「これまで民間工事を中心に行ってきたけれど、公共工事にも参入したい」
「公共工事を受注すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?」
「小さな建設会社でも公共工事を受注できますか?」
「公共工事を受注するためには、経営事項審査を受けなければならないのでしょうか?」
建設業者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
建設会社の経営を考えるうえで、公共工事への参入は重要な選択肢の一つです。
公共工事には、民間工事とは異なる特徴があります。
国や地方公共団体などが発注する工事であるため、受注先を増やせるだけでなく、会社の信用力向上や経営基盤の強化につながる可能性があります。
一方で、公共工事を受注するためには、建設業許可に加えて経営事項審査(経審)や入札参加資格申請など、一定の手続きが必要になります。
また、公共工事を受注すれば必ず利益が増えるというわけではありません。
今回は、公共工事を受注するメリットとデメリット、民間工事との違い、公共工事に参入するための手続きについて、行政書士が詳しく解説します。
1.公共工事とは?
公共工事とは、国や地方公共団体などの公共機関が発注する建設工事です。
例えば、次のような工事があります。
- 道路の新設・改良工事
- 河川や堤防の整備工事
- 上下水道の整備工事
- 学校や公共施設の建築工事
- 公共施設の改修工事
- 橋梁の補修工事
- 公園の整備工事
- 除雪関連施設などの整備工事
公共工事というと、大手ゼネコンが受注する大規模工事をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際には、地域の中小建設会社が受注できる工事もあります。
例えば、市町村が発注する道路の補修工事や公共施設の修繕工事などです。
そのため、会社の規模が小さいからといって、公共工事への参入を最初からあきらめる必要はありません。
2.公共工事を受注する7つのメリット
公共工事には、建設会社の経営にとってさまざまなメリットがあります。
特に重要なのは、次の7つです。
メリット① 受注先を増やすことができる
公共工事を受注する最大のメリットの一つは、受注先を増やせることです。
例えば、これまで特定の元請会社からの下請工事を中心に行っていた建設会社があったとします。
その元請会社からの仕事が減少すると、自社の売上にも大きな影響が出る可能性があります。
また、民間企業の設備投資が減少すると、民間工事の受注も減少することがあります。
しかし、公共工事に参入することで、国や地方公共団体なども新たな受注先の候補になります。
もちろん、公共工事の発注量も年度や予算、地域の事情によって変動します。
それでも、民間工事だけに依存するよりも、受注先を分散できることは経営上のメリットになります。
一つの取引先に依存しない経営体制をつくることは、建設会社の安定経営につながります。
メリット② 経営の安定化につながる可能性がある
建設業では、景気の変動や取引先の経営状況によって、受注量が大きく変わることがあります。
特に、民間工事を中心に行っている会社では、取引先の設備投資や住宅需要などの影響を受けやすい場合があります。
一方、公共工事は、道路や橋、上下水道、学校など、社会生活に必要な施設を整備・維持するために発注されます。
また、老朽化したインフラの維持補修など、継続的な需要が見込まれる分野もあります。
そのため、公共工事と民間工事の両方を受注できる体制を整えることで、経営の安定化につながる可能性があります。
ただし、公共工事も予算や政策によって発注量が変わるため、必ず安定して受注できるというわけではありません。
メリット③ 工事代金の回収リスクを抑えやすい
建設会社の経営では、工事代金を確実に回収できるかどうかが重要です。
民間工事では、発注者の経営状況が悪化し、工事代金の支払いが遅れたり、回収できなくなったりするリスクがあります。
公共工事の場合、国や地方公共団体などが契約の相手方となるため、一般的な民間企業と比較すると、発注者の倒産による代金回収不能のリスクは低いと考えられます。
これは、建設会社にとって大きなメリットです。
ただし、公共工事であっても、契約内容や完成検査、変更契約、支払条件などを適切に確認する必要があります。
また、工事代金がすぐに全額支払われるとは限らないため、資金繰りの管理は引き続き重要です。
メリット④ 前払金制度などを利用できる場合がある
公共工事では、一定の条件を満たす場合に、前払金制度や中間前払金制度などを利用できることがあります。
例えば、前払金制度では、契約締結後に請負代金の一定割合を前払いしてもらうことができます。
これにより、工事開始時に必要となる材料費や労務費などの資金を確保しやすくなります。
また、一定の条件を満たす場合には、中間前払金を受けられる制度もあります。
ただし、前払金の割合、対象工事、保証の要否、支払条件などは発注者や契約によって異なります。
