以前、経営事項審査についての記事を書かせていただきましたが、建設業者さんの間では「ケイシン(経審)」という呼び名で呼ばれることが多いです。
経審は公共工事を行う上で必ず必要になります。
事例①
会社を設立して建設業許可を取得したら、すぐに公共工事をやっていきたいから経審を受けたい。許可をとるのと一緒にできますか?
この様に新規の建設業許可のご相談の中で聞くことがあります。
結論からお伝えすると、新設会社で建設業許可を得てさえすれば、その業種の経審を受けることは可能です。
経審を受けるにあたり、どのような段階を踏んでいく必要があるのかご説明いたします。
①経営状況分析申請「分析審査」が必要
まず最初に、経審を受けるにあたって必ず受けなければならないのがこの分析審査(以下分析)です。
「分析」とは、公共工事を受注しようとする建設業者の経営を第3者の目で会計的な立場から評価する経営状況分析のことです。経営事項審査(経審)の「経営状況」の審査に該当し、国土交通大臣が登録した経営状況分析機関によって行われます。
この分析は決算書を基に行うものになります。ですので、会社設立間もなく、“決算期未到来”の場合は「分析」を受けたとしても、売上が「0」となりますので、「0点」という事になります。
②決算変更届を提出
弊所では決算変更届と③の経営規模等評価申請を一緒に県に提出することが多いですが、決算変更届を提出していなければ、経審を受けることはできません。決算変更届は決算月から4カ月以内、経営規模等評価申請は5カ月以内に提出する必要があります。余裕をもって提出することが1番望ましいですが、経審を受ける場合は、決算変更届もとても重要になります。
中でも工事経歴書は、経審を受ける場合と受けない場合とでは書き方が異なります。
評点に使う完成工事高は、2期分または3期分の平均によって計算することになります。(決算期が1期の場合は1期分のみになります)
完成工事高については経審の点数に大きく影響するものになりますので工事経歴書の記載はポイントになってきます。
③経営規模等評価申請を行う
これは会社の経営、従業員、社会性等の規模を申請するものになります。
例えば、会社の経営年数(間に休業等があればそれも報告します)や資本金の額、機械の保有や国家資格を持った従業員が多くいれば点数もあがります。
その他にも、会社として次世代育成対策や防災活動への貢献をしているか等も加点項目になっており、経営規模が大きく、技術力があると評価され、高い点数がつきます。
それらを証明する書類としてご提出いただきますので、準備のお時間がかかります。
④経営規模等評価を受ける
経営状況分析結果通知書が県より届きます。
中で一番大事なのがP点です。
このP点によって、入札に参加できる公共工事の規模が変わってきますので、このP点が前年をいかに上げるかがポイントになってくると思います。
⑤入札参加資格を得る
④の経営状況分析結果通知書が手に入ったら、いよいよ入札参加資格の申請を行います。国や都道府県、市町村、独立行政法人など、希望する公共団体などへ入札参加資格審査を申請し、問題なく入札参加できる会社だと審査により認められた場合、入札参加資格者名簿に登録されます。ここで初めて入札参加が可能となります。
まとめ
以上、経審を受けるにあたってご説明しましたが、決算期未到来の状態で経審を受けることは可能ですが、経審を受ける為の第一ステージの「経営状況分析」が必然的に「0点」になってしまいます。
これではいくら、労災保険も入って、技術者もたくさん、資本金も5000万、資格者も多くいます!という状況でもなかなか点数は上がりません。
入札参加を狙っている自治体の状況にもよりますが、点数が低ければせっかく経審を受けたのに受注になりません。
(自治体によっては1年(1期)を経過しない会社はそもそも入札の参加ができないとしているところもあります。)
経審を受けるにもコストがかかります。今の会社のご状況を見つつ、いつどのタイミングで行うのがいいのか一度考えるのも必要だと思います。
どのような場合に「特定」の許可が必要になるのでしょうか。
A.元請け工事を請け負う場合、下請けに出す工事金額の総額で決まります。
発注者から直接工事を請け負う場合、下請に出す工事金額の総額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)になる場合は、特定建設業許可が必要になります。下請として請け負う場合は、特定建設業の許可を取得する必要はありません。
例 発注者より工事代金1億円の工事を受注(建築一式工事以外の工事の場合)
➀下請A社へ3000万円、下請B社へ2000万円と下請けに出す工事代金の総額が5000万円の場合。
