建物の屋上やベランダ、外壁などから雨水が浸入するのを防ぐ「防水工事」。
住宅やマンション、ビル、商業施設など、さまざまな建築物の維持管理に欠かせない工事です。
防水工事を専門に行う建設会社や個人事業主の方から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「防水工事を請け負うには建設業許可が必要ですか?」
「塗装工事業の許可があれば防水工事もできますか?」
「防水工事の経験しかありませんが、建設業許可を取得できますか?」
「防水工事業の許可を取得するには、どのような資格が必要ですか?」
今回は、建設業許可における防水工事業の内容、具体的な工事の種類、許可取得の要件、注意点について、行政書士がわかりやすく解説します。
1.防水工事業とは?
防水工事業とは、建設業法で定められた29種類の建設工事の一つです。
国土交通省の建設工事の区分では、次のように定義されています。
防水工事とは、アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事です。
建物に雨水などが浸入することを防ぎ、建築物の耐久性を維持する重要な役割があります。
特に、屋上やベランダなどは雨風や紫外線の影響を受けやすく、防水機能が低下すると雨漏りや建物内部の腐食につながるおそれがあります。
そのため、新築工事だけでなく、既存建物の改修工事や大規模修繕工事においても、防水工事は重要な工事となっています。
2.防水工事業に該当する具体的な工事
防水工事業には、主に次のような工事があります。
① アスファルト防水工事
アスファルトを使用した防水工事です。
防水シートとアスファルトを組み合わせ、防水層を形成する工法などがあります。
マンションやビルの屋上など、広い面積の防水工事に使用されることがあります。
② モルタル防水工事
セメントや砂などを使用したモルタルに、防水性能を持たせて施工する工事です。
建物の床や壁などに施工されることがあります。
③ シーリング工事
建物の外壁の目地や窓枠の周囲などに、シーリング材を充填する工事です。
例えば、次のような工事が該当します。
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外壁の目地部分のシーリング工事
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サッシ周囲のシーリング工事
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建物の接合部分の防水処理
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既存シーリング材の打ち替え工事
シーリング工事は、雨漏り防止や建物の防水性能を維持するために重要な工事です。
④ 塗膜防水工事
液体状の防水材料を塗布し、防水層を形成する工事です。
代表的なものとして、ウレタン防水工事があります。
屋上やベランダ、バルコニーなどで広く採用されています。
⑤ シート防水工事
塩化ビニル樹脂や合成ゴムなどの防水シートを使用する工事です。
マンションやビルの屋上などで施工されることが多い工法です。
⑥ FRP防水工事
繊維強化プラスチック(FRP)を使用した防水工事です。
住宅のベランダやバルコニーなどで使用されています。
このように、防水工事にはさまざまな工法があります。
ただし、工事の名称だけで建設業許可の業種が決まるわけではありません。
実際の施工内容によって判断する必要があります。
3.防水工事業と塗装工事業の違い
防水工事業と混同されやすい業種が「塗装工事業」です。
特に、外壁工事や屋上の改修工事では、塗装と防水の両方が行われることがあります。
しかし、建設業許可では別の業種として区分されています。
| 業種 | 主な工事内容 |
|---|---|
| 防水工事業 | 建物への水の浸入を防ぐための防水層を形成する工事 |
| 塗装工事業 | 塗料などを使用して建物や工作物を塗装する工事 |
例えば、外壁に塗料を塗る工事は、一般的には塗装工事業に該当します。
一方、屋上にウレタン防水材を施工する工事は、防水工事業に該当します。
注意したいのは、塗装工事業の許可を持っているからといって、防水工事業の許可も持っていることにはならないという点です。
防水工事を専門工事として請け負う場合には、その工事内容と請負金額に応じた許可が必要です。
4.防水工事業と左官工事業の違い
防水工事業と左官工事業にも、区分が重なる部分があります。
代表的なのが「防水モルタルを用いた防水工事」です。
国土交通省の建設工事の区分では、防水モルタルを用いた防水工事については、左官工事業または防水工事業のどちらの許可でも施工できるとされています。
ただし、すべての防水工事を左官工事業の許可で施工できるわけではありません。
シート防水工事やシーリング工事などについては、原則として防水工事業に区分されます。
また、建設業許可上の防水工事業は、建築系の防水工事が対象です。
トンネル防水工事などの土木系の防水工事は、原則として「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
工事の名称だけで判断せず、具体的な施工内容を確認することが重要です。
5.防水工事に建設業許可は必要?
防水工事を請け負う場合でも、すべての工事に建設業許可が必要になるわけではありません。
建設業法では、軽微な建設工事のみを請け負う場合には、建設業許可を取得しなくても営業できるとされています。
防水工事の場合、原則として次のように区分されます。
| 1件の工事の請負代金 | 建設業許可 |
|---|---|
| 500万円未満(税込) | 原則不要 |
| 500万円以上(税込) | 原則必要 |
例えば、マンションの屋上防水工事を600万円で請け負う場合には、原則として防水工事業の建設業許可が必要です。
一方、住宅のベランダ防水工事を100万円で請け負う場合には、原則として許可は必要ありません。
なお、請負金額には消費税が含まれます。
また、工事を分割して契約した場合でも、正当な理由がなければ合計金額で判断されることがあります。
元請工事だけでなく、下請工事についても建設業許可の基準は同じです。
元請会社が建設業許可を取得しているからといって、下請会社が無許可で500万円以上の防水工事を請け負えるわけではありません。
6.防水工事業の建設業許可を取得するための要件
防水工事業の建設業許可を取得するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
① 経営業務の管理を適正に行う能力があること
建設業の経営について、一定の経験や管理体制が必要です。
例えば、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験がある場合などが代表的です。
法人の場合は、常勤役員等の経営経験や組織体制によって判断されます。
防水工事業の経営経験に限らず、他の建設業種での経営経験が認められる場合もあります。
② 営業所技術者等を配置すること
建設業許可を取得するためには、営業所ごとに一定の資格や実務経験を有する営業所技術者等を配置する必要があります。
防水工事業では、資格や実務経験によって要件を満たすことができます。
詳しくは次の項目で説明します。
③ 誠実性があること
請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。
④ 財産的基礎があること
一般建設業許可の場合、代表的な基準として、自己資本が500万円以上あることなどが挙げられます。
自己資本が500万円未満であっても、500万円以上の資金調達能力を証明する方法などがあります。
⑤ 適切な社会保険に加入していること
健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、加入義務がある場合には適切に加入している必要があります。
⑥ 欠格要件に該当しないこと
役員等について、一定の法令違反や刑罰などに関する欠格要件に該当しないことが必要です。
7.防水工事業の許可取得に必要な資格とは?
