「監理技術者が足りないので、2つの工事を兼務してもらいたい」
「同じ監理技術者を別の工事現場にも配置することはできる?」
「監理技術者補佐を置けば、監理技術者は他の現場と兼務できる?」
建設業を営んでいると、このような問題に直面することがあります。
特に、技術者の人手不足が深刻になる中、1人の監理技術者を複数の工事現場で活用できるかどうかは、建設会社にとって非常に重要な問題です。
結論からいうと、原則として専任が必要な監理技術者を他の工事と兼務させることはできません。
ただし、現在は一定の条件を満たす場合、監理技術者が2つの工事現場を兼務できる制度があります。
しかも、令和6年12月13日からは、監理技術者補佐を配置する従来の制度に加えて、ICTの活用などを前提とした新しい「専任特例1号」が設けられました。
今回は、監理技術者の兼務について、できる場合とできない場合を分かりやすく解説します。
1.そもそも監理技術者とは?
監理技術者とは、建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる技術者です。
特定建設業者が元請として一定規模以上の下請契約を締結して工事を施工する場合などに、監理技術者を配置する必要があります。
監理技術者は、現場の施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理など、工事を適正に施工するための重要な役割を担います。
そのため、一定の工事については、監理技術者を工事現場ごとに「専任」で配置することが原則とされています。
2.「専任」とはどういう意味?
ここで重要なのが「専任」という言葉です。
専任とは、簡単にいうと、
他の工事現場の主任技術者や監理技術者としての職務を兼務せず、その工事現場の職務に継続的に従事すること
をいいます。
したがって、原則として専任が必要な工事について、
「午前中はA工事、午後はB工事」
というように、1人の監理技術者が2つの現場を掛け持ちすることはできません。
ただし、現在は一定の要件を満たした場合に限り、この専任義務が合理化されています。
3.監理技術者は2つの工事を兼務できる場合がある
令和6年12月13日から、建設業法の改正により、一定の要件を満たす場合には、監理技術者等が専任を要する2つの工事現場を兼務できるようになりました。
現在、大きく分けると、
① 専任特例1号
② 専任特例2号
という2つの考え方があります。
それぞれ仕組みが異なりますので、注意が必要です。
4.専任特例1号とは?
専任特例1号は、一定の条件を満たした場合に、監理技術者等が2つの工事現場を兼務できる制度です。
主な要件として、
- 各工事の請負代金が1億円未満
- 建築一式工事の場合は2億円未満
- 工事現場間の距離が一定の範囲内
- ICTを活用するなど、現場の状況を確認できる体制が整っている
- 連絡員を配置する
- 人員配置を示す計画書を作成する
などの条件があります。
例えば、
A工事:8,000万円
B工事:7,000万円
という2つの工事があり、その他の要件も満たしている場合には、同じ監理技術者が2つの工事を兼務できる可能性があります。
ただし、単に請負金額が1億円未満だから兼務できるというわけではありません。
その他の要件をすべて確認する必要があります。
5.専任特例1号では「工事現場の距離」も重要
専任特例1号では、工事現場があまりにも離れている場合には兼務できません。
国土交通省の資料では、工事現場間の距離が、一日の勤務時間内に巡回可能で、かつ移動時間がおおむね2時間以内であることが要件の一つとして示されています。
例えば、
新潟市内の2つの現場
であれば、現場間の距離や移動時間によっては兼務を検討できる可能性があります。
一方、
新潟市と東京の現場
のように、日常的に行き来することが現実的ではない現場を兼務することは難しいでしょう。
つまり、
「金額が条件を満たしているから兼務できる」
ではなく、
「金額+距離+施工体制+ICT等の条件」
を総合的に確認する必要があります。
6.専任特例2号とは?
もう一つが「専任特例2号」です。
これは、いわゆる特例監理技術者の制度です。
一定の要件を満たした工事について、工事現場ごとに監理技術者補佐を専任で配置することで、監理技術者が2つの工事現場を兼務できる制度です。
イメージとしては、
A現場
- 特例監理技術者
- 監理技術者補佐
B現場
- 特例監理技術者
- 監理技術者補佐
という体制です。
監理技術者自身は2つの現場を兼務しますが、それぞれの現場に監理技術者補佐を専任で配置します。
7.専任特例1号と2号の違い
ここは建設会社の方にとって非常に重要です。
| 専任特例1号 | 専任特例2号 | |
| 監理技術者の兼務 | 可能 | 可能 |
| 兼務できる現場 | 2現場 | 2現場 |
| 監理技術者補佐 | 原則として不要 | 必要 |
| ICT等の活用 | 要件あり | 制度上の要件あり |
| 連絡員 | 要件あり | 制度上の配置等を確認 |
| 監理技術者補佐の専任 | ― | 必要 |
特に注意したいのは、専任特例1号と専任特例2号は同じ制度ではないという点です。
どちらを利用できるのか、自社の工事の条件を確認する必要があります。
8.監理技術者補佐を置けば何現場でも兼務できる?