下請けに出す工事代金の総額が4500万円以上となるため、特定建設業許可が必要
②下請A社へ2000万円、下請B社へ2000万円と下請けに出す工事代金の総額が4000万円の場合。
下請けに出す工事代金の総額が4500万円未満のため、一般建設業許可でよい。
③下請に出さずに自社で全てを施工する場合。
一般建設業許可でよい。
消費税の考え方
消費税を含めて判断します。例えば、工事代金を4,100万円として下請業者に発注する場合、消費税を加算した4,950万円を総額として考えるため、特定建設業許可が必要になります。
材料費の考え方
特定建設業許可が必要かどうかを判断する場合は、元請が提供する材料費は考慮しません。
申請業種すべてを「特定」として申請しなくてもよい
塗装工事と内装仕上げ工事を取得したい場合、塗装工事を「特定」、内装仕上げ工事を「一般」の許可として申請することができます。
同一業種を「特定」と「一般」の両方の許可を取ることができない
本社営業所で、管工事の「特定」を申請し、A営業所では、管工事の「特定」の要件を満たす専任技術者がいないため、「一般」で申請をしたい。これはできません。同一の業種では、「ある営業所は特定」で「違う営業所は一般」という申請は出来ません。この会社で「特定」許可が必ず必要ということであれば、本社営業所で「特定」許可を取得し、A営業所では、管工事の許可は取得できないということになります。こうなった場合、管工事工の請負契約は本社営業所でのみ契約の締結が可能となります。
特定建設業許可の意義
特定建設業許可は、下請業者を保護するために設けられた制度です。そのため、取得要件は一般建設業許可よりも厳しくなっています。取得するには1級技術者や指導監督的実務経験を有する専任技術者を配置するだけでなく、財産要件でも資本金が2,000万円以上であること、流動比率が75%以上であること、欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと 自己資本が4,000万円以上であること。などの要件を満たしていなければなりません。
特定建設業許可のメリット
特定建設業許可を取得すれば、大規模な工事を発注者から直接請け負う事が出来るようになり、今まで受注出来なかった大きい工事も請け負うことができます。また、一定の財産基盤があることの証明、社会的信用力があがり金融機関から融資を受けやすくなります。
まとめ
- 特定建設業許可が必要なのは元請業者のみとなります。
- 元請が提供する材料費は考慮しません。
- 取得要件は一般建設業許可よりも厳しくなっていますが、大規模な工事を発注者から直接請け負う事が出来るようになり、今まで受注出来なかった大きい工事も請け負うことができます。
「解体工事業」は平成になって追加された29番目の業種です。
解体工事業という業種が出来る前までは「とび・土工・工事業」の許可を持っていれば、現在の「解体工事業許可の中で請け負える工事」も請負可能でしたが、平成28年以降とび・土工・コンクリート工事業から解体工事業が分離する形で29番目の業種として新設されました。
「許可」と「登録」の違い
請負金額が500万円以上の解体工事又は、解体工事を含む建設工事(建築一式工事に該当する解体工事を含む建設工事にあっては請負金額が1,500万円以上)を行う場合は、建設業許可が必要です。
なお、「土木工事業」「建築工事業」「解体工事業」に係る建設業許可を持たず、解体工事を行う場合は、元請・下請の別に関わらず、工事を施工する区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければなりません。
言い換えると、解体工事を行う予定があれば、
500万(税込)未満であれば 登録
500万(税込)以上であれば 許可
になるということです。
余談ではありますが、「土木工事業」「建築工事業」をお持ちの場合は登録がなくても500万未満の工事を請負うことが可能です。
(新潟県HP 「解体工事業の登録について」参照)
解体業許可取得のメリット
許可と登録どちらが取りやすいかというと、提出する書類に数でいえば「登録」が圧倒的に少なくなります。ですが、実務経験証明書を作成する場合が多いので、許可を取得するのと、そこまで大きく変わらないと考えていいです。
もし、許可を取得する要件が揃っているのであれば、断然に「許可」を取得することをオススメします。
許可を取得していれば、いざ500万以上の仕事を請負うことがあった場合、再度許可を取得する為の手続きをしなくてもいいからです。
「許可」と「登録」もなく請け負った場合の罰則
