会社設立と建設業許可を取得されたいというお客様からのご相談内容です。
- 30年以上勤務している建設会社の社長と折り合いが悪くなり、1年後に退職し独立して自宅で会社を設立したい。
- 今の勤務先の元請業者から仕事を回してもらえると話しはついているが、とりあえず一人で始める予定。
- 設立後はすぐに建設業許可を取得したいと考えている。
- 預金が100万円位なので資本金は50万円~100万円の間で。建設業許可取得のために400万円をどこかで借入れしたいと考えている。
- まだ先のことだが、会社設立と建設業許可手続きの費用と必要な書類、手順を教えて頂きたい。」
簡略するとこのような内容でした。
話を伺い、創業してからの運転資金についてはあまり考えられていないのかなという印象を受けました。会社を設立するためになぜ「資本金」が必要なのか、建設業を経営していくためになぜ「500万円以上の財産要件」があるのか。
「一人で始めるし、自宅を営業所にするからあまり資金はいらない」という理由で、「資本金は出来るだけ少額にしたい。建設業許可を取る為の資金を一時的に調達できればいい」と運転資金について安易にお考えの方もいらっしゃるのではないかと思います。
建設業許可取得のための「財産要件」、事業を経営していく運転資金にも利用される「資本金」について、これから独立して会社を設立し建設業許可を取得したいとお考えの方に、ぜひ知っていただきたいことをご説明いたします。
「なぜ建設業許可を取得するために財産要件があるのか」※一般建設業許可の場合
一般建設業許可を取得するには以下の財産要件があります。
- 自己資本が500万円以上であること
毎年税務署に提出している貸借対照表の純資産のことです。
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
金融機関で500万円以上の金額の記載がある預金残高証明書を取得することができれば問題ありません。
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
一般建設業許可を取得すると、請負金額が500万円以上の建設工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上の建設工事)を請け負うことができるようになります。
建設工事を着手するには、資材の購入及び労働者の給与、機械器具等の購入など、一定の準備資金が必要になります。また、営業活動を行うにもある程度の資金を確保していることが必要です。このため、建設業の許可が必要となる規模の工事を請け負うことができるだけの財産的基礎等を有していることを許可の要件としています。
「資本金とは」
事業を運営するための元手となる資金のことです。創業直後で会社が軌道に乗るまでは、会社設立費用や、事務所の契約費用、事務机やパソコン購入の費用、仕入れや従業員の給与などは資本金からまかないます。資本金は、出資者によって払い込まれた資金です。株式会社の場合は、株主や投資家などの出資者から調達した資金が資本金となります。一般的には、創業当初に第三者から出資を受けられるケースはあまりなく、ほとんどの場合、経営者が貯えた自己資金を会社に出資します。この場合は、経営者が株主になります。
- 資本金の最低金額は1円
2006年に会社法が施行されるまで、株式会社を設立する際には、1,000万円以上の資本金が必要でしたが、現在は資本金が1円でも会社の設立ができます。 総務省・経済産業省の統計によると、資本金の額が最も多いのは「300万円から500万円」とされています。
- 資本金が少ないときのデメリット
- 取引先からの信用を得られない
資本金が大きいと会社の財政基盤がしっかりしていると考えられます。資本金があまりにも少ないと、しっかり準備して事業を開始していないのかと疑われる可能性もあります。会社の規模の大きさは資本金額に比例して評価され、資本金が大きいほど他社からの信用が増す傾向にあります。
- 金融機関から希望する金額の融資を受けにくい
資本金額は企業の体力を表す目安として金融機関からチェックされます。あまりに資本金が少ないと返済能力が低いと判断されやすいため、希望する金額の融資が受けられない可能性があります。
- 資本金の金額の決め方
- 資本金は3か月分の経営を維持するための資金として準備する
思っていたより売上が無くても、家賃、仕入れ、給与などの経費の支払いに困らないよう3か月分位は準備しておきましょう。
- すぐに建設業許可を取得するなら500万円以上の資本金が必要
一般建設業許可の場合は500万円以上の資本金を準備しましょう。
資本金を500万円未満にする場合は、会社名義の口座の「500万円以上」の
「残高証明書」を金融機関より発行してもらい、申請書に添付します。
- 借入金は資本金にできない
公庫融資、銀行融資、信用金庫融資、カードローンなどの借入金や、知人や親から借りたお金は資本金にすることはできません。
なせなら、資本金として認められるのは、最初に述べたように、株主や投資家から得た資金や、自己資金に該当するからです。
借入金は返済義務が発生するため、資本金に含めることができません。
資本金では運転資金が足りないので、金融機関などから融資を受けたい。(お金を借り入れしたい)とお考えの方
銀行、日本政策金融公庫等から運転資金を借り入れる場合、必要な書類を準備し、審査を受けることになります。
- 自己資金は借入額の10分の1以上用意しなければなりません。
自己資金を確認するために、半年から1年以上の個人通帳の提出が求められます。
一度に振り込まれた親や知人からのお金は自己資金とは認められません。
コツコツと貯めていたことが信用として評価されます。
- 事業計画書の作成
借入金は何に・いくら必要なのか。毎月の予定売上高や経費の明細、その根拠となる説明など、細かい事業計画書を作成します。
自己資金が親から借りた見せ金だったり、あいまいな事業計画書では返済能力が無く、事業の将来性が期待されないと判断されてしまいます。審査は甘くありません。
事業を始めるためには、事業計画・資金計画をしっかり立てたうえで、必要な資金をコツコツ貯めることがとても重要となります。