設業では、工事を受注してから入金されるまでに時間がかかることもあり、材料費、人件費、外注費、車両費、建設機械など、工事を進めるための資金が必要になります。
事業規模を拡大するタイミングで、増資を検討する建設会社もあります。
金融機関との関係を考えて増資する
「金融機関から融資を受けるために資本金を増やしたい」というご相談もあります。
もちろん、増資したからといって必ず融資を受けられるわけではありません。
金融機関は、
- 売上
- 利益
- 借入金
- 自己資本
- 資金繰り
- 事業計画
など、さまざまな要素を総合的に見て融資を判断します。
ただ、増資によって自己資本を充実させることは、会社の財務基盤を整える一つの方法です。
特定建設業許可を取得するために増資するケース
建設会社の増資で、特に重要なのが特定建設業許可との関係です。
建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」があります。
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事について、一定額以上の下請契約を締結して施工する場合に必要となる許可です。
現在の金額基準は、原則として、
下請契約の総額が5,000万円以上
建築一式工事の場合は、
8,000万円以上
となっています。
例えば、
「これまでは一般建設業許可で営業していたが、今後は大型工事を元請として受注し、下請会社への発注額も大きくなる」
という建設会社の場合、特定建設業許可の取得を検討することになります。
特定建設業許可には厳しい財産的基礎の要件があります
特定建設業許可では、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件が定められています。
特定建設業許可を受けるためには、原則として次のすべてを満たす必要があります。
① 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
会社の財務状況から計算される「欠損の額」が、資本金の20%を超えていないことが必要です。
② 流動比率が75%以上であること
流動比率とは、簡単にいうと、
流動資産 ÷ 流動負債 × 100
で計算される指標です。
特定建設業許可では、これが75%以上であることが求められます。
③ 資本金が2,000万円以上であること
特定建設業許可では、資本金の額が2,000万円以上であることが必要です。
④ 自己資本が4,000万円以上であること
さらに、自己資本の額が4,000万円以上であることも必要です。
国土交通省は、法人の場合の自己資本を貸借対照表の純資産合計額として説明しています。
つまり、
「資本金を2,000万円にすれば特定建設業許可を取得できる」
というわけではありません。
資本金2,000万円に加えて、自己資本4,000万円以上など、他の財産的基礎の要件も確認する必要があります。
「資本金2,000万円」と「自己資本4,000万円」は違います
ここは非常に重要です。
例えば、
資本金1,000万円
の会社が、
1,000万円増資して資本金2,000万円
にしたとします。
これによって「資本金2,000万円」という基準は満たすことになります。
しかし、それだけで特定建設業許可の財産的基礎を満たすとは限りません。
特定建設業許可では、自己資本4,000万円以上という別の基準もあるからです。
そのため、
「特定建設業許可を取りたいので、とりあえず資本金を2,000万円に増やせばいい」
という考え方では不十分です。
現在の貸借対照表を確認し、
- 資本金
- 純資産
- 流動資産
- 流動負債
- 欠損の状況
などを総合的に確認する必要があります。
増資すれば自己資本も増えるの?
原則として、会社に新たな出資を行えば純資産が増えるため、自己資本の増加につながります。
例えば、資本金1,000万円、その他の純資産が1,000万円の会社が1,000万円増資した場合、適切に処理されれば純資産は増加します。
しかし、
「増資額=自己資本の増加額」
と単純に考えてよいとは限りません。
また、増資をして資本金を増やしても、会社の負債や流動資産・流動負債の状況によっては、特定建設業許可の他の財産的基礎要件を満たさない場合があります。
そのため、特定建設業許可を目的として増資する場合には、増資額だけではなく、増資後の財務内容を事前に確認することが重要です。
特定建設業許可を取得するために「いくら増資すればいい?」
これは会社によって異なります。
例えば、
「現在の資本金は1,000万円」
という情報だけでは、必要な増資額を判断できません。
なぜなら、特定建設業許可では、
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上
- 流動比率75%以上
- 欠損の額が資本金の20%以下
という複数の条件を同時に確認する必要があるからです。
したがって、
「特定建設業許可を取りたいので増資したい」
という場合には、まず直近の決算書を確認することをおすすめします。