公共工事だから必ず前払金を受け取れるというわけではありません。
それでも、資金繰りを考えるうえで、こうした制度を利用できる可能性があることはメリットの一つです。
メリット⑤ 会社の信用力向上につながる
公共工事を受注するためには、建設業許可だけでなく、経営事項審査や入札参加資格審査などを受ける必要があります。
また、工事を受注した後も、契約内容に従って適切に施工し、必要な検査を受けることになります。
そのため、公共工事の施工実績を積み重ねることは、会社の信用力向上につながる可能性があります。
例えば、民間企業から新しい工事の相談を受けた際に、公共工事の施工実績を紹介できれば、技術力や施工管理能力を説明する材料になります。
ただし、公共工事の受注実績があることだけで、会社の技術力や信用力が保証されるわけではありません。
大切なのは、適切な施工を行い、良好な実績を積み重ねることです。
メリット⑥ 従業員の技術力や施工管理能力の向上につながる
公共工事では、発注者が定める仕様書や設計図書、施工管理基準などに従って工事を進める必要があります。
また、工事内容によっては、施工計画書、工事写真、品質管理資料など、さまざまな書類の作成が求められます。
こうした業務を経験することで、従業員の施工管理能力や書類作成能力が向上する可能性があります。
特に、これまで下請工事を中心に行っていた会社が、公共工事を元請として受注する場合には、工事全体を管理する経験を積むことができます。
これは、会社の将来を考えるうえでも重要です。
メリット⑦ 地域社会への貢献につながる
公共工事は、地域の生活を支える仕事です。
道路や橋、学校、上下水道などは、地域住民の日常生活に欠かせません。
また、災害復旧工事やインフラの維持管理など、地域の安全を守る仕事もあります。
そのため、公共工事を受注することは、売上や利益だけでなく、地域社会への貢献にもつながります。
地域の建設会社が地域のインフラを支えることには、大きな意義があります。
3.公共工事と民間工事の違い
公共工事と民間工事には、次のような違いがあります。
| 比較項目 | 公共工事 | 民間工事 |
|---|---|---|
| 主な発注者 | 国・地方公共団体など | 民間企業・個人など |
| 受注方法 | 入札などが中心 | 見積り・交渉・紹介など |
| 経営事項審査 | 対象となる公共工事の元請受注では必要 | 原則として不要 |
| 入札参加資格 | 発注機関に応じて必要 | 原則として不要 |
| 施工管理 | 発注者の仕様・基準に基づく管理 | 契約内容や発注者の要求による |
| 支払条件 | 前払金制度などがある場合も | 契約によって異なる |
| 受注競争 | 入札による競争がある | 価格・信用・営業力などによる競争 |
公共工事と民間工事には、それぞれメリットとデメリットがあります。
そのため、どちらか一方が優れているというわけではありません。
会社の規模や得意分野、経営方針に応じて、受注のバランスを考えることが重要です。
4.公共工事を受注するデメリット・注意点
公共工事にはメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
① 必ず受注できるわけではない
公共工事では、入札に参加しても落札できるとは限りません。
価格競争だけでなく、施工実績や技術力などが評価される場合もあります。
そのため、入札に参加するための準備を行っても、すぐに売上につながるとは限りません。
② 書類作成や施工管理の負担が増える
公共工事では、民間工事と比較して、提出書類や施工管理資料が多くなる場合があります。
例えば、次のような書類です。
- 施工計画書
- 工程表
- 工事写真
- 品質管理資料
- 出来形管理資料
- 安全管理関係書類
- 完成書類
これまで小規模な民間工事を中心に行っていた会社では、こうした事務作業が負担になることもあります。
③ 利益が出るとは限らない
公共工事を受注したからといって、必ず利益が出るわけではありません。
入札金額の設定を誤ったり、工事原価が想定以上に増加したりすると、利益が少なくなる場合があります。
また、工事内容によっては、資材価格の変動や人件費の上昇などが経営に影響することもあります。
そのため、受注金額だけでなく、利益を確保できるかどうかを慎重に判断する必要があります。
④ 技術者の配置が必要
公共工事を施工する場合には、工事内容や規模に応じて、主任技術者や監理技術者を適切に配置する必要があります。
また、公共工事では、配置予定技術者について、資格や施工経験などが入札参加条件となる場合があります。
そのため、会社に必要な技術者がいるかどうかも重要です。
⑤ 経営事項審査などの手続きが必要
公共工事を元請として受注するためには、原則として経営事項審査を受ける必要があります。
また、発注機関ごとの入札参加資格申請なども必要になります。
そのため、民間工事のみを行う場合と比較すると、手続きの負担が増えることがあります。
5.公共工事を受注するためには何が必要?
