「専任技術者が退職することになりました。建設業許可はどうなりますか?」
建設業者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
専任技術者は、建設業許可を維持するために非常に重要な存在です。
そのため、専任技術者が退職する場合には、
「退職してから考えればいい」
ではなく、できるだけ早く後任者や許可要件を確認する必要があります。
今回は、建設業許可の専任技術者が退職した場合に、何が起こるのか、どのように対応すればよいのかを解説します。
1.専任技術者が退職しても、直ちに許可が「取消し」になるわけではない
まず、ここは誤解されやすいポイントです。
専任技術者が退職したからといって、直ちに建設業許可そのものが「取消し」になるという意味ではありません。
しかし、専任技術者がいなくなった結果、建設業許可の要件を満たさなくなれば、許可をそのまま維持できなくなる可能性があります。
つまり、
専任技術者の退職=即許可取消し
ではありませんが、
専任技術者がいない状態を放置する=建設業許可の維持に重大な問題が生じる
ということです。
そのため、退職が決まった時点で早めに対応することが重要です。
2.まず確認するのは「後任者がいるか」
専任技術者が退職する場合、最初に確認するのは、
「後任として専任技術者になれる人が社内にいるか」
です。
例えば、
- 1級・2級の施工管理技士
- 技術士
- 建築士
- 電気工事士
- 電気主任技術者
- その他の国家資格者
- 一定の実務経験を有する社員
など、許可を受けている業種に応じて必要な資格・実務経験等を満たしている人がいるかを確認します。
「現場経験が長いから大丈夫だろう」
と自己判断するのではなく、その人が申請する業種の専任技術者として認められるのかを確認することが重要です。
3.後任者は「資格を持っているだけ」ではダメ
専任技術者になるためには、単に資格を持っていればよいというわけではありません。
例えば、
「施工管理技士の資格を持っている社員がいる」
としても、
- その資格が許可業種に対応しているか
- 営業所に専任できるか
- 常勤性が認められるか
- 他の会社や営業所で専任していないか
などを確認する必要があります。
特に重要なのが、
「その人が営業所に専任できる状態なのか」
という点です。
資格者が現場に出ていて、営業所にほとんどいないという場合には、専任性が問題になることがあります。
4.退職日までに後任を決めておくことが理想
専任技術者の退職が決まったら、
「退職してから後任を探す」
のではなく、
「退職する前に後任者を決めておく」
ことが理想です。
例えば、
6月30日 現在の専任技術者が退職
7月1日 新しい専任技術者を配置
というように、できるだけ許可要件に空白が生じないように準備します。
後任者が社内にいない場合には、採用や資格取得、組織変更なども含めて早めに検討する必要があります。
5.後任が見つからない場合はどうする?
実務上、一番困るのがこのケースです。
「専任技術者が退職するけれど、社内に後任者がいない」
という場合です。
この場合、
「とりあえずそのまま営業を続ける」
という対応はおすすめできません。
まず、現在の許可について、
- どの業種の許可を持っているのか
- 専任技術者が何人いるのか
- 他の営業所に資格者がいないか
- 役員や従業員の中に後任候補者がいないか
- 新たに採用できる可能性があるか
などを確認します。
そのうえで、許可を受けている行政庁へ早めに相談することが重要です。
6.専任技術者がいなくなったら「変更届」が必要
専任技術者に変更があった場合には、建設業許可について変更の届出が必要になります。
専任技術者が退職した場合には、
「専任技術者の変更」
として必要な手続きを行うことになります。
ここで重要なのは、
退職したことを会社内部で処理して終わりにしないこと
です。
建設業許可に関する変更は、行政庁への届出が必要になるため、期限や必要書類を確認して対応しましょう。
7.「許可を返納しなければならない」のか?