そのうえで、
「資本金をいくらにする必要があるのか」
「自己資本をどの程度にする必要があるのか」
「増資だけで対応できるのか」
などを検討します。
特定建設業許可のための増資は「決算前」の相談が重要
特定建設業許可の財産的基礎については、原則として既存企業では申請直前の決算期の財務諸表などをもとに判断されます。新設会社については創業時の財務諸表をもとに判断されます。
そのため、
「特定建設業許可を取りたい」
と思ってから増資を検討するのではなく、
できるだけ早い段階で決算書を確認しておくこと
が重要です。
場合によっては、増資のタイミングそのものを検討する必要があります。
建設会社の増資にはいくつかの方法があります
増資といっても、一つの方法しかありません。
例えば、
- 株主割当による増資
- 第三者割当による増資
- 現物出資
- 会社に対する貸付金を利用した増資
などがあります。
誰が出資するのか、何を出資するのかによって必要な手続きが変わります。
株主割当による増資
株主割当とは、既存の株主に対して、その持株数などに応じて新株の割当てを受ける権利を与える方法です。
既存株主の持株比率を維持したい場合などに検討されます。
第三者割当による増資
第三者割当とは、特定の第三者に新株を引き受けてもらう方法です。
例えば、
「社長が100%株主の会社に、息子が出資する」
「新しい事業パートナーから出資を受ける」
といったケースが考えられます。
第三者割当では株主構成が変わる可能性があります。
そのため、単純に資本金を増やすだけでなく、
「増資後に誰が何%の株式を持つのか」
まで考える必要があります。
社長から会社への貸付金を資本金にする方法
建設会社では、社長が会社の資金繰りを助けるために、会社へお金を貸しているケースがあります。
いわゆる「社長借入金」です。
このような会社では、
「会社に貸しているお金を資本金にできないか?」
というご相談があります。
一定の条件のもとで、会社に対する金銭債権を現物出資する方法などが考えられます。
いわゆるDES(デット・エクイティ・スワップ)です。
ただし、会社法上の手続きだけでなく税務上の検討も必要になるため、具体的な案件では税理士等と連携して進めることをおすすめします。
建設機械や車を現物出資することもできる
増資では、現金だけでなく、一定の財産を現物出資する方法もあります。
例えば、
- 建設機械
- 車両
- 不動産
- その他の財産
などです。
ただし、現物出資では財産の評価や会社法上の手続きについて注意が必要です。
「会社で使用している建設機械を資本金にしたい」
という場合には、事前にご相談ください。
増資の手続きは簡単ではありません
増資を行うためには、会社法に従って必要な決議や手続きを行います。
会社の機関設計や定款、増資方法によって具体的な手続きは異なりますが、一般的には、
- 募集株式の数
- 払込金額
- 払込期日または払込期間
- 増加する資本金・資本準備金
- 株式の割当て
などについて決定します。
その後、出資者から払込みを受け、法務局へ変更登記を申請します。
増資後は建設業許可の変更届も確認
建設業許可を取得している会社が増資した場合には、建設業許可に関する変更届等が必要になる場合があります。
そのため、
「法務局で増資の登記をすれば終わり」
と考えないことが大切です。
特に、
- 一般建設業から特定建設業への変更
- 特定建設業許可の取得
- 経営事項審査
- 入札参加資格
などが関係している会社の場合には、増資後の手続きまで含めて確認することをおすすめします。
建設会社の増資と経営事項審査(経審)
公共工事を受注している建設会社では、増資と経営事項審査(経審)の関係も確認しておく必要があります。
経審では会社の財務内容なども審査対象となるため、
「増資すれば経審の評点が必ず上がる」
と単純に考えることはできません。
増資によって財務内容がどのように変化するのか、他の財務指標を含めて確認することが重要です。
建設会社の増資の一般的な流れ
STEP1 ご相談
現在の資本金、株主構成、増資額、出資者、建設業許可の状況などを確認します。
↓
STEP2 増資方法を検討
株主割当、第三者割当、現物出資などから適切な方法を検討します。
↓
STEP3 建設業許可との関係を確認
一般建設業・特定建設業のどちらが必要なのか、増資が財産的基礎にどのように関係するのかを確認します。
↓
STEP4 株主総会等の決議
会社法に従って必要な決議を行います。
↓
STEP5 払込み
出資者から会社へ払込みを行います。
↓
STEP6 登記書類を作成
株主総会議事録、払込みを証する書面など、必要書類を準備します。
↓
STEP7 法務局へ登記申請
増資による資本金・発行済株式総数等の変更登記を申請します。
↓
STEP8 建設業許可関係の手続き
必要に応じて、建設業許可の変更届や特定建設業許可の申請等を行います。
当事務所の解決事例
「特定建設業許可を取得するため増資を検討したケース」
建設会社から、
「今後、大型工事を元請として受注したいので、特定建設業許可を取得したい」