公共工事を受注するためには、一般的に次のような手続きが必要です。
① 建設業許可を取得する
公共工事を元請として受注するためには、原則として建設業許可が必要です。
建設業許可は、29の業種に分かれています。
そのため、受注したい工事に対応する建設業許可を取得する必要があります。
例えば、土木一式工事を受注したい場合には、原則として土木工事業の許可が必要になります。
なお、公共工事だからといって、必ず特定建設業許可が必要になるわけではありません。
一般建設業許可でも、条件を満たせば公共工事を受注することができます。
② 経営事項審査(経審)を受ける
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、原則として経営事項審査を受ける必要があります。
経営事項審査とは、建設会社の経営状況や経営規模、技術力、社会性などを客観的に評価する制度です。
審査結果は、公共工事の入札参加資格審査などに利用されます。
経営事項審査では、主に次のような項目が評価されます。
- 経営規模
- 経営状況
- 技術力
- 社会性など
単に売上が大きければ高い評価を受けるというわけではありません。
会社の財務状況や技術者の資格、社会保険の加入状況など、さまざまな項目が関係します。
③ 入札参加資格申請を行う
経営事項審査を受けただけでは、すべての公共工事の入札に参加できるわけではありません。
公共工事を発注する国や地方公共団体などに対して、入札参加資格申請を行う必要があります。
例えば、新潟県が発注する工事に参加したい場合には、新潟県の入札参加資格に関する手続きを確認する必要があります。
また、新潟市などの市町村が発注する工事に参加したい場合には、それぞれの自治体の制度を確認する必要があります。
申請時期や有効期間、必要書類などは発注機関によって異なります。
④ 入札に参加する
入札参加資格を取得した後、希望する工事の公告内容を確認し、必要な条件を満たしていれば入札に参加します。
ただし、入札参加資格を取得していても、すべての工事に参加できるわけではありません。
工事ごとに、施工実績、技術者、地域要件、等級などの条件が設けられている場合があります。
6.経営事項審査を受ければ公共工事を受注できる?
経営事項審査を受けたからといって、必ず公共工事を受注できるわけではありません。
経営事項審査は、公共工事の入札に参加するための重要な手続きの一つです。
実際に公共工事を受注するためには、入札参加資格を取得し、個別の工事の入札条件を満たしたうえで、落札する必要があります。
そのため、次のように考えるとわかりやすいと思います。
建設業許可
建設業を営むための許可
経営事項審査
公共工事を元請として受注する建設業者の経営状況などを評価する制度
入札参加資格申請
公共工事の入札に参加するために、発注機関へ行う手続き
入札
実際に公共工事を受注するための手続き
これらは、それぞれ役割が異なります。
7.小さな建設会社でも公共工事を受注できる?