解体工事業の登録をせずに解体工事業を行った場合は、罰則が適用されます。
もし、解体工事業の登録をせずに500万円未満の解体工事を行った場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。 加えて、罰金以上の刑を科せられたことは登録拒否事由に該当するため、その後2年間は解体工事業登録ができなくなってしまいます。
「許可」について
解体業の許可を取得するには、建設業のヒト・モノ・カネのなかでも「人」の要件がクリアすれば取得にグッと近づきます。
解体業は下記の資格と場合によっては実務経験をあわせることで専任技術者としての要件を満たします。
資格・試験名 |
種別 |
建設業法による技術検定 |
1級土木施工管理技士(注1) |
1級土木施工管理技士補(実③) |
2級土木施工管理技士(土木)(注1) |
2級土木施工管理技士(鋼構)(実⑤) |
2級土木施工管理技士(薬液)(実⑤) |
2級土木施工管理技士補(実⑤) |
1級建築施工管理技士補(実⑤) |
2級建築施工管理技士(建築)(注1) |
2級建築施工管理技士(躯体)(注1) |
2級建築施工管理技士(仕上げ)(実⑤) |
2級建築施工管理技士補(実⑤) |
1級造園施工管理技士(実③) |
1級造園施工管理技士補(実③) |
2級造園施工管理技士(実⑤) |
2級造園施工管理技士補(実⑤) |
技能検定 |
1級とび |
2級とび(実③) |
その他 |
解体工事施工技士 |
|
解体工事施工技士試験(注記4参照)合格者 |
(注意1参照) 解体工事業について技術検定にかかる資格は平成27年度までの合格者について、技術士試験資格にかかる資格は当面の間、資格とは別に、解体工事に関する1年以上の実務経験を有している又は登録解体工事講習を受講していることが必要。
(注記4参照) 解体工事施工技士試験とは、公益社団法人全国解体工事業団体連合会が実施する試験。
(実○参照) 資格と実務経験○年の証明が必要
解体工事に関する資格がない場合
□解体工事業(とび・土工・コンクリート工事業)の許可を持っている会社(自社でも他社でも構わない)に勤務して、10年間の実務経験がある
□解体工事業(とび・土工・コンクリート工事業)の許可を持っておらず、登録をしている会社に勤務して、10年間の実務経験がある
(学歴によって5年、若しくは3年で大丈夫な場合もあります)
上記2点をクリアしていれば資格が無くても、専任の技術者になれる可能性があります。
「登録」について
「許可」についてご紹介しましたが、上記にもありますように解体業を取得するには限られた資格や実務経験が必要になりますので、要件が合う人がいない場合もあります。
登録にも専任技術者ではなく「技術管理者」といわれる方を選出する必要があります。
資格・種別 |
1級建設機械施工技士 |
2級建設機械施工技士(種別「第1種」又は「第2種」に限る。) |
1級土木施工管理技士 |
2級土木施工管理技士(種別「土木」に限る) |
1級建築施工管理技士 |
2級建築施工管理技士(種別「建築」又は「躯体」に限る。) |
1級建築士 |
2級建築士 |
1級のとび・土工の技能検定に合格した者 |
2級のとびあるいはとび工の技能検定に合格した後、
解体工事に関し1年以上の実務経験を有する者 |
技術士(2次試験のうち建設部門に合格した者に限る) |
解体工事施工技士試験(注記4参照)合格者 |
資格がない場合
登録の場合は許可が実務経験10年に対し、8年と2年分短い期間で認められます。ただし、解体工事に関する実務経験については、許可と同じ、必要な建設業許可又は解体工事業登録を受けて請け負ったものに限り、認められます。
まとめ
解体業をする上で許可もしくは登録が必要なことをご説明させていただきました。冒頭でもご説明しましたが、解体業は平成28年から新たにできた業種です。
ご取得前に考えていただきたいのですが、例えば、内装のフルリノベーションのため解体工事は「解体工事業」ではなく内装工事のための解体なので「内装仕上工業」となります。(「内装解体のみ」の工事になれば「解体工事」が必要)
今行っている工事が本当に建設業法の”解体工事業”に該当して、必要なのかという点も重要になります。
防水工事(新規許可)
許可年月日:令和6年8月30日
新潟市東区
税理士事務所様からご紹介頂きました。
一般建設業許可を取得したらいくらまで工事が受注できるのでしょうか。
元請けとして工事を請け負う場合と下請けとして工事を請け負う場合で異なります。
一般建建設業許可業者が「元請」で工事を請負う場合、下請に出す工事の金額の合計は4,500万円未満(建築一式工事の場合は7,000万円未満)でなければなりません。
