現在新潟県内で個人事業として建設工事を行っているのですが、この度会社を作り、「解体工事業」の建設業許可を取得したいと考えています。
調べてみたところ、建設業許可の要件の中に、専任技術者を設置するというものがあるようなのですが、専任技術者の候補として考えている者が専任技術者の要件を満たしているのかわからないのですが、どのように判断すればいいのでしょうか。
建設業許可の専任技術者の要件というのはなかなかわかりにくいですよね。ですのでまず簡単に整理しますと、解体工事業の専任技術者になる方法には主に3つのパターンがあります。厳密には4つあるのですが、特殊なケースなのでここでは割愛します。
1つ目は、土木施工管理技士や建築施工管理技士などの資格を持っていることです。
2つ目は、「建築に関連する学科の卒業もしくは施工管理技士試験合格」に加えて「3年以上もしくは5年以上の解体工事業の実務経験」です。
そして3つ目は、実務経験のみでなる方法で、「解体工事業の実務経験を10年以上」もしくは「解体工事の実務経験が8年以上あり、かつ土木工事、建築工事、とび土工いずれかの実務経験と通算して12年以上」です。
今回の候補者の方は、このうちのどれに該当しそうでしょうか。
資格や建設業に関連する学歴はないので、実務経験ということになるでしょうか。法人(X社)で8年、個人事業主の下で3年の解体工事の実務経験があるので、10年以上の解体工事業の実務経験に該当すると思います。
合わせて11年の実務経験をお持ちなのですね。建設業許可を持っている事業者での実務経験かどうかもポイントになるのですが、そのX社さんと個人事業者は建設業許可を保有されていましたか。
X社は解体工事業の許可を保有していますが、個人事業者は許可をもっていません。
では、個人事業者は解体工事業の登録をされていましたか。
解体工事業の登録もしていないようです。
残念ですが、「解体工事業の登録」又は建設業許可の「土木工事業」、「建築工事業」、「解体工事業」を保有していない個人事業者の下での経験は、実務経験年数には入りません。そのため2年間の実務経験が不足していることになり、専任技術者にはなれません。
ただし、まだ方法はあります。
「解体工事の実務経験が8年以上あり、かつ土木工事、建築工事、とび土工いずれかの実務経験と通算して12年以上」に該当する可能性はないでしょうか。さきほど挙げていただいた以外に土木工事、建築工事、とび土工いずれかの実務経験が4年以上あれば要件を満たすことができます。
残念ながらX社と個人事業者以外での職歴はありません。
そうすると残念ながら現時点では解体工事業の許可を取得することは難しいという結論になってしまいそうですね。しかし、今回のケースですと8年の実務経験がありますので、解体工事業登録の技術管理者の要件を満たしています。
ひとつの方法として、法人を設立し、解体工事業の登録を申請した上で2年の解体工事の実績を積み、解体工事業の建設業許可を取得するという方法が考えられます。
なるほど。現状では難しいのですね。いまご提案いただいた解体工事業の登録と解体工事業の建設業許可にはどのような違いがあるのでしょうか。
解体工事を行う場合は、元請け・下請けを問わず、原則として「解体工事業の登録」か「解体工事業の建設業許可」が必要になりますが、請負金額が500万円以上の解体工事を行う場合は、「建設業許可」が必要となり、請負金額が500万円未満の解体工事を行うには「解体工事業の登録」が必要になります。この請負金額が最も大きな違いです。
余談にはなりますが、建設業許可の「土木工事業」、「建築工事業」、「解体工事業」のいずれかの許可を有している場合は、「解体工事業の登録」をせずに請負金額500万円未満の解体工事を請け負うことができます。
解体工事業の登録はどこで行いますか。
解体工事を行う区域を管轄する都道府県知事の登録を受ける必要があります。
新潟県と山形県で解体工事を行う場合、新潟県知事と山形県知事の登録が必要になります。
登録も許可もないまま解体工事を請け負った場合はどうなりますか。
はい。登録も許可もなく500万円未満の解体工事を請け負った場合の罰則は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」となります。500万円以上の解体工事を請け負った場合は、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑」が適用されます。
わかりました。参考にさせていただきたいので、よろしければ解体工事業の登録についても簡単に教えていただいてもよいですか?
それでは登録について、簡単にご説明いたしますね。まず要件は大きく2つあります
- 欠格要件に該当しないこと
- 技術管理者を設置していること
それぞれ、順に説明していきますね。
まず1つめの欠格要件に該当しないという要件ですが、具体的には次のような欠格要件に該当しないことが求められます。
- 解体工事業の登録を取り消された日から2年を経過しない者
- 解体工事業の登録を取り消された法人において、その処分日の前30日以内に役員であり、かつその処分日から2年を経過していない者
- 解体工事業の業務停止を命ぜられ、その停止期間が経過していない者
- 建設リサイクル法に違反して罰金以上の刑を受け、その執行が終ってから2年を経過していない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 解体工事業者が未成年で、法定代理人が(1)から(5)のいずれかに該当するとき
- 法人でその役員のうちに(1)から(5)までのいずれかに該当する者がいるとき
- 技術管理者を選任していないとき
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
いくつもありますが、簡単に説明してしまうと「これまでに解体工事などで不正なことをしていないこと」や「暴力団関係者ではないこと」などが求められることになります。
欠格要件について、弊社は特に問題がないようです。
であれば、あとは技術管理者を設置している要件を満たしていれば解体工事業の登録を行える可能性があります。より具体的には、次のような資格を持っている人がいれば、技術管理者として設置することができます。
建設業法による技術検定
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(「第1種」又は「第2種」に限る)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(「土木」に限る)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(「建築」又は「躯体」に限る)
建築士法による建築士
- 1級建築士
- 2級建築士
技術士法による第二次試験
- 技術士(「建設部門」)
職業能力開発促進法による技能検定
- 1級とび・とび工
- 2級とび+解体工事実務経験1年
- 2級とび工+解体工事実務経験1年
国土交通大臣の登録を受けた試験
- 国土交通大臣の登録を受けた試験に合格した者
弊社には資格を持っている者がおりません。
その場合は、先ほども話に出た「実務経験」で証明していくことになります。
なお、解体工事に関する実務経験については、必要な建設業許可又は解体工事業登録を受けて請け負ったものに限り、認められますのでご注意ください。
大学、高等専門学校において土木工学等に関する学科を修了した者
実務経験年数2年以上または国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受講した場合の実務経験年数1年以上
高等学校、中等教育学校において土木工学等に関する学科を修了した者
実務経験年数4年以上または国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受
講した場合の実務経験年数3年以上
上記以外の者
実務経験年数8年以上または国土交通大臣が実施した講習又は登録した講習を受講した場合の実務経験年数7年以上
弊社の場合は、最後の実務経験年数8年以上で証明していくことになりますね?
そうです、X社は解体工事業の許可を得ているとのことでしたので、許可を受けた会社で8年以上の実務経験年数があることを証明して、御社の技術管理者として登録の手続きを進めることになります。なお、解体工事業の登録には次のような手数料も必要です。
≪登録申請手数料≫
- 新規申請 33,000円
- 更新申請 26,000円
イメージがつかめました。ありがとうございます。
実務経験の年数的に御社がすぐ解体工事業の許可を取得することは難しいですが、登録であれば要件を満たせそうですね。