質問:建設業会社社員現在、建設会社に勤めています。
将来的に自分で仕事を受注していきたいと考えており、会社を辞めて独立することを検討しています。
独立後は建設業許可を取得したいのですが、従業員を雇わず、一人だけで建設業許可を取得することはできるのでしょうか?
また、取得するためには、どのような資格や経験、資金が必要なのでしょうか?
回答:トラスト行政書士事務所結論から申し上げますと、従業員を雇わず、一人で独立して建設業許可を取得することは可能です。
ただし、一人で事業を始める場合でも、建設業許可に必要な要件を満たさなければなりません。
特に重要なのは、次の点です。
- 経営業務を適正に管理できる体制があること
- 取得したい業種に対応する技術者の要件を満たすこと
- 財産的基礎などの要件を満たすこと
- 営業所を設け、必要な社会保険加入などの要件を満たすこと
それでは、一人で独立する場合に確認しておきたいポイントを順番に見ていきましょう。
1.一人で建設業許可を取得することは可能?
建設業許可を取得するために、必ず従業員を雇わなければならないという決まりはありません。
個人事業主として独立する場合でも、株式会社などの法人を設立する場合でも、必要な許可要件を満たせば申請できます。
例えば、建設会社で長年働いてきた方が、退職後に個人事業主として独立し、自分で現場の仕事を行いながら建設業を営むケースも考えられます。
ただし、建設業許可では、単に建設工事の経験が長いというだけでは足りません。経営面の経験と技術面の資格・経験について、それぞれ要件を確認する必要があります。
また、許可を取得したい業種によって、必要な資格や実務経験が異なります。まずは、どの業種の許可が必要なのかを整理しましょう。
2.経営業務を適正に管理できる体制が必要です
建設業許可では、建設業の経営を適正に行うための体制が求められます。
一般的には、建設業の経営に関する一定の経験を持つ「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」を配置することが、重要な確認事項になります。
個人事業主として独立する場合には、本人または支配人が要件を満たすかどうかを確認します。
どのような経験が必要?
代表的な要件の一つは、建設業に関して、経営業務の管理責任者として5年以上の経験を有していることです。
ただし、これだけが要件ではありません。一定の権限を委任されて経営業務を管理した経験や、経営業務の管理責任者を補佐した経験など、ほかの要件に該当する場合もあります。
また、役員等としての経験に加えて、財務管理・労務管理・業務運営を補佐する体制を整えることで、要件を満たせる場合もあります。
そのため、建設会社で働いていた方が独立する場合には、次の点を確認することが大切です。
- これまでに建設会社の役員などを務めた経験があるか
- 個人事業主として建設業を営んだ経験があるか
- 経営に関する権限を持ち、管理業務に携わった経験があるか
- その経験を証明する資料を用意できるか
単に建設現場で長く働いてきたというだけでは、経営業務の要件を満たすとは限りません。
一方で、会社の役員経験がないからといって、必ず許可を取得できないわけでもありません。これまでの職歴や役割によって判断が変わるため、個別の確認が必要です。
3.技術者の要件を満たす必要があります
建設業許可を取得するには、許可を受けようとする営業所に「営業所技術者等」を専任で配置する必要があります。
以前は「専任技術者」と呼ばれていた役割です。
営業所技術者等には、取得する業種に応じて、一定の国家資格や学歴・実務経験などの要件が定められています。
資格で要件を満たす方法
取得したい業種に対応する国家資格などを持っている場合は、その資格によって技術者の要件を満たせることがあります。
ただし、すべての資格がすべての業種に対応しているわけではありません。また、資格によっては追加の実務経験などが必要になる場合もあります。
資格をお持ちの方は、取得したい業種と資格の対応関係を確認しましょう。
実務経験で要件を満たす方法
資格がない場合でも、一定の実務経験によって要件を満たせることがあります。
一般建設業許可では、原則として、取得したい業種について10年以上の実務経験を証明する方法があります。ただし、指定学科を卒業している場合など、必要な実務経験年数が短縮されるケースもあります。
ここで重要なのは、建設業で働いた年数と、許可を取得したい業種の実務経験として認められる年数は、必ずしも同じではないという点です。
例えば、長年建設会社に勤務していても、希望する業種の工事に関する経験を十分に証明できなければ、実務経験の要件を満たせない可能性があります。
実務経験を証明する場合は、工事の内容や時期などを確認できる資料が必要になることがあります。勤務先での経験については、以前の勤務先に証明を依頼しなければならない場合もあるため、独立前に確認しておくと安心です。
経営面と技術面の要件を一人で満たせる?
