建設業許可の申請で重要な要件の一つに、「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」があります。
その中でも、会社の役員などが経営業務の管理責任者として認められるためには、原則として常勤であることが重要なポイントになります。
では、「常勤」とは具体的にどのような状態をいうのでしょうか。
今回は、建設業許可における経営業務の管理責任者の常勤性について解説します。
1.経営業務の管理責任者とは?
建設業許可を取得するためには、建設業に関する経営経験などを有する者を配置し、適正な経営体制を確保する必要があります。
一般的に「経営業務の管理責任者」と呼ばれています。
例えば、株式会社であれば、
- 代表取締役
- 取締役
などが該当するケースがあります。
ただし、単に「役員になっている」というだけで認められるわけではありません。
建設業に関する一定の経営経験があることなど、法律上の要件を満たす必要があります。
そして、もう一つ重要なのが「常勤性」です。
2.「常勤」とはどういう意味?
建設業許可における「常勤」とは、原則として、その営業所において休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している状態をいいます。
つまり、
「会社の役員として名前が載っている」
だけでは十分ではありません。
実際にその会社で継続的に勤務し、経営業務を行っていることが重要です。
例えば、代表取締役であっても、
「普段は東京に住んでいて、新潟の会社には月に1~2回しか来ない」
というような状態では、常勤性について問題になる可能性があります。
3.「週に何日働けば常勤?」という単純な話ではありません
常勤性について、
「週5日勤務なら常勤ですか?」
という質問を受けることがあります。
しかし、単純に勤務日数だけで判断するものではありません。
重要なのは、
その会社の営業所において、通常の勤務時間を継続的に勤務している実態があるか
という点です。
そのため、勤務実態、所在地、勤務時間、他社での勤務状況などを総合的に確認する必要があります。
4.他の会社の代表取締役を兼任している場合は?
実務上、特に注意が必要なのが他社の代表取締役との兼任です。
例えば、
A社の代表取締役
B社の代表取締役
を同じ人が兼任している場合です。
「どちらも自分の会社だから、両方とも常勤でいいだろう」
という考え方は危険です。
常勤性については、実際にどこで勤務しているのか、他社での勤務状況などを確認する必要があります。
特に、他社の代表者として常勤していることが明らかな場合には、同時に別会社の経営業務の管理責任者として常勤性を認めてもらうことが難しくなる場合があります。
複数法人の役員を兼任している場合には、事前に行政庁へ確認することをおすすめします。
5.他社の役員を兼任している場合も注意
代表取締役だけではありません。
例えば、
- A社の取締役
- B社の取締役
- C社の監査役
など、複数の法人の役員を兼任している場合にも注意が必要です。
特に、建設業許可を申請する会社以外の会社で、実際に業務に従事している場合には、常勤性について確認される可能性があります。
「登記上の役員だから問題ない」
「非常勤ということにしているから大丈夫」
とは限りません。
実際の勤務実態がどうなっているのかが重要です。

6.個人事業主として他の事業をしている場合は?
法人の役員ではなく、個人事業主として別の事業を行っている場合も注意が必要です。
例えば、
建設会社の取締役をしながら、別の場所で個人事業を営んでいる
というケースです。
この場合も、
「個人事業をしている=絶対に常勤性が認められない」
という単純な話ではありません。
しかし、建設業許可を申請する会社に本当に常勤しているのか、他の事業との時間的な両立が可能なのかなど、実態を確認する必要があります。
7.常勤性は「社会保険」などから確認されることがあります
常勤性を確認する際には、社会保険の加入状況なども重要な資料となります。
例えば、
- 健康保険・厚生年金の加入状況
- 雇用関係を示す資料
- 住民票
- 出勤状況
- 給与の支払い状況
- その他、勤務実態を確認できる資料
などです。
ただし、社会保険に加入していることだけで常勤性が自動的に認められるわけではありません。
逆に、社会保険の状況だけで判断するのではなく、実際の勤務実態を含めて総合的に判断されます。
8.「名前だけ役員」は危険で
建設業許可のために、
「とりあえず父親を取締役に入れておこう」
「以前建設会社を経営していた人を役員にすればいい」
というような考え方は注意が必要です。
経営業務の管理責任者には、単に役員として登記されているだけではなく、一定の経営経験や常勤性など、法律上の要件があります。
さらに、許可取得後も、その要件を満たす状態を維持する必要があります。
つまり、
「許可を取るときだけ条件を整える」
という考え方ではなく、
「許可を取得した後も継続して要件を満たせる体制を作る」
ことが重要です。
9.経営業務の管理責任者が退職するとどうなる?
もう一つ重要なのが、経営業務の管理責任者が退職した場合です。
例えば、
「社長が高齢になったので退任する」
「経営業務の管理責任者になっていた取締役が退職する」
という場合です。
その結果、建設業許可の要件を満たす人がいなくなると、許可の維持に影響する可能性があります。
そのため、経営者の交代や役員変更を行う場合には、
「登記の変更だけを考える」のではなく、「建設業許可の要件を引き続き満たせるか」
まで確認することが重要です。
特に事業承継や親族への代表者変更を予定している会社では、早めの準備をおすすめします。
10.「常勤性」は書類だけでなく実態が重要
経営業務の管理責任者については、
「登記簿に役員として載っている」
「社会保険に加入している」
といった書類上の形式だけではなく、実際にその会社で経営業務に従事しているかという実態が重要です。
建設業許可の申請では、形式と実態が一致していることが大切です。
無理に書類を整えるのではなく、
- 誰が経営しているのか
- 誰が日常的に会社に勤務しているのか
- 他社との兼任はないか
- 社会保険の加入状況はどうなっているか
- 将来も要件を維持できるか
を一つずつ確認することが重要です。
まとめ
経営業務の管理責任者については、「経営経験があるか」だけでなく、「常勤性があるか」も重要なポイントです。
特に注意したいのは、
- 他社の代表取締役を兼任している
- 複数会社の役員を兼任している
- 別の事業を営んでいる
- 遠方に居住している
- 実際には会社にほとんど勤務していない
- 事業承継などで役員が交代する
といったケースです。
建設業許可は、「許可を取れるか」だけでなく、「許可を維持できるか」まで考えておくことが大切です。
「この人を経営業務の管理責任者にして大丈夫?」
「社長が2社の代表を兼任しているけれど問題ない?」
「事業承継で社長を交代しても建設業許可は維持できる?」
このようなケースでは、申請前に専門家へ確認しておくと安心です。




