建設業を営んでいる方の中には、「鉄筋工事を請け負う場合、建設業許可は必要なのだろうか」「鉄筋工事業の許可を取得するには、どのような要件を満たせばよいのだろうか」と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
鉄筋工事は、建物や橋梁、道路などのコンクリート構造物を支える重要な工事です。鉄筋の配置や組立てが適切に行われていなければ、建物などの強度や耐久性に影響するおそれがあります。
鉄筋工事を専門に請け負う建設業者様にとって、建設業許可の取得は、受注できる工事の範囲を広げ、元請業者や発注者からの信頼を高めるうえでも重要なポイントです。
今回は、鉄筋工事業とはどのような業種なのか、建設業許可が必要となるケース、ほかの業種との違い、許可取得の要件について、わかりやすく解説します。
1.鉄筋工事業とは?
鉄筋工事とは、棒鋼などの鉄筋を加工し、所定の位置に組み立てたり、鉄筋同士を接合したりする工事です。
鉄筋コンクリート造の建物では、コンクリートが圧縮力に強い一方、引張力には比較的弱いという性質があります。そこで、コンクリート内部に鉄筋を配置することで、構造物に必要な強度を確保します。
鉄筋工事は、こうした鉄筋コンクリート構造物をつくるうえで欠かせない工事です。
建設業許可における正式な業種区分は「鉄筋工事」です。
建設業法上、鉄筋工事は、鉄筋の加工及び組立てを行う工事や、鉄筋を接合する工事などに分類されます。
鉄筋工事の具体例
鉄筋工事に該当する工事としては、次のようなものが挙げられます。
- 建築物の基礎部分に鉄筋を配置・組み立てる工事
- マンションやビルなどの鉄筋コンクリート造建築物の鉄筋工事
- 住宅の基礎に使用する鉄筋の加工・組立て
- 橋梁の鉄筋加工・組立て工事
- 鉄筋の継手工事
- 鉄筋コンクリート構造物の鉄筋組立て工事
ただし、工事の名称だけで業種が決まるわけではありません。実際の施工内容や工事全体における役割などを踏まえて判断する必要があります。
2.鉄筋工事業の建設業許可が必要になるのはどのような場合?
建設業を営む場合、原則として建設業許可が必要ですが、軽微な建設工事のみを請け負う場合には、許可を取得しなくても営業できます。
鉄筋工事のような専門工事については、原則として、1件の請負代金が500万円以上(税込み)の工事を請け負う場合、建設業許可が必要です。
ここでいう500万円には、消費税及び地方消費税が含まれます。
500万円未満であれば許可は不要?
例えば、鉄筋工事を1件300万円で請け負う場合、ほかの条件に問題がなければ、建設業許可を取得していなくても請け負うことができます。
一方、1件600万円の鉄筋工事を請け負う場合には、原則として鉄筋工事業の建設業許可が必要です。
ただし、請負金額の判断では注意すべき点があります。
材料を注文者が提供する場合には、その材料の市場価格などを含めて請負代金を判断することがあります。また、許可を取得しなくても済むように、正当な理由なく工事を分割して契約することも認められません。
そのため、契約金額だけを見て許可が必要かどうかを判断するのは危険です。
なお、建設業許可を取得していなくても請け負えるのは、あくまで軽微な建設工事に限られます。実際の工事内容や契約形態を確認したうえで判断しましょう。
3.鉄筋工事業と、とび・土工・コンクリート工事業の違い
鉄筋工事業と混同されやすい業種の一つに、とび・土工・コンクリート工事業があります。
どちらも建築工事や土木工事の現場で施工されることが多いため、業種の判断に迷うことがあります。
しかし、それぞれ対象となる工事の内容が異なります。
鉄筋工事業
鉄筋工事業は、鉄筋の加工、組立て、接合などを行う工事です。
例えば、マンションの基礎部分に鉄筋を配置し、設計図に従って組み立てる工事は、鉄筋工事に該当するのが基本です。
とび・土工・コンクリート工事業
とび・土工・コンクリート工事業には、足場の組立て、掘削、土砂の運搬、コンクリートの打設など、さまざまな工事が含まれます。
鉄筋コンクリート構造物の建設現場であっても、実際に請け負う作業が鉄筋の組立てなのか、コンクリートの打設なのかによって、必要となる業種が異なる場合があります。
例えば、次のように整理できます。
- 鉄筋の加工・組立てを行う工事:鉄筋工事
- 足場を組み立てる工事:とび・土工・コンクリート工事
- コンクリートを打設する工事:工事内容に応じて、とび・土工・コンクリート工事など
同じ現場で複数の工事が行われていても、すべてが同じ業種になるわけではありません。自社がどのような工事を請け負うのかを整理しておくことが大切です。
4.鉄筋工事業と建築一式工事業・土木一式工事業の違い
