常用工事について 

【事例】

資本金500万円

事務所の要件問題なし

経営業務管理責任者 → 社長 (会社設立5年3ヶ月)

専任技術者 → 従業員 (実務経験)

実務経験は10年のうちの5年は自社で、残りは以前在籍していた会社で取得する予定で前の前の会社から証明印はもらえる。普段行っている工事は常用工事も多い

その他保険関係も加入済み

 

新規で建設業許可を取得したい

 

というお問合せがありました。

 

この場合、「ヒト」、「モノ」、「カネ」の要件をそれぞれ満たしているように感じます。

しかし、注意する点があります。それは専任技術者の“実務経験”についてです。

 

 

◎専任技術者の実務経験

実務経験年数に関しては、その方の出身学校や所有資格によっても10年、5年、3年、1年と異なります。

では、今回の事例に出てきた様に “常用工事” は実務経験に値するのでしょうか?

 

常用工事とは…?

建設業における請負契約ではなく、一定の仕事を決められた時間で完成することとし,人工単価による労働実績払いで代金を受け取る契約をした工事のこととされています。

いわゆる、「人工だし」や「応援」といわれるものになります。

 

簡単にまとめると

◇ 請負工事  … 完成を約束し、完成に対して報酬が支払われるもの

◇ 常用工事  … 決められた時間と場所で作業をし、労働実績で報酬が支払われるもの

 

常用工事(人工だし)は工事というより派遣労働に近いものになります。

建設業で安全性の確保と雇用の安定のために派遣労働は禁止されています。

(より詳しい説明を 「“人工だし”は認められるのか?」 説明しております。)

 

◎常用工事は専任技術者の実務経験として認められるのか

 

結論から申し上げると常用工事は実務経験に認められません。

なぜならば、常用工事は建設業法における建設業には該当しないからです。

 

建設業における工事とは『請負契約』による工事を指します。

実務経験で取得する場合は、請負契約で行った工事での経験が実務経験となります。

 

(しかし申請する許可行政庁によって見解が異なることがあり、認められるところもあるそうです。必ず許可行政庁にご確認ください。)

※新潟県は基本的には認められません。

しかし、証拠書類としてお手元にある書類を一度お見せいただき、ご相談ください。

 

 

では、事案のような場合や、常用工事を中心で行っている会社は建設業許可を取得できないのでしょうか…?

 

 

建設業で人工出しや常用工事をする会社は少なくありません。

弊所にご相談に来られる事業者様にもいらっしゃいます。

常用工事が多い会社も建設業許可が必要になる事もあります。

 

しかし、常用工事メインでやられている場合、許可の要件を満たす事は難しいです。

ですので、弊所でご相談にこられた場合は他の方法で取得できないかご提案させていただきます。

 

 

解決策1、 常用工事ではなく、請負工事の実績はないか確認をする

 

解決策2、 過去の経歴をさかのぼり、証明できる会社はないか確認する

 

解決策3、 資格を取得する、若しくは取得している人を雇う

 

解決策4、 請負工事の実績を積む (時間はかかりますが確実です) 

 

 

 

補足ではありますが、常用工事をメインでされていて、建設業許可を取得された場合、

常用工事は建設工事に値しないので、請負工事に変換していく必要があります。

 

常用工事のみの場合、1年に1回の決算変更届の工事経歴書に記載することができず、工事実績がないことになります。また、決算書の売上についても、常用工事は兼業工事売上に値します。

 

「工事実績なし」というやり方で毎年決算変更届を提出しても問題はありませんが、

「工事実績がない」という事は、今後実務経験としてカウントすることも不可能になりますし、建設工事を行っていないということになります。

 

 

◎確認書類について

他の記事でも実務経験に関する記事を書いておりますが、実務経験での証明は非常に難しいです。

本当にその工事を行っていたのか裏付けとなる書類が必要になります。
その裏付書類は、実務経験証明書の他に、建設工事の契約書や注文書で行います。(直近5年、1年につき1件)

もちろん、契約書や注文書に常用契約や人工出しなどの文言が入っているものは、証明書類とはなりません。

 

だからと言って、証明書類の偽造は絶対にいけません。

 

なんとしても取得したいから…といって虚偽の書類を作成することは、虚偽の申請になります。

虚偽申請をした場合、建設業法第50条違反となり、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。その他にも欠格要件に該当する為、5年間建設業許可を取得することもできません。

もちろん、弊所も偽造書類の作成や虚偽申請はお断りしております。

 

それだけ、建設業許可を取得するのは簡単ではないということです。

 

◎まとめ

今回は常用工事(人工だし)の実務経験についてお話しました。

何度も言うようですが、常用工事での実務経験はカウントされません。

また、常用工事(人工だし)は法令違反です。他の会社もやっているからうちも大丈夫。という考えで行っていると、罰金、罰則、更には建設業許可の取消も考えられます。

知らなかったでは済まされない状況になる前に、改めて今の会社のご状況を確認していきましょう。

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