下請けに出す金額が合計で4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)になる場合は特定建設業許可が必要になります。
一般建設業許可業者が「下請」で工事を請負う場合は、金額に制限はありません。
いくらの工事であっても請け負うことができます。1次下請けも2次下請けも同様です。
下請けに出す金額の合計という考え方なので、すべての工事を自社だけで施工するという業者であれば、工事の金額にかかわらず一般建設業許可で請け負うことができます。
材料費の考え方
建設業法施行令に「注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。」と定められています。
注文者が材料を提供する場合は、その材料費及び運送費も請負金額に含めるとされています。
軽微な建設工事かどうかを判断するときには、材料費、運送費も含めて考えます。
例えば以下のようなケースです。
材料費(注文者が提供):300万円
運送費(材料を運ぶ費用):50万円
請負金額:300万円
請負金額が500万円以上ではないため、建設業許可は不要だと勘違いしてしまいそうですが、軽微な建設工事か建設業許可が必要な建設工事であるかを判断するときには、材料費、運送費も含めて考えます。
そのため、この工事の場合は、請負金額に材料費と運送費を含めた650万円となり、建設業許可がないと請け負うことができません。
一般建設業許可と特定建設業許可では
一般建設業許可では、材料費と請負金額を合わせた金額で建設業許可が必要であるか判断しますが、特定建設業許可が必要かどうかを判断する場合は、元請が提供する材料費は考慮しません。
消費税の考え方
一般建設業許可が必要であるか
受注金額に消費税を含めて判断します。例えば受注金額が税抜き460万円であった場合、消費税を加算した506万円を総額として考えるため、この工事を受注する際には一般の建設業許可が必要になります。
特定建設業許可が必要であるか
特定建設業の判断基準である4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)に、消費税を含めて判断します。例えば、工事代金を4,100万円として下請業者に発注する場合、消費税を加算した4,950万円を総額として考えるため、特定建設業許可が必要になります。
まとめ
- 軽微な工事か建設業許可が必要な工事であるか判断するには請負金額に材料費・運搬費を含める
- 特定建設業許可が必要な工事であるか判断するには、請負金額のみで材料費・運搬費は含めない
- 請負金額は消費税込みで考える
- 特定建設業許可が必要であるか判断する必要があるのは元請工事についてのみ
- 一般建設業許可業者が「元請」で工事を請負う場合、下請に出す工事の金額の合計は4,500万円未満(建築一式工事の場合は7,000万円未満)。下請けに出す金額の合計が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)になる場合は特定建設業許可が必要。
- 一般建設業許可業者が「下請」で工事を請負う場合は、いくらの工事であっても請け負うことができる。
【事例】
①電気配線工事(主たる工事)において、主たる電気工事をすべてA社に下請けさせ、自らは付帯する内装工事を施工する。
②450万円で請けた工事を事情により施工できなくなり、やむなく 450万円でA社に下請けとしてすべて施工させる。
これらは「一括下請負」とされるものになります。
一括下請負とは
① 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
② 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機 能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
(国土交通省 平成28年10月14日 国土建第275号より)
請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせることは「一括下請負」、「丸投げ」とされて、建設業法で禁止をされています。
【建設業法】
(一括下請負の禁止)
第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
4 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。
要約すると、
- 元請業者に対しての一括下請負を禁止
- 下請業者に対しての一括下請負を禁止