「従業員が少ない会社でも公共工事を受注できますか?」
このようなご質問もあります。
結論として、会社の規模が小さくても、必要な条件を満たしていれば公共工事を受注できる可能性があります。
公共工事には、大規模な工事だけでなく、比較的小規模な工事もあります。
また、発注機関によっては、地域の中小建設業者が参加しやすいように、工事の規模や等級などに応じて入札参加資格を設定している場合があります。
そのため、最初から大規模な工事を目指す必要はありません。
まずは、自社の技術力や人員体制に合った工事を検討することが重要です。
8.公共工事への参入は、元請会社への成長につながる
これまで下請工事を中心に行ってきた建設会社にとって、公共工事への参入は、元請会社としての経験を積む機会になります。
下請工事では、元請会社の指示に従って、自社が担当する工事を施工することが中心になります。
一方、公共工事を元請として受注する場合には、発注者との契約から工事全体の施工管理、完成検査への対応まで、自社で責任を持って行う必要があります。
そのため、これまで以上に幅広い能力が求められます。
例えば、次のような能力です。
- 工事原価を管理する能力
- 工程を管理する能力
- 下請業者を管理する能力
- 発注者と協議する能力
- 必要な書類を作成する能力
- 品質や安全を確保する能力
これらの経験を積み重ねることは、会社の将来にとって大きな財産になります。
また、元請工事の経験を積むことで、民間工事においても受注の幅が広がる可能性があります。
9.公共工事に参入する前に確認しておきたいこと
公共工事への参入を検討する場合には、単に経営事項審査を受けるだけでなく、事前にいくつかの点を確認することをおすすめします。
① どの発注機関の工事を受注したいか
新潟県の工事を受注したいのか、新潟市などの市町村の工事を受注したいのかによって、必要な入札参加資格申請が異なります。
② どの業種の工事を受注したいか
土木一式工事なのか、舗装工事なのか、管工事なのかなど、受注したい工事の業種を確認する必要があります。
③ 技術者を確保できるか
公共工事では、工事内容に応じて主任技術者や監理技術者を配置する必要があります。
また、入札参加条件として、特定の資格や施工経験が求められる場合があります。
④ 施工管理体制が整っているか
公共工事では、施工管理や書類作成の負担が増える場合があります。
そのため、現場だけでなく、事務作業も含めた体制を整えることが重要です。
⑤ 利益を確保できるか
公共工事を受注すること自体を目的にしてしまうと、利益が十分に確保できない場合があります。
入札金額を検討する際には、材料費、労務費、外注費、現場管理費などを適切に見積もる必要があります。
10.公共工事と民間工事の両方を受注する経営
建設会社の経営を考えるうえで、公共工事と民間工事のどちらか一方に限定する必要はありません。
例えば、普段は民間工事を中心に行いながら、条件に合った公共工事にも参加するという方法があります。
反対に、公共工事を中心に行いながら、民間工事も受注するという方法もあります。
重要なのは、自社の得意分野や人員体制に合わせて、無理のない受注体制を整えることです。
公共工事を受注できるようになることで、受注先の選択肢が増え、経営の幅が広がります。
特に、これまで特定の元請会社への依存度が高かった建設会社にとっては、公共工事への参入が経営を見直すきっかけになるかもしれません。
11.公共工事を受注するための手続きは行政書士に相談できる?
公共工事への参入を検討する場合、建設業許可や経営事項審査、入札参加資格申請など、複数の手続きが必要になることがあります。
これらの手続きは、ご自身で行うことも可能ですが、必要書類や申請時期などを確認する必要があります。
特に、経営事項審査では、決算書や完成工事高、技術者の資格など、さまざまな資料を準備する必要があります。
また、入札参加資格申請は発注機関ごとに手続きが異なるため、注意が必要です。
行政書士に相談することで、必要な手続きの確認や申請書類の作成などについてサポートを受けることができます。
12.まとめ|公共工事への参入は建設会社の新たな可能性を広げる
公共工事を受注することには、さまざまなメリットがあります。
特に重要なのは、次の点です。
- 受注先を増やすことができる
- 経営の安定化につながる可能性がある
- 工事代金の回収リスクを抑えやすい
- 前払金制度などを利用できる場合がある
- 会社の信用力向上につながる
- 従業員の技術力や施工管理能力の向上につながる
- 地域社会への貢献につながる
もちろん、公共工事を受注すれば必ず売上や利益が増えるというわけではありません。
入札に参加しても落札できないことがありますし、受注後には適切な施工管理や書類作成などが求められます。
しかし、公共工事への参入によって、これまでとは異なる受注先を確保できる可能性があります。
また、元請工事の経験を積み重ねることは、会社の技術力や施工管理能力の向上にもつながります。
公共工事への参入は、単に新しい仕事を受注するだけでなく、建設会社の将来の可能性を広げる取り組みでもあります。
これから事業を成長させたいと考えている建設業者の方は、公共工事への参入を検討してみてはいかがでしょうか。
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