専任技術者が退職し、後任者が見つからない場合、
「建設業許可を返納しなければならないのでしょうか?」
という質問があります。
これもケースによって対応が異なります。
例えば、許可を受けている複数の業種のうち、一部の業種についてだけ専任技術者が確保できなくなった場合には、その業種について許可を維持できるかを検討する必要があります。
また、営業所が複数ある場合には、営業所ごとの専任技術者の配置状況も確認する必要があります。
つまり、
「専任技術者が退職した=すべての建設業許可を失う」
という単純な話ではありません。
どの営業所で、どの業種の専任技術者が不在になるのかを確認することが重要です。

8.新しい専任技術者を採用する方法もある
社内に後任者がいない場合には、外部から採用する方法もあります。
例えば、
- 必要な国家資格を持つ人
- 必要な実務経験を持つ人
- 建設業界で十分な経験を有する人
などを採用し、要件を満たすことができれば、専任技術者として配置できる可能性があります。
ただし、
「資格者を採用すれば必ず専任技術者になれる」
というわけではありません。
常勤性や資格の対応業種なども確認する必要があります。
採用する前に、
「この人を採用すれば専任技術者として認められるのか?」
を確認しておくことが重要です。
9.経営業務の管理責任者と同じ人だったら要注
さらに注意したいのが、
「退職する専任技術者が、経営業務の管理責任者も兼任している」
というケースです。
例えば、
社長Aさん
経管+専技
という体制だったとします。
Aさんが退任・退職する場合には、単に専任技術者の後任を探せばよいわけではありません。
経管についても後任者を確保する必要があります。
つまり、一人の退職によって、
「専技の問題」
と
「経管の問題」
が同時に発生する可能性があります。
中小企業では、このように一人の役員や社員に許可要件が集中していることが珍しくありません。
10.「社長が専技」という会社は特に注意
中小規模の建設会社では、
社長自身が専任技術者
というケースもあります。
さらに、
社長=経管+専技
となっている会社もあります。
この場合、社長が高齢になったときや、事業承継をするときには特に注意が必要です。
「社長が退任することになったので、新しい社長を決める」
だけでは不十分です。
同時に、
- 経管は誰が担当するのか
- 専技は誰が担当するのか
- 新社長は経管になれるのか
- 新しい専技は確保できるのか
を確認する必要があります。
11.退職前に確認しておきたいチェックリスト
専任技術者の退職が決まったら、次の項目を確認しておきましょう。
許可の確認
□ 現在取得している建設業許可の業種
□ 営業所の数
□ 各営業所の専任技術者
退職者の確認
□ どの業種の専任技術者なのか
□ 経管も兼任していないか
□ 退職予定日はいつか
後任者の確認
□ 社内に資格者がいるか
□ 必要な実務経験を持つ人がいるか
□ 常勤性を満たせるか
□ 営業所に専任できるか
□ 他社・他営業所との兼任がないか
手続き
□ 行政庁への変更届が必要か
□ 必要書類は何か
□ 届出期限はいつか
□ 許可要件を継続して満たせるか
この確認を早めに行うことで、突然の専任技術者退職による混乱を防ぐことができます。
12.専任技術者の退職は「事業承継」のタイミングでも要注意
専任技術者の退職は、単なる人事上の問題ではありません。
建設会社にとっては、建設業許可を維持できるかどうかに関わる重要な経営問題です。
特に、
「専任技術者が一人しかいない」
「その人が社長でもある」
「後継者がまだ資格を持っていない」
という会社は、早めに対策する必要があります。
例えば、後継者に必要な資格を取得してもらったり、実務経験を積ませたりするなど、数年単位で準備することも考えられます。
まとめ
専任技術者が退職する場合、最も重要なのは、
「退職してから考える」のではなく、「退職する前に対応する」
ことです。
専任技術者の退職そのものが、直ちに建設業許可の取消しを意味するわけではありません。
しかし、後任者が確保できず、許可の要件を満たせなくなれば、建設業許可の維持に大きな影響が生じる可能性があります。
特に、
- 専任技術者が一人しかいない
- 社長が専任技術者を兼ねている
- 経管と専技を同じ人が兼任している
- 後継者がまだ資格を取得していない
- 複数の営業所がある
という会社は、早めの確認をおすすめします。
建設業許可は、
「今、許可を取得できているか」だけではなく、「将来も許可を維持できる体制になっているか」
という視点が重要です。
専任技術者の退職が決まったら、退職日を待つのではなく、早めに後任候補者と許可要件を確認しておきましょう。




