建設業許可を取得して建設業を営んでいる法人が、建設業に関する事業の切り離しを行い、新会社を設立して権利を承継することを『新設分割』といいます。
その際、新会社に建設業許可を引き継ぎたいと考えるのが一般的だと思いますが、新設会社はもともとの法人とは別会社となるので、そもそも引き継ぐことが出来るのかが問題となります。
先日、弊所で会社分割(新設分割)のお手続きをご依頼いただいたお客様からも問い合わせがありました。
果たして、建設業許可についても承継できるのでしょうか?
合併や会社分割といった組織再編を行う際、取得済みの許認可がどうなるかは許認可の種類によって違います。
それぞれの許認可が何に該当するかをまずは確認しなければなりません。
パターンとしては3つ挙げられます。
事業を承継する際、許認可も承継会社へそのまま承継されるパターン
➁行政庁の承認などが必要なもの
承継することは可能ですが、行政庁の承認を事前に得る必要があるパターン
➂再申請の必要があるもの
会社分割による許認可の承継が認められておらず、新規取得し直す必要があるパターン
法律により合併や会社分割で許認可が承継する規定が無い場合は、新たに許認可を取得しなければならないのです。
許認可のことを考えないで、組織再編の手続だけ行うと、後で『許認可が無いから営業ができない!!』なんて大変なことになるので注意が必要です。
実はこれまで、建設業者が事業譲渡などの【組織再編(譲渡・合併・分割等)】を行った場合、譲受会社、合併又は分割後の存続会社は許認可を承継することが出来ず、新たに建設業許可を取り直さなければなりませんでした。
そうすると、新たに許可が下りるまでの間、建設業許可の“空白期間”が生じてしまい、建設業を営むことが出来ないという事態に陥ってしまいます。
また、
• 建設業許可番号が変わってしまう
• 建設業許可業者としての地位を引き継ぐことができない
• 経営事項審査の結果を引き継ぐことができない
• 廃業してから新たに許可を取得するまでに500万円以上の工事を受注することができない
といった不具合が出てきます。
せっかく、建設業の事業譲渡や、建設会社の合併・分割をして会社の再編を行おうとしているのに、「建設業許可業者の地位を引き継げない」「新たな許可を取得するまでは未許可業者になってしまう」というのでは、会社を再編するメリットが失われてしまいます。
そして、「建設業許可」を引き継ぐことができず、新たに建設業許可を取得しなおさなければならなかったので、手続きも2度手間になります。
しかし、令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、
建設業許可に関する会社分割に関する制度が新設されました。
この改正により、【組織再編】を行う場合は、あらかじめ事前の認可を受けることで空白期間を生じることなく、元の会社の建設業者としての地位を承継することができるようになりました。
つまり、これまでできなかった建設業許可の承継が可能となったのです。
※なお、この事前認可においては、承継する会社が建設業の許可要件を備えていることが必要です。
1 事前相談
2 申請書提出(効力発生日の30日以上前)
3 審査
4 認可
5 通知書送付
6 後日提出資料の提出
新潟県の場合、空白期間を無くすよう許可を取得するためには最低でも30日以上前に申請書類一式を提出する必要があります。
その前に官公庁との事前協議が必須となりますので、2~3か月前には手続き着手する必要があります。
スケジュールに余裕をもってご相談ください。
認可申請ができるのは、分割会社(元の会社)と承継される新会社の双方が新潟県知事許可業者、又は建設業を営む営業所が新潟県内にのみある場合に限ります。
元の会社と承継される新会社のいずれか一方でも、新潟県以外の許可を受けた建設業者である場合は、国土交通大臣の認可が必要となりますのでご注意下さい。
許可を取得している業種のうち、一部の業種だけを承継することはできません。
分割会社(元の会社)の許可番号が引き継がれます。
ただし、複数の建設業許可業者間での分割(承継)が行われる場合は、引き継ぐ許可番号の選択が可能です。(官公庁との事前協議が必須となります。)
分割される新会社は、分割会社(元の会社)の建設業許可業者としての地位を承継することとなるため、分割会社(元の会社)の決算報告を提出する義務があります。
分割日時点で分割会社(元の会社)の未提出の決算報告がある場合は、分割される新会社がその分の決算報告を提出する必要があります。
承継される許可業種の専任技術者は、分割した日以降も原則として業種毎に同じ専任技術者が引き続き常勤する必要があります。
もし異なる専任技術者を置く場合、分割日から2週間以内に変更届を提出しなくてはなりません。
分割当日から許可は有効です。許可の有効期間は分割の日の翌日から5年間となります。
“建設業者としての地位を継承する”とは、建設業の許可を受けたことで発生する義務や権利のことで、承継した側は承継された側と同じ立場になります。
したがって、承継された側が受けた【監督処分】や【経営事項審査の結果】についても承継することになるので、注意しましょう。
一方、罰則については、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った法人に対して刑罰を科すものであるため、承継されることはありません。
今回ご依頼いただいたお客様は前もってご相談頂いていたので、空白期間なく許可を承継することが出来ました。
会社分割は手続きに長期間を要します。
官公庁においても審査に時間がかかると思われますので、あらかじめ余裕をもって準備し、事前協議する必要があります。
また、あまり多いケースではないため、手続きに戸惑ったり大切なポイントを見落としていたなんてことにならないよう、慎重に進めなくてはなりません。
そして、法令や運用は変わる可能性がありますので、組織再編をする際は、常に最新の法令や運用を確認する必要もあります。
ぜひ、経験豊富なトラスト行政書士事務所にご相談ください。