鉄筋工事業を考える際には、建築一式工事業や土木一式工事業との違いも理解しておく必要があります。
建築一式工事業や土木一式工事業は、原則として、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物や土木工作物を建設する工事を対象とする業種です。
これに対し、鉄筋工事業は、鉄筋の加工・組立てなどを専門に行う業種です。
例えば、マンション全体の建築工事を総合的に請け負う場合と、そのマンションの鉄筋工事だけを専門業者として請け負う場合とでは、必要となる許可業種が異なります。
建築一式工事業の許可を取得していれば、あらゆる専門工事を自由に請け負えるというわけではありません。
建設業許可は、実際に請け負う工事の内容に応じて判断する必要があります。
5.鉄筋工事業の建設業許可を取得するための要件
鉄筋工事業の建設業許可を取得するためには、建設業法で定められた要件を満たさなければなりません。
主な要件は、次のとおりです。
① 経営業務の管理体制が整っていること
建設業を適切に経営するための体制が整っていることが必要です。
一般的には、建設業に関する一定の経営経験を有する常勤役員等を配置する方法などによって要件を満たします。
例えば、建設会社の役員として一定期間経営に携わっていた方や、建設業を個人事業主として営んできた方などについて、経験の内容や期間を確認します。
ただし、単に建設業界で働いていたというだけで、必ずしも要件を満たすわけではありません。役員経験や事業主としての経験など、具体的な経歴を確認する必要があります。
② 営業所技術者等を配置していること
建設業許可を取得するためには、営業所ごとに、許可を受けようとする業種について専門的な知識や経験を有する技術者を配置する必要があります。
現在の制度では「営業所技術者等」と呼ばれています。
鉄筋工事業の場合、例えば次のような資格や経験が要件を満たすための判断材料になります。
- 建築施工管理技士などの所定の国家資格
- 鉄筋施工に関する所定の技能検定資格
- 鉄筋工事に関する一定期間の実務経験
ただし、保有資格の種類や等級、実務経験の内容によって認められる範囲は異なります。また、資格や経験があればよいというだけではなく、営業所における常勤性などの条件も確認しなければなりません。
自社の従業員や役員が要件を満たしているかどうか、早めに確認することをおすすめします。
③ 誠実性があること
請負契約の締結や履行に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことも要件の一つです。
建設業は、工事の完成や代金の支払いなどについて、発注者や元請業者との信頼関係が重要となる事業です。
そのため、契約に関する不正行為などがないことが求められます。
④ 財産的基礎または金銭的信用があること
建設業許可を取得するためには、工事を適切に施工するための財産的基礎または金銭的信用も必要です。
一般建設業許可の場合、代表的な確認方法として、次のようなものがあります。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること
これらは、一般建設業許可における代表的な判断基準です。どの方法で要件を満たすかによって確認する資料が異なります。
例えば、新たに建設業許可を取得する会社の場合、預金残高証明書などによって資金調達能力を確認することがあります。
なお、特定建設業許可については、財産的基礎に関して一般建設業許可よりも厳しい要件が設けられています。
⑤ 欠格要件に該当しないこと
申請者や役員などが、建設業法で定められた欠格要件に該当しないことも必要です。
例えば、一定の法律違反や許可取消しなどに関係する事情がある場合には、許可を取得できないことがあります。
会社の役員や申請者の状況を確認し、問題がないかを事前に把握しておくことが大切です。
6.鉄筋工事業の許可取得に必要な書類
建設業許可の申請では、会社の状況や経営経験、技術者の資格・経験などを証明するため、さまざまな書類を準備します。
主な書類としては、次のようなものがあります。
- 建設業許可申請書
- 会社の登記事項証明書など、会社の基本情報を確認する書類
- 役員等の経歴や経営経験を証明する書類
- 営業所技術者等の資格証明書や実務経験を証明する書類
- 財産的基礎を証明する書類
- 営業所の所在地や実態を確認する資料
- 欠格要件に該当しないことなどを確認するための書類
実際に必要となる書類は、申請する許可の種類や会社の状況、要件を満たす方法などによって異なります。
