建設業許可を取得する為の実務経験

建設業許可を取得するには、必ず経営業務管理責任者(経管者)と専任技術者を選出しなければなりません。この要件でつまずく方も多いです。

ここでは実務経験で建設業許可を取得する場合についてご説明させていただきます。

 

 

【ご相談事例】

建設業許可を持っていた個人事業の会社(Y工業)に勤めていたが、独り立ちし、新たに会社を立ち上げ建設業許可申請を検討

経営業務管理責任者 候補:Kさん

専任技術者候補:Kさん(同人物)

Y工業の建設業許可取得日:平成20年1月10日〜

Kさんのご経歴:Y工業(建設業許可あり)で平成25年入社、

平成31年4月1日に現場部長

令和3年4月1日から役員

平成25年3月以前は他の建設会社で役員経験あり。ただし、こちらの会社は建設業許可をもっていなかった。

上記の事案で真っ先に確認しなければならないことは以下の3点になります。

  1. Y工業の建設業許可の取得日と取得している建設業許可の業種を確認。
  2. Kさんの経験証明の場合は役員歴を見るので登記簿謄本を取得

Kさんの役員歴が上記の許可取得期間に収まっておりかつ5年以上あるかを確認する。

  1. KさんのY工業での勤務実績(入社日など)を確認する

 

Kさんの役員歴は令和4年4月1日~現在までなので、令和4年4月1日〜令和6年4月1日までの2年は、登記簿謄本で証明が可能となります。しかし、残りの3年は工事部長としての経験で経営業務管理責任者としての仕事を行なっていたか、補佐として証明ができるかを確認します。

Y工業から証明人となって証明書を作成してもらえるかが大切になってきます。

専任技術者:Kさんの実務経験の証明の場合は、Kさんは平成25年〜令和6年までの間、Y工業に10年きちんと常勤していたことを証明する必要があります。

 

専任技術者と経営業務管理責任者の要件

まず前提として専任技術者と経営業務管理責任者はどのような人がなれるのか、細かい要件はありますが要約すると

◆専任技術者

要件を満たした資格を持っている。若しくは、10年間の申請業種の(現場)経験(10年実務経験)が必要

となります。

①指定大学卒業 + 3年以上の実務経験

②指定高等専門学校卒業 + 3年以上の実務経験

③専門学校卒業(高度専門士、専門士)+ 3年以上の実務経験

④千問学校卒業(上記以外)+ 5年以上の実務経験

⑤高等学校等卒業 + 5年以上の実務経験

⑥①~⑤以上の学歴の場合は10年以上の実務経験

 

◆経営業務管理責任者

5年間の「建設業を営んでいる(いた)会社での役員経験」が必要

建設業許可を取りたいが、役員経験もないし、資格も持っていない…とご相談にこられる方が多くいます。

ご状況にもよりますが、過去の実務経験等で取得することができる場合があります。

 

実務経験を書面で証明

建設業許可申請において、過去の(実務)経験の証明が一番難しいです。

過去に本当に経験した事を証拠づける書類がないといけないのです。

申請書類の一つに実務経験証明書というものがあります。

専任技術者を資格ではなく、実務経験で取得する際は、10年の実務経験が必要になりますので、下記様式に沿って10年(以上)の経験があることを記します。

《実務経験証明書》…専任技術者

09 様式第九号【実務経験証明書】

 

証明書ですので、もちろん証明者が必要になります。

以前在籍していた会社から証明してもらう場合が多いです。

前の会社となると簡単にもらえる場合もあれば、なかなかもらえない場合もあります。また、その会社が建設業許可を取得しているか、していないかも重要です。

 

 

 

◆実務経験の年数のカウント方法

経験年数は直近の連続した10年、5年、6年でなくても、25年前の6年と20年前からの4年の足し算で年数を満たせば、みとめられます。また、経験を積む会社は複数にまたがっていても可能です。

ただし、証明さえできれば、の話になります。

経営業務の管理責任者の経験も専任技術者の実務経験も不連続かつ、複数法人での経験でも大丈夫です。もちろん途中に自営業の経験等があっても問題はありません。

 

 

証明方法

建設業許可申請時に必要となる過去の経験証明に要する資料の種類・内容は各許可行政庁によって異なるので、該当の許可行政庁にお問合せいただく必要があります。

新潟県では、実務経験証明書の他に、直近5年分(5年以下の年数の場合はその年数)の請け負った工事を証する書類を求められます。

◆専任技術者の実務経験の場合

・請負契約書

・注文書又は請書

・請負代金の請求書

・工事台帳

(新潟県 建設業許可申請等の手引きより)

があげられています。

これらのいずれか1点、取得予定の業種の1件/年×5年分が必要になります。

過去になればなるほど、証拠となる資料が集めづらくなるので、証明の困難になると思います。

上記にあげたもの以外でも、工事を行ったという証拠となる書類やデータがあれば認められる可能性があります。

 

◆経営業務管理責任者の実務経験の場合

・5年以上の役員就任が確認できる登記簿謄本

・雇用保険被保険者証

・個人事業主の場合は、確定申告の写し

・直近5年分の請け負った工事を証する書類

で確認します。

 

5年以上の役員経験はないが、経営業務管理責任者の補佐として業務を行っていた方が実務経験として証明する場合があります。

その場合の証明する書類は

・組織図(経営業務管理責任者に準ずる地位にあったことを確認できるもの)

・事務分掌規程

・人事発令書、辞令書、これらに準ずるもの

・過去の稟議書等、日証明者が意思決定に関与していたことを証するもの

・取締役会の議事録

・確定申告書(事業専従者に被証明者の氏名が記載されている物※個人事業主のみ)

(新潟県 建設業許可申請等の手引きより)

とされています。

この補佐として実務経験で取得する際は、必ず証明する人(会社)が必要になります。

 

【複数業種の経験の重複は認められない】

ここで気を付けなければならないのが、1業種について10年を要します。建設業許可を取得する際に1業種ではなく、2業種、3業種と取得したい場合、経験期間の重複は認められておりません。

例えば、2010年4月から2022年3月まで塗装工事と内装仕上工事の実務経験があったとします。
この場合、2つの業種の実務経験の期間が重なっているため、塗装工事か内装仕上工事のどちらか1つの業種しか建設業許可を取得することができません。

つまり、塗装工事業と内装仕上工事業の専任の技術者になろうとする場合は20年の現場での経験が必要となります。

 

建設業許可申請においては過去の(実務)経験の証明は非常に難しい

建設業許可を取得する際に一番苦労をするといっても過言ではありません。それは経営業務管理責任者の「経営者としての経験」の証明と、専任技術者が資格者ではなく、「10年実務経験」で要件を満たそうとする際の、「現場で積んだ実務経験」の証明です。

経営業務管理責任者や専任技術者になる予定の方が、「建設業許可を取得していた(いる)会社に、基準年数(3、5、10年等々)勤続している(いた)」という場合は比較的証明しやすいですが、「許可はもっていないけど、建設業は30年以上やっていた会社に勤続15年です」等という場合は、証明に一手間も二手間もかかります。

 

まとめ

上記で述べたように実務経験の証明は証拠となる書類が必要になりますので、ハードルが上がります。逆に言えば、過去の経験を証明することができれば、資格を必要とせず、取得することができます。

しかし、状況によってどういった書類が必要なのか変わってきますので、まずはご相談いただきたいと思います。

 

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