- 公共的な施設以外であり、発注者の書面または電子書面があれば一括下請負は可能
下請けに出した業者も、その仕事を引き受けた業者もどちらも罰せられます。
もちろん、下請け間(一次下請け、二次下請け…)でも禁止されています。
また、建設業許可を持っている、持っていない関係ありませんので注意が必要です。
罰せられる内容としては、「指示及び勧告」の対象となり、「指示及び勧告」にも従わない場合は「一年以内の期間を定めて、その営業の全部または一部の停止を命じることが出来る」とされております。
◆そもそも、なぜ一括下請負が禁止とされているのか
国土交通省が一括下請負の禁止に係る判断基準の明確化した「平成28年10月14日国土建第275号」の記載内容によると、下記の通りになっています。
(1)建設工事の発注者が受注者となる建設業者を選定するに当たっては、過去の施工実績、施工能力、経営管理能力、資力、社会的信用等様々な角度 から当該建設業者の評価をするものであり、受注した建設工事を一括して 他人に請け負わせることは、発注者が建設工事の請負契約を締結するに際して当該建設業者に寄せた信頼を裏切ることになる。
(2)また、一括下請負を容認すると、中間搾取、工事の質の低下、労働条件 の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生するとともに、施工能 力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招くことにもなりかねず、 建設業の健全な発達を阻害するおそれがあります。
要するに、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切ることになりますし、施工責任があいまいになることで、手抜き工事や労働条件の悪化につながるおそれがあります。
そして、一括下請負が認められることで中間搾取を目的とした施工能力のない不良な建設業者が生まれかねません。
実質的に関与していることがポイント
どこからが一括下請負にあたるかどうかの判断基準は工事に実質的に関与しているということです。では、ここでいう「実質的関与」とは
元請負人が自ら『施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導』等を行うことを言います。
国土交通省からもこのようにまとめられています。
(国土交通省ホームページ 平成28年10月14日より)
単に主任技術者等を配置しているだけでは主体的に関わっているとみなされません。
主体的な関わりがない場合は実質的な関与がないとされるのです。
まとめ
今回は建設業界で禁止されている一括下請負についてご紹介させていただきました。
せっかく建設業許可を取得したものの建設業法に違反して処分を受けてしまうということは避けたいところです。
建設業許可が一旦取り消し・剥奪されてしまうとその時点から5年間は許可の再取得ができなくなってしまいますし、建設業許可がなくなると実質的に建設業の営業ができなくなり、建設業としての事業の継続が危うくなります。
知らないうちに法令違反していた、なんてことにならないよう注意しましょう。
建設業許可を取得するには、必ず経営業務管理責任者(経管者)と専任技術者を選出しなければなりません。この要件でつまずく方も多いです。
ここでは実務経験で建設業許可を取得する場合についてご説明させていただきます。
【ご相談事例】
建設業許可を持っていた個人事業の会社(Y工業)に勤めていたが、独り立ちし、新たに会社を立ち上げ建設業許可申請を検討
経営業務管理責任者 候補:Kさん
専任技術者候補:Kさん(同人物)
Y工業の建設業許可取得日:平成20年1月10日〜
Kさんのご経歴:Y工業(建設業許可あり)で平成25年入社、
平成31年4月1日に現場部長
令和3年4月1日から役員
平成25年3月以前は他の建設会社で役員経験あり。ただし、こちらの会社は建設業許可をもっていなかった。 |
上記の事案で真っ先に確認しなければならないことは以下の3点になります。
- Y工業の建設業許可の取得日と取得している建設業許可の業種を確認。
- Kさんの経験証明の場合は役員歴を見るので登記簿謄本を取得
Kさんの役員歴が上記の許可取得期間に収まっておりかつ5年以上あるかを確認する。
- KさんのY工業での勤務実績(入社日など)を確認する
Kさんの役員歴は令和4年4月1日~現在までなので、令和4年4月1日〜令和6年4月1日までの2年は、登記簿謄本で証明が可能となります。しかし、残りの3年は工事部長としての経験で経営業務管理責任者としての仕事を行なっていたか、補佐として証明ができるかを確認します。