これは間違いです。
監理技術者補佐を配置したとしても、監理技術者が何現場でも自由に兼務できるわけではありません。
監理技術者が兼務できる工事現場数は、原則として2現場です。
つまり、
「監理技術者が1人しかいないから、3つの現場を担当してもらおう」
ということはできません。
技術者の配置については、工事ごとに適切な体制を整える必要があります。
9.主任技術者と監理技術者では扱いが違う
ここも注意が必要です。
今回説明した「専任特例2号」は、監理技術者についての制度です。
監理技術者補佐を置けば、主任技術者も同じように2現場を兼務できる、という意味ではありません。国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルでも、専任特例2号は監理技術者に関する特例であり、主任技術者は対象外とされています。
一方、専任特例1号については、一定の要件を満たせば主任技術者・監理技術者の双方が対象となります。
したがって、
「主任技術者なのか、監理技術者なのか」
を最初に確認することが重要です。
10.請負金額1億円未満なら必ず兼務できるわけではない
令和6年12月からの制度について、
「1億円未満なら監理技術者を兼務できる」
と理解してしまうケースがあります。
これは正確ではありません。
確かに専任特例1号では、各建設工事の請負代金が1億円未満、建築一式工事では2億円未満という金額要件があります。
しかし、それだけでは足りません。
例えば、
- 現場間の距離
- 移動時間
- 連絡員の配置
- ICTの活用
- 下請次数
- 工事全体の施工体制
など、複数の要件を確認する必要があります。
したがって、
「1億円未満だから兼務できる」
ではなく、
「1億円未満で、その他の専任特例の要件も満たしているから兼務できる」
と理解してください。
11.監理技術者の兼務を考えるときのチェックポイント
監理技術者を他の工事と兼務させたい場合には、少なくとも次の点を確認しましょう。
チェック① 監理技術者の配置が必要な工事なのか
まず、本当に監理技術者が必要なのかを確認します。
主任技術者でよい工事なのか、監理技術者が必要な工事なのかによって、必要な体制が変わります。
チェック② 専任が必要な工事なのか
専任が必要なのかどうかを確認します。
専任が必要でない工事であれば、そもそも「専任特例」の問題が生じない場合があります。
チェック③ 請負金額を確認する
専任特例1号を利用する場合には、請負代金の額が重要です。
原則として、
1億円未満
建築一式工事の場合は、
2億円未満
という基準があります。
チェック④ 現場間の距離を確認する
2つの現場を日常的に管理できる距離なのかを確認します。
チェック⑤ ICT等の体制を確認する
遠隔から現場の状況を確認するための情報通信機器など、必要な体制が整っているかを確認します。
チェック⑥ 監理技術者補佐が必要か確認する
専任特例2号を利用する場合には、各現場に監理技術者補佐を専任で配置する必要があります。
12.「技術者が足りないから兼務」は慎重に
建設業界では、技術者不足が大きな問題となっています。
そのため、
「1人の技術者に複数の現場を担当してもらいたい」
という会社は少なくありません。
制度改正によって兼務できる場面は広がりましたが、これは単純に人手不足を解消するために、1人の技術者を何現場にも配置できるようになったということではありません。
あくまで、
適正な施工を確保できること
が前提です。
監理技術者が複数現場を適切に管理できないような状況であれば、兼務制度を利用することはできません。
まとめ|監理技術者の兼務は可能。ただし一定の条件があります
監理技術者は、原則として専任が必要な工事について、他の工事現場の技術者を兼務することはできません。
しかし、現在は制度が改正され、一定の条件を満たせば、監理技術者が2つの工事現場を兼務することが可能になっています。
特に重要なのは、
① 専任特例1号
一定の要件を満たすことで、監理技術者等が2現場を兼務できる制度。
② 専任特例2号
監理技術者補佐を各現場に専任配置することで、特例監理技術者が2現場を兼務できる制度。
という2つの仕組みです。
ただし、
「請負金額が1億円未満だから兼務できる」
という単純な制度ではありません。
工事金額、工事現場間の距離、ICTの活用、連絡員、監理技術者補佐など、複数の条件を確認する必要があります。
監理技術者の配置を誤ると、建設業法上の問題につながる可能性があります。
「この2つの工事で監理技術者を兼務させたい」
「監理技術者補佐を置けば兼務できる?」
「自社の工事は専任特例1号と2号のどちらが利用できる?」
といった場合には、工事の請負金額や現場の距離、施工体制などを確認したうえで判断することをおすすめします。
新潟県で建設業許可や監理技術者・主任技術者の配置についてお悩みの建設会社様は、お気軽にご相談ください。