防水工事業の建設業許可を取得する際、特に重要なのが営業所技術者等の要件です。
一般建設業許可では、例えば次の資格が該当します。
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1級建築施工管理技士
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2級建築施工管理技士(仕上げ)
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1級防水施工技能士
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2級防水施工技能士(合格後3年以上の防水工事の実務経験が必要)
このほか、所定の実務経験を伴う施工管理技士等の資格や、登録基幹技能者の資格などによって要件を満たせる場合もあります。
なお、資格の種類や取得時期などによって要件が異なるため、申請前に確認することが重要です。
8.資格がなくても防水工事業の許可は取得できる?
防水工事業の許可を取得したいものの、国家資格を持っていないという方もいらっしゃいます。
しかし、国家資格がなくても、一定の実務経験があれば許可を取得できる可能性があります。
例えば、一般建設業許可では、次のような方法があります。
① 防水工事について10年以上の実務経験がある場合
防水工事に関する10年以上の実務経験を証明できれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
② 指定学科を卒業し、一定の実務経験がある場合
建築学や土木工学に関する指定学科を卒業している場合には、学歴に応じて必要な実務経験年数が短縮されることがあります。
例えば、大学の指定学科を卒業し、その後3年以上の防水工事の実務経験がある場合などです。
ただし、実務経験があるという申告だけでは足りません。
申請先の行政庁が求める資料によって、その経験を証明する必要があります。
9.防水工事の実務経験はどのように証明する?
防水工事業の許可申請で難しいことの一つが、実務経験の証明です。
例えば、10年以上防水工事を行っていたとしても、それを裏付ける資料がなければ許可取得が難しくなることがあります。
実務経験の証明資料としては、次のようなものが考えられます。
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防水工事の工事請負契約書
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工事注文書・注文請書
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防水工事の請求書
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工事代金の入金記録
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過去に勤務していた会社の建設業許可関係資料
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在籍期間を確認できる資料
ただし、必要となる資料や証明方法は、申請先の行政庁や個別事情によって異なります。
特に注意したいのが、請求書などに記載された工事名です。
例えば、請求書に「改修工事一式」としか記載されていない場合、その工事が防水工事であったことを確認できない可能性があります。
そのため、日頃から請求書や注文書などに、具体的な工事内容を記載しておくことをおすすめします。
10.防水工事業の許可を取得するメリット
防水工事業の建設業許可を取得すると、次のようなメリットがあります。
① 500万円以上の防水工事を請け負える
許可を取得することで、これまで請け負うことができなかった500万円以上の防水工事を請け負えるようになります。
マンションの大規模修繕工事やビルの屋上防水工事など、比較的大きな案件への対応が可能になります。
② 元請会社からの信用につながる
ゼネコンや建設会社などでは、下請会社に対して建設業許可の取得を求めることがあります。
そのため、許可を取得することで取引先の選択肢が広がる可能性があります。
③ 事業拡大につながる
建設業許可を取得することによって、請け負える工事の規模が広がります。
将来的に従業員を増やしたり、大規模な工事を受注したりすることを考えている会社にとっては、大きなメリットがあります。
④ 公共工事への参入を検討できる
防水工事業の建設業許可を取得すれば、公共工事への参入を検討することもできます。
ただし、公共工事を直接受注するためには、原則として経営事項審査や入札参加資格審査など、別途必要な手続きがあります。
11.防水工事業の許可申請は行政書士に相談を
防水工事業の建設業許可を取得するためには、経営経験や技術者の要件、財産的基礎など、さまざまな条件を満たす必要があります。
特に、国家資格を持たずに実務経験で許可を取得する場合には、過去の工事実績をどのように証明するかが重要です。
「10年以上の経験があるのに、資料が足りない」
「過去の請求書が残っていない」
「自分の持っている資格で許可を取得できるかわからない」
このような場合には、早い段階で行政書士に相談することをおすすめします。
また、すでに塗装工事業などの建設業許可を取得している会社が、防水工事業を追加したい場合には、業種追加の手続きを検討することになります。
まとめ
防水工事業は、建物への雨水などの浸入を防ぎ、建築物の耐久性を維持するために欠かせない専門工事業です。
アスファルト防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事などが代表的な工事に該当します。
500万円以上(税込)の防水工事を請け負う場合には、原則として建設業許可が必要です。
また、防水工事業と塗装工事業は異なる業種であるため、工事内容に応じた許可を取得しなければなりません。
防水工事業の建設業許可を取得したい方、実務経験による許可取得を検討されている方、現在の建設業許可に防水工事業を追加したい方は、建設業許可申請に詳しい行政書士にご相談ください。