Y工業から証明人となって証明書を作成してもらえるかが大切になってきます。
専任技術者:Kさんの実務経験の証明の場合は、Kさんは平成25年〜令和6年までの間、Y工業に10年きちんと常勤していたことを証明する必要があります。
専任技術者と経営業務管理責任者の要件
まず前提として専任技術者と経営業務管理責任者はどのような人がなれるのか、細かい要件はありますが要約すると
◆専任技術者
要件を満たした資格を持っている。若しくは、10年間の申請業種の(現場)経験(10年実務経験)が必要
となります。
①指定大学卒業 + 3年以上の実務経験
②指定高等専門学校卒業 + 3年以上の実務経験
③専門学校卒業(高度専門士、専門士)+ 3年以上の実務経験
④千問学校卒業(上記以外)+ 5年以上の実務経験
⑤高等学校等卒業 + 5年以上の実務経験
⑥①~⑤以上の学歴の場合は10年以上の実務経験
◆経営業務管理責任者
5年間の「建設業を営んでいる(いた)会社での役員経験」が必要
建設業許可を取りたいが、役員経験もないし、資格も持っていない…とご相談にこられる方が多くいます。
ご状況にもよりますが、過去の実務経験等で取得することができる場合があります。
実務経験を書面で証明
建設業許可申請において、過去の(実務)経験の証明が一番難しいです。
過去に本当に経験した事を証拠づける書類がないといけないのです。
申請書類の一つに実務経験証明書というものがあります。
専任技術者を資格ではなく、実務経験で取得する際は、10年の実務経験が必要になりますので、下記様式に沿って10年(以上)の経験があることを記します。
《実務経験証明書》…専任技術者
09 様式第九号【実務経験証明書】
証明書ですので、もちろん証明者が必要になります。
以前在籍していた会社から証明してもらう場合が多いです。
前の会社となると簡単にもらえる場合もあれば、なかなかもらえない場合もあります。また、その会社が建設業許可を取得しているか、していないかも重要です。
◆実務経験の年数のカウント方法
経験年数は直近の連続した10年、5年、6年でなくても、25年前の6年と20年前からの4年の足し算で年数を満たせば、みとめられます。また、経験を積む会社は複数にまたがっていても可能です。
ただし、証明さえできれば、の話になります。
経営業務の管理責任者の経験も専任技術者の実務経験も不連続かつ、複数法人での経験でも大丈夫です。もちろん途中に自営業の経験等があっても問題はありません。
証明方法
建設業許可申請時に必要となる過去の経験証明に要する資料の種類・内容は各許可行政庁によって異なるので、該当の許可行政庁にお問合せいただく必要があります。
新潟県では、実務経験証明書の他に、直近5年分(5年以下の年数の場合はその年数)の請け負った工事を証する書類を求められます。
◆専任技術者の実務経験の場合
・請負契約書
・注文書又は請書
・請負代金の請求書
・工事台帳
(新潟県 建設業許可申請等の手引きより)
があげられています。
これらのいずれか1点、取得予定の業種の1件/年×5年分が必要になります。
過去になればなるほど、証拠となる資料が集めづらくなるので、証明の困難になると思います。
上記にあげたもの以外でも、工事を行ったという証拠となる書類やデータがあれば認められる可能性があります。
◆経営業務管理責任者の実務経験の場合
・5年以上の役員就任が確認できる登記簿謄本
・雇用保険被保険者証
・個人事業主の場合は、確定申告の写し
・直近5年分の請け負った工事を証する書類
で確認します。
5年以上の役員経験はないが、経営業務管理責任者の補佐として業務を行っていた方が実務経験として証明する場合があります。
その場合の証明する書類は
・組織図(経営業務管理責任者に準ずる地位にあったことを確認できるもの)
・事務分掌規程
・人事発令書、辞令書、これらに準ずるもの
・過去の稟議書等、日証明者が意思決定に関与していたことを証するもの
・取締役会の議事録
・確定申告書(事業専従者に被証明者の氏名が記載されている物※個人事業主のみ)
(新潟県 建設業許可申請等の手引きより)
とされています。
この補佐として実務経験で取得する際は、必ず証明する人(会社)が必要になります。
【複数業種の経験の重複は認められない】
ここで気を付けなければならないのが、1業種について10年を要します。建設業許可を取得する際に1業種ではなく、2業種、3業種と取得したい場合、経験期間の重複は認められておりません。
例えば、2010年4月から2022年3月まで塗装工事と内装仕上工事の実務経験があったとします。