ここが、一人で独立する場合の重要なポイントです。
同じ人が、経営面の要件と技術者の要件の両方を満たすことは可能です。
例えば、個人事業主本人が経営業務の要件を満たし、さらに取得したい業種に対応する資格や実務経験も備えている場合には、同じ営業所で両方の役割を担える可能性があります。
ただし、それぞれの要件を個別に満たすことが必要です。また、常勤性や専任性などの条件も確認しなければなりません。
そのため、独立を考えている方は、まず自分の経歴を整理し、経営面と技術面の両方で要件を満たせるかを確認しましょう。
4.営業所を用意する必要があります
建設業許可では、営業所の要件も確認されます。
営業所とは、単に資材を保管する場所や作業場という意味ではありません。建設工事の請負契約に関する見積りや契約締結など、営業上の業務を継続的に行う場所であることが求められます。
必ずしも、独立した事務所を借りる必要があるとは限りません。自宅の一部を営業所として使用できる場合もあります。
ただし、自宅であれば無条件に認められるわけではありません。営業所としての実態や独立性、使用権限などを確認する必要があります。
申請では、営業所の写真や使用権限を確認する資料などを求められることがあります。賃貸物件の場合は賃貸借契約の内容、自宅の場合は建物の所有関係や使用状況などを確認しておきましょう。
独立にあたって事務所を借りる予定の方は、契約を締結する前に、建設業許可の営業所として使用できるかを確認することをおすすめします。
5.財産的基礎などの要件を満たす必要があります
一般建設業許可では、請負契約を履行するための財産的基礎または金銭的信用が求められます。
新たに独立する方が確認しておきたい代表的な基準として、次のようなものがあります。
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金を調達する能力があること
- 許可を受けて継続して営業した実績に関する所定の基準を満たすこと
どの基準で要件を満たすかによって、必要となる確認資料が異なります。
例えば、資金調達能力によって証明する場合には、金融機関の残高証明書などが資料となることがあります。ただし、残高証明書の基準日や有効な取扱いなどは、申請先の最新の手引きに従って確認する必要があります。
また、自己資本による確認では、個人事業主か法人か、財務状況がどうなっているかなどによって必要資料が変わります。
したがって、「個人事業主なら必ず500万円の残高証明書が必要」と一律に考えるのではなく、自分がどの方法で要件を満たせるかを確認しましょう。
6.社会保険などの要件も確認しましょう
建設業許可では、適切な社会保険への加入も確認すべき事項です。
一人で独立する場合でも、事業形態や雇用状況などに応じて、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入義務が生じるかを確認する必要があります。
個人事業主か法人か、従業員を雇用するかどうかなどによって取扱いが異なりますので、独立の準備段階で確認しておきましょう。
また、建設業許可には、誠実性や欠格要件など、ほかにも確認すべき事項があります。経営経験・技術者・資金の要件だけで申請できると判断せず、全体を確認することが大切です。
7.独立前に準備しておきたい書類
建設業許可の申請では、申請書だけでなく、経験や資金、営業所などを確認するための資料が必要になります。
具体的な必要書類は、個人事業主か法人か、どの要件で申請するか、過去の勤務先や事業の状況などによって異なります。
例えば、次のような資料を確認することがあります。
- 経営経験を証明するための登記事項証明書や過去の許可関係資料
- 建設業の営業実態を確認するための契約書、注文書、請求書など
- 技術者の資格証明書や実務経験を証明する資料
- 財産的基礎などを確認するための財務資料や残高証明書
- 営業所の使用権限や実態を確認する資料
- 社会保険の加入状況を確認する資料
これらはあくまで代表例であり、すべての方に同じ資料が必要になるわけではありません。
特に、以前の勤務先での経験を証明する必要がある場合、退職後に資料を集めるのが難しくなることも考えられます。独立を決めたら、早めに職歴や保有資格、工事経験、証明に使えそうな資料を整理しておくとよいでしょう。
新潟県の建設業許可については、県が公開している最新の「建設業許可申請等の手引き」と提出書類一覧を確認することが大切です。新規申請は、許可通知書の交付まで概ね1か月から1か月半程度かかると案内されていますので、独立後の受注予定も踏まえて余裕を持って準備しましょう。
8.個人事業主と法人、どちらで独立するべき?
独立する際には、個人事業主として始める方法と、会社を設立して法人として始める方法があります。
どちらがよいかは、将来の事業計画や取引先、資金計画などによって異なります。
個人事業主として始める場合は、法人設立の手続きが不要で、比較的シンプルに事業を開始しやすいという特徴があります。
一方、法人を設立する場合は、会社設立の登記や社会保険など、個人事業主とは異なる手続きや費用が発生します。また、法人として許可を取得する場合には、会社の役員構成や営業所などについても確認が必要です。
建設業許可の要件を満たしているかどうかは、個人事業主か法人かだけで決まるわけではありません。独立後にどのような取引をしたいのか、従業員を雇う予定があるのか、将来的に会社を大きくしたいのかなども踏まえて検討しましょう。
9.行政書士からのアドバイス
一人で独立して建設業許可を取得することは可能ですが、独立前に確認しておくべきことがあります。
特に注意したいのは、建設会社での勤務経験が長いからといって、必ず建設業許可を取得できるとは限らないという点です。
建設現場での技術的な経験と、建設業を経営する立場での経験は別のものです。また、技術者の要件も、資格や実務経験の内容によって判断されます。
そのため、独立を考え始めた段階で、次の3点を整理することをおすすめします。
- これまでの経営経験や役職、担当してきた業務
- 保有資格と、取得したい業種に関する実務経験
- 独立後の営業所や資金の準備状況
この3点を確認することで、許可取得に向けて何を準備すべきかが見えてきます。
また、独立する時期が決まっている場合には、許可申請の準備期間も考慮して計画を立てることが重要です。
当事務所では、新潟市及び新潟市近郊の建設業者様を中心に、建設業許可の新規取得に関するご相談を承っております。
「自分の経験で許可を取得できるのか分からない」「独立前に何を準備すればよいのか知りたい」という方も、まずは現在の状況をお聞かせください。
建設業許可の取得に向けて、必要な要件や準備すべき資料を確認し、状況に応じた手続きをご案内いたします。
一人での独立をお考えの方は、退職や事務所の契約を進める前に、ぜひ一度ご相談ください。



