建設業者の法人成り

個人事業として建設業を営んでいる建設業者様から、

「そろそろ会社を作って法人化したほうがいいでしょうか?」

「個人事業から株式会社にしたら、今持っている建設業許可はどうなりますか?」

「法人にした場合、建設業許可をそのまま引き継ぐことはできますか?」

といったご相談をいただくことがあります。

建設業を長く続け、事業規模が大きくなってくると、法人化を検討する時期がやってきます。

法人化には、社会的信用、人材採用、金融機関との取引、事業承継など、さまざまなメリットがあります。

一方で、建設業者の法人成りでは、一般的な会社設立とは違い、現在取得している建設業許可を法人でどのように引き継ぐのかを事前に考えておく必要があります。

建設業者の法人成りでは、大きく分けて、

①個人事業を廃業して、法人で新たに建設業許可を取得する方法

と、

②個人から法人への事業譲渡について事前認可を受け、建設業者としての地位を法人に承継する方法

があります。

この記事では、建設業者の法人成りについて、行政書士法人・司法書士法人として会社設立と建設業許可の双方をサポートしてきた立場から、わかりやすく解説します。


建設業者が法人成りするメリット

まず、個人事業主が法人化するメリットについて説明します。

社会的な信用につながる

法人化する大きなメリットの一つが、会社として事業を行うことによる信用面です。

もちろん、個人事業主だから信用がないということではありません。

しかし、取引先によっては、

「法人とのみ取引する」

「法人であることを取引条件の一つとしている」

というケースがあります。

特に今後、

  • 大手企業との取引を増やしたい
  • 元請工事を増やしたい
  • 事業規模を拡大したい
  • 公共工事への参入を考えている

という建設業者様にとって、法人化を検討する意味は大きくなります。


人材採用の面でも法人化が一つの選択肢になる

建設業界では、人材の確保が経営上の大きな課題となっています。

従業員を採用する場合には、給与だけでなく、

  • 社会保険
  • 福利厚生
  • 休日
  • 退職金制度
  • 教育制度
  • 会社としての安定性

など、さまざまな条件が見られます。

法人になったからといって、必ず優秀な人材を採用できるわけではありません。

しかし、会社として雇用環境を整え、組織として成長していくためには、法人化が一つのきっかけになることがあります。

「自分一人で仕事をする建設業」から、

「従業員を採用して会社として成長する建設業」

へ移行する場合には、法人成りを検討する価値があります。


法人化によって税金面で有利になる場合もある

法人成りを検討する理由として、税金を挙げる方も多くいらっしゃいます。

個人事業と法人では税金の仕組みが異なるため、所得水準や役員報酬、家族構成、社会保険料などによっては、法人化によって税負担を抑えられる場合があります。

また、法人では役員報酬や退職金など、個人事業とは異なる仕組みを利用できます。

ただし、

「法人にすれば必ず節税になる」というわけではありません。

法人化すると、法人住民税の均等割、社会保険料、税理士報酬など、新たに発生する費用もあります。

法人成りを検討する際には、税理士等にも相談し、個人事業を継続した場合と法人化した場合を比較することが大切です。


建設業者の法人成りで最も注意したいのが「建設業許可」

建設業者が法人成りする際に、特に注意していただきたいのが建設業許可です。

現在、個人事業主として建設業許可を取得している方の中には、

「会社を作れば、その許可も会社にそのまま移るのでは?」

と考えている方もいらっしゃいます。

しかし、個人事業主と法人は法律上別の事業主体です。

そのため、法人成りする場合には、

「個人の建設業許可を法人でどのように扱うのか」

を事前に検討する必要があります。

現在の制度では、建設業者が法人成りする場合、大きく2つの方法が考えられます。


方法① 個人事業を廃業して、法人で新たに建設業許可を取得する

一つ目は、従来から行われてきた方法です。

具体的には、

個人事業主

↓

個人事業の建設業許可を廃業

↓

株式会社を設立

↓

法人として建設業許可を新規申請

という流れです。

この場合、個人が持っていた建設業許可を法人が承継するわけではありません。

法人は新しい事業主体となるため、法人として建設業許可の要件を満たしたうえで、新規に許可を取得することになります。

この方法の注意点

最大の注意点は、許可の空白期間です。

個人の許可を廃業した後、法人の新規許可が取得できるまでの間は、許可が必要となる工事について、法人として営業できない期間が生じる可能性があります。

そのため、

「個人の許可をいつ廃業するのか」

「法人の設立をいつ行うのか」

「法人の許可申請をいつ行うのか」

を、あらかじめスケジュールにしておく必要があります。

特に、継続中の工事や新たな工事の受注がある場合には、慎重な検討が必要です。


方法② 個人から法人への事業譲渡によって建設業許可を承継する

もう一つの方法が、建設業法上の事業承継制度を利用する方法です。

個人事業主から法人へ建設業の事業を譲渡し、事前に許可行政庁の認可を受けることによって、建設業者としての地位を法人に承継するという方法です。

イメージとしては、

個人事業主

↓

法人を設立

↓

個人から法人へ事業譲渡

↓

事前に認可を受ける

↓

法人が建設業者としての地位を承継

という流れになります。

この制度を利用する場合、単に「個人事業を法人に移します」というだけでは足りません。

事業承継について、事前に認可を受ける必要があります。


事業譲渡による承継なら「許可の空白」を避けられる可能性がある

事業譲渡による建設業許可の承継制度を利用する大きなポイントは、適切に手続きを行えば、従来の「廃業→新規許可」という方法で問題となっていた許可の空白期間を避けられる可能性があることです。