この場合、2つの業種の実務経験の期間が重なっているため、塗装工事か内装仕上工事のどちらか1つの業種しか建設業許可を取得することができません。
つまり、塗装工事業と内装仕上工事業の専任の技術者になろうとする場合は20年の現場での経験が必要となります。
建設業許可申請においては過去の(実務)経験の証明は非常に難しい
建設業許可を取得する際に一番苦労をするといっても過言ではありません。それは経営業務管理責任者の「経営者としての経験」の証明と、専任技術者が資格者ではなく、「10年実務経験」で要件を満たそうとする際の、「現場で積んだ実務経験」の証明です。
経営業務管理責任者や専任技術者になる予定の方が、「建設業許可を取得していた(いる)会社に、基準年数(3、5、10年等々)勤続している(いた)」という場合は比較的証明しやすいですが、「許可はもっていないけど、建設業は30年以上やっていた会社に勤続15年です」等という場合は、証明に一手間も二手間もかかります。
まとめ
上記で述べたように実務経験の証明は証拠となる書類が必要になりますので、ハードルが上がります。逆に言えば、過去の経験を証明することができれば、資格を必要とせず、取得することができます。
しかし、状況によってどういった書類が必要なのか変わってきますので、まずはご相談いただきたいと思います。
「建設業許可を取得したい」とお考えの方は、手引きや建設業許可サイト等で「令3条の使用人」という言葉を見たことがるのではないでしょうか。
令3条とは建設業法施行令第3条を言います。
建設業法施行令
(使用人)
第三条 法第六条第一項第四号(法第十七条において準用する場合を含む。)、法第七条第三号、法第八条第四号、第十二号及び第十三号(これらの規定を法第十七条において準用する場合を含む。)、法第二十八条第一項第三号並びに法第二十九条の四の政令で定める使用人は、支配人及び支店又は第一条に規定する営業所の代表者(支配人である者を除く。)であるものとする。
要するに支配人、支店長、営業所長ということになります。
支店長や営業所長については皆さんもイメージ出ると思うのですが、「支配人」はどうでしょうか。
レストラン、結婚式場、ホテル、ゴルフ場の責任者?のようなイメージだと思います。
商法には以下のように規定されています
(支配人)
第二十条 商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。
(支配人の代理権)
第二十一条 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(支配人の登記)
第二十二条 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。
建設業許可事務ガイドラインには以下のように規定されています
「支配人」とは、営業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人をいい、これに該当するか否かは、商業登記の有無を基準として判断する。
建設業許可においての支配人は、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有し、登記が必要ということになります。
このように「支配人」は、建設業に関する契約権限を含む強力な権限が当然に付与されていることに対して「支店長」「営業所長」には、必ずしもそのような権限が与えられているわけではないという点に注意しましょう。
令3条の使用人としての経験は、経営業務管理責任者に必要な期間としてカウントすることができます。
建設業許可事務ガイドライン
「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、24 執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。
令3条使用人の要件
建設業許可事務ガイドラインでは以下のように規定されています。
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、建設工事の請負契約の締結及びその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者である者が該当する。これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することや、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワーク(営業所等の勤務を要する場所以外の場所で、ICTの活用により、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行でき、かつ、当該所定の時間中において常時連絡を取ることが可能な環境下においてその職務に従事することをいう。以下同じ。)を行う場合を含む。)していることが求められる。