というご相談をいただいたとします。
このような場合、単純に、
「資本金が2,000万円になればよい」
という判断はできません。
まず会社の決算書を確認し、
- 現在の資本金
- 自己資本
- 流動資産
- 流動負債
- 欠損の状況
などを確認します。
そのうえで、
「増資によって対応できるのか」
「いくら程度の増資が必要なのか」
「増資以外に検討すべきことがあるのか」
を整理する必要があります。
特定建設業許可を取得することを目的として増資する場合には、会社法上の増資手続きと建設業許可の要件確認を別々に行うのではなく、最初から一体として考えることが重要です。
建設会社の増資を専門家に依頼するメリット
建設会社の増資を専門家に依頼することで、
- 難しい書類作成から解放される
- 株主総会等の手続きを整理できる
- 増資方法について相談できる
- 法務局への登記申請を任せられる
- 建設業許可との関係を確認できる
- 特定建設業許可を見据えた財務要件を確認できる
- 本業に集中できる
といったメリットがあります。
当事務所では司法書士法人を併設しているため、増資・商業登記を専門的にサポートしています。
さらに行政書士法人として建設業許可も取り扱っているため、
「増資と特定建設業許可をまとめて相談したい」
という建設会社様にも対応しています。
建設会社の増資手続きの料金
当事務所の増資手続きの料金は、以下を目安としています。
報酬
55,000円~(税込)
登録免許税
増加する資本金の額×0.7%
※最低30,000円
このほか、必要に応じて実費が発生します。
増資方法や会社の状況によって手続きが異なる場合がありますので、具体的な費用については事前にご確認ください。
対応地域
新潟市及び新潟市近郊
建設会社の増資、特定建設業許可についてお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.特定建設業許可を取りたいのですが、資本金2,000万円にすれば大丈夫ですか?
A.いいえ。
特定建設業許可の財産的基礎については、資本金2,000万円以上だけでなく、自己資本4,000万円以上、流動比率75%以上、欠損の額が資本金の20%以下という要件もあります。
そのため、増資額だけではなく、増資後の財務内容全体を確認する必要があります。
Q.現在の資本金が1,000万円ですが、いくら増資すればいいですか?
A.会社の決算内容によって異なります。
特定建設業許可を取得する場合には、資本金だけでなく自己資本や流動比率、欠損の状況なども確認する必要があります。
そのため、まず直近の決算書を確認することをおすすめします。
Q.増資すれば特定建設業許可を必ず取得できますか?
A.いいえ。
特定建設業許可には、財産的基礎以外にも、営業所技術者等、経営業務の管理体制、誠実性、欠格要件など、さまざまな要件があります。
特定建設業許可の取得を目的として増資する場合には、増資だけでなく、許可要件全体を確認する必要があります。
Q.社長が会社に貸しているお金を増資に使えますか?
A.一定の条件のもとで、会社に対する金銭債権を現物出資する方法などが考えられます。
いわゆるDESと呼ばれる方法です。
会社法上の手続きだけでなく税務上の検討も必要となるため、具体的な案件では税理士等への確認もおすすめします。
Q.建設機械や車を出資することはできますか?
A.一定の条件のもとで、現物出資として扱うことが可能です。
ただし、財産の評価などについて確認が必要になります。
具体的な財産の内容を確認したうえで、手続きを検討する必要があります。
行政書士・司法書士からのアドバイス
建設会社の増資は、
「資本金を増やして法務局に登記するだけ」
の手続きではありません。
特に、
「特定建設業許可を取得するために増資したい」
という場合には注意が必要です。
特定建設業許可では、
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上
- 流動比率75%以上
- 欠損の額が資本金の20%以下
という財産的基礎の要件をすべて確認する必要があります。
そのため、
「あと1,000万円増資すればいい」
と単純に考えるのではなく、増資後の会社の財務内容まで考えて手続きを進めることが重要です。
また、特定建設業許可が必要になる工事の規模についても、現在は下請契約額5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)という基準になっています。
「今後、大型工事を受注したい」
「特定建設業許可を取得したい」
「そのために増資が必要なのか知りたい」
という建設会社様は、まず現在の決算書と建設業許可の状況を確認することをおすすめします。
当事務所では、司法書士法人による増資・商業登記と、行政書士法人による建設業許可・特定建設業許可の双方についてご相談いただけます。
建設会社の増資をお考えの方、特定建設業許可の取得をお考えの方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。