そのため、

「現在も建設工事を継続している」

「許可を途切れさせたくない」

「公共工事を受注している」

といった建設業者様にとっては、重要な選択肢になります。

ただし、すべての法人成りで事業承継制度を利用できるわけではありません。

承継の対象となる許可や法人側の要件、事業譲渡の内容などについて、事前に確認する必要があります。


事業譲渡による承継では「全部承継」に注意

特に注意したいのが、許可を受けている建設業の一部だけを承継することについてです。

例えば、個人事業主が、

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 管工事業

の許可を取得している場合に、

「法人では土木工事業だけ承継したい」

というように、許可業種の一部だけを承継することはできません。

事業承継制度を利用する場合には、承継する建設業許可の範囲について十分な確認が必要です。

「法人化した後はどの業種を残したいのか」も、会社設立前に整理しておきましょう。


「廃業+新規」と「事業譲渡による承継」の違い

2つの方法を簡単に比較すると、次のようになります。

  廃業+新規許可 事業譲渡による承継
個人の許可 廃業 法人へ承継
法人の許可 新規取得 承継
事前認可 原則不要 必要
許可の空白 生じる可能性あり 適切な手続きにより避けられる可能性
手続き 新規許可申請 事業承継の認可申請
注意点 法人側で新規許可要件を満たす必要 承継要件等の確認が必要
向いているケース 新規許可として整理したい場合など 許可を途切れさせず法人成りしたい場合など

どちらを選択するかは、現在の許可状況、工事の受注状況、法人側の体制、公共工事の有無などによって変わります。


公共工事を受注している建設業者は「経審」も確認が必要

公共工事を受注している建設業者様の場合、建設業許可だけを考えればよいわけではありません。

法人成りをする場合には、

建設業許可

だけでなく、

経営事項審査(経審)

や

入札参加資格

についても確認する必要があります。

建設業許可を法人へ承継できたとしても、経審や入札参加資格がすべて同じように扱われるとは限りません。

そのため、公共工事を受注している会社の場合には、

「法人成りしたら経審はどうなるのか?」

「これまでの完成工事高や営業年数はどう扱われるのか?」

「入札参加資格はどうなるのか?」

という点まで含めて、事前に確認することが重要です。


会社設立時の「目的」も重要です

建設業者が法人成りする場合、会社設立時の定款の「目的」についても注意が必要です。

例えば、将来的に建設業許可を取得するのであれば、会社がどのような事業を行うのかを考えたうえで、適切に事業目的を設定する必要があります。

「とりあえず会社を作って、建設業許可については後から考える」

という方法では、後から定款変更や登記が必要になる可能性があります。

会社設立の段階から、

「この会社で将来どのような建設業を営むのか」

を考えておくことが大切です。


法人成りは「会社設立」と「建設業許可」をセットで考える

建設業者の法人成りでは、

  • 会社設立
  • 定款作成
  • 定款認証
  • 会社設立登記
  • 建設業許可
  • 事業承継
  • 社会保険
  • 税務手続き
  • 経審
  • 入札参加資格

など、さまざまな手続きが関係してきます。

そのため、

「会社設立は司法書士」

「建設業許可は行政書士」

「税務は税理士」

というように、手続きを一つずつ考えるのではなく、法人成り全体のスケジュールを最初に作ることが重要です。


法人成りの手続きは「会社を作る前」に相談してください

法人成りを検討している建設業者様には、ぜひ会社設立前にご相談いただきたいと思います。

例えば、

「来年から法人にしたい」

「息子が事業を引き継ぐので会社にしたい」

「従業員を増やすため法人化したい」

「公共工事を増やすため法人化したい」

という段階でご相談いただければ、

廃業+新規許可にするのか、それとも事業譲渡による建設業許可の承継を検討するのか

を含めて、全体のスケジュールを考えることができます。

逆に、会社を設立してから、

「建設業許可はどうすればいいですか?」

と相談されると、選択肢が限られてしまう場合があります。


建設業者の法人成りならトラストにご相談ください

当事務所では、行政書士法人と司法書士法人の体制を活かし、会社設立から建設業許可まで、建設業者様の法人成りをまとめてサポートしています。

公証役場での定款認証、法務局への会社設立登記だけでなく、

  • 建設業許可の新規申請
  • 建設業許可の承継
  • 事業譲渡による承継の認可
  • 経営業務の管理体制に関する確認
  • 営業所技術者等の確認
  • 経営事項審査
  • 入札参加資格申請

など、法人成りに伴って必要となる手続きを総合的にサポートします。

行政書士・司法書士からのアドバイス

建設業者の法人成りで大切なのは、

「会社を作ること」ではなく、「建設業を途切れさせずに、法人としてどのように事業を続けていくか」を考えることです。

個人事業から法人になる場合、建設業許可については、

①個人事業を廃業して法人で新規許可を取得する方法

と、

②個人から法人への事業譲渡について事前認可を受け、建設業者としての地位を承継する方法

があります。

どちらが適しているかは、会社の状況によって異なります。

特に現在建設業許可を取得している方、公共工事を受注している方、経営事項審査を受けている方は、法人成りの前に専門家へご相談いただくことをおすすめします。

「法人にしたいけれど、建設業許可をどうすればいいかわからない」

という段階でも構いません。

会社設立前からご相談いただければ、法人成りの方法、建設業許可、事業承継、経審などを含めて、全体のスケジュールを一緒に検討することができます。

新潟市及び新潟市近郊の建設業者様で、法人成りをご検討の方は、ぜひトラストにご相談ください。

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