「支店長」「営業所長」等の名称だけでなく、実際に見積作成や契約の権限を与えられている必要があります。
以下の要件に該当する場合は、令3条の使用人にはなれません
1 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
2 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
3 不正の手段により許可を受けた場合、又は営業停止処分に違反したこと等によりその許可を取消されて5年を経過しない者
4 許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出日から5年を経過しない者
5 上記4の届出があった場合に、許可の取消処分に係る聴聞の通知の前60日以内に当該法人の役員若しくは令第3条に規定する使用人又は個人の支配人であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
6 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
7 営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
8 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
9 建設業法又は政令で定める一定の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
10 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 11 暴力団員がその事業活動を支配する者
12 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記1から11のいずれかに該当する者
建設業許可を取得するには
「請負契約を締結するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること」
が要件となっています。
要するに一定額以上の財産(500万円)を有している又は調達できる必要があります。
なぜ、このような要件が定められているのでしょうか。
通常、建設工事は「前払い」ではないため、材料費や人件費、外注費などの費用が先行して支出されることになり、工事を請負った建設会社の資金力が必要になります。
工事の途中で資金が不足して工事がストップしたり倒産したりということになると多方面に損害が生じてしまいます。
そのようなことをできるだけ防ぐためにこの要件が定められているのです。
では、具体的にどのような証明書類が必要なのでしょうか。
- 申請直前決算期の貸借対照表の自己資本額が500万円以上であること
- 残高証明書又は融資証明書の額が500万円以上であること
自己資本額とは
法人―貸借対照表における純資産合計の額
個人―期首資本金+事業主借勘定+事業主利益-事業主貸勘定+(負債の部に計上の)利益留保性引当金・準備金
残高証明書とは
銀行等の金融機関が「証明日」時点の預金残高を証明してくれる書類になります。
新潟県の場合は、2週間以内の者が必要になりますのでご注意ください。
Q 証明日の翌日以降に預金を引き出す必要があるのですが問題ないですか
A あくまでも証明日に500万円以上が要求されるので、翌日以降残高が減っても問題ありません
Q 複数の金融機関の残高証明を合算して申請はできますか
A できます。ただし、残高証明書と融資証明書の合算は要件を満たしません。
Q 建設業許可の「更新」時にも、「請負契約を締結するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること」が求められますが、同じように証明書類が必要なのでしょうか。
A 「更新」時には、「許可申請の直前過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有すること」で残高証明書等の証明書類は不要となります。
左官工事業・防水工事業(新規許可)
許可年月日:令和6年2月22日
新潟市江南区
税理士事務所様からご紹介頂きました。
建設業の許可に関するお問い合わせ
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