特に、実務経験によって営業所技術者等の要件を満たそうとする場合には、経験期間だけでなく、その期間にどのような工事を行っていたのかを証明することが重要です。
過去の契約書、注文書、請求書などの資料を整理しておくと、申請準備を進めやすくなります。
7.鉄筋工事業の建設業許可を取得するメリット
鉄筋工事業の建設業許可を取得することには、さまざまなメリットがあります。
① 請け負える工事の範囲が広がる
建設業許可を取得すると、許可の対象となる業種について、軽微な建設工事に限らず、一定金額以上の工事も請け負えるようになります。
これまで請負金額の関係で受注できなかった工事にも対応できるようになり、事業拡大につながる可能性があります。
② 元請業者からの信頼につながる
元請業者によっては、協力会社に対して建設業許可の取得を求めている場合があります。
許可を取得しておくことで、取引先の条件を満たしやすくなり、新たな受注機会につながることも考えられます。
ただし、許可を取得しただけで受注が保証されるわけではありません。施工実績や技術力、安全管理体制なども重要です。
③ 会社の信用力向上につながる
建設業許可を取得するには、経営体制や技術者、財産的基礎などについて一定の要件を満たす必要があります。
そのため、許可を取得していることは、取引先が会社の体制を確認する際の一つの判断材料になります。
金融機関との取引や新規取引先の開拓などにおいても、会社の信用力を高める一助となる可能性があります。
8.鉄筋工事業の建設業許可を取得する際の注意点
鉄筋工事業の許可取得を検討する際には、いくつか注意しておきたい点があります。
自社の工事内容に合った業種を選ぶ
建設業許可は、実際に請け負う工事の内容に応じて業種を判断します。
鉄筋の組立てだけでなく、コンクリートの打設や土工事なども請け負っている場合には、それぞれの工事について必要な業種を検討する必要があります。
営業所技術者等の要件を早めに確認する
鉄筋工事業の許可取得を検討する会社では、技術者の要件が課題になることがあります。
資格がない場合でも、実務経験によって要件を満たせる可能性はありますが、そのためには経験を証明する資料が必要です。
申請直前になってから資料を探し始めると、必要な書類がそろわず、申請までに時間がかかることがあります。
早い段階で資格や実務経験、証明資料を確認しておくことが重要です。
許可取得後も適切な管理が必要
建設業許可は、一度取得すれば、その後の手続きが不要になるわけではありません。
許可の有効期間は原則として5年間であり、引き続き営業する場合には更新手続きが必要です。
また、決算変更届などの必要な届出や、役員・営業所技術者等の変更に関する手続きも忘れずに行わなければなりません。
許可取得後の管理体制も整えておきましょう。
9.新潟県で鉄筋工事業の建設業許可を取得するなら
鉄筋工事業の建設業許可を取得するためには、経営経験、営業所技術者等の資格や実務経験、財産的基礎など、さまざまな要件を確認する必要があります。
「自社で許可を取得できるのかわからない」
「営業所技術者等の要件を満たす従業員がいるか確認したい」
「実務経験を証明する書類がそろっているか不安」
「元請業者から建設業許可を取得するよう求められた」
このようなお悩みをお持ちの建設業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
建設業許可は、要件を満たしているかどうかを事前に確認し、必要な資料を適切に準備することが大切です。
当事務所では、新潟市および新潟市近郊の建設業者様を対象に、建設業許可の新規取得、業種追加、許可更新などのご相談を承っております。
また、建設業許可に関連する会社の目的変更や役員変更などの登記手続きについても、必要に応じてご相談いただけます。
鉄筋工事業の建設業許可の取得をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
鉄筋工事業は、鉄筋の加工・組立てや接合などを行う専門工事です。
1件の請負代金が500万円以上(税込み)となる鉄筋工事を請け負う場合には、原則として建設業許可が必要です。
許可取得にあたっては、経営業務の管理体制、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件などを確認しなければなりません。
また、鉄筋工事業と、とび・土工・コンクリート工事業、建築一式工事業、土木一式工事業などは、それぞれ対象となる工事の内容が異なります。
自社の工事内容に合った業種を選び、必要な要件や書類を事前に確認することで、スムーズな許可取得につなげましょう。
新潟県で鉄筋工事業の建設業許可の取得を検討されている建設業者様は、ぜひ当事務所にご相談ください



