建物の内部を快適で使いやすい空間に仕上げる「内装仕上工事」。
住宅やマンション、オフィス、店舗、商業施設など、さまざまな建物で行われる工事です。
内装工事を行っている建設会社や個人事業主の方から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「内装工事を請け負うには建設業許可が必要ですか?」
「クロスの張り替え工事も内装仕上工事業に該当しますか?」
「大工工事業の許可があれば、内装工事もできますか?」
「内装工事の経験が10年以上ありますが、建設業許可を取得できますか?」
今回は、建設業許可における内装仕上工事業の内容、具体的な工事の種類、他の建設業種との違い、許可取得の要件や必要な資格について、行政書士がわかりやすく解説します。
1.内装仕上工事業とは?
内装仕上工事業は、建設業法で定められた29種類の建設工事の一つです。
国土交通省の建設工事の区分では、次のように定義されています。
木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事
つまり、建物の内部の壁や天井、床などを仕上げる工事が該当します。
新築住宅の内装工事だけでなく、マンションのリフォーム、店舗の改装、オフィスの内装工事なども含まれます。
ただし、建物の内部で行う工事がすべて内装仕上工事業に該当するわけではありません。
例えば、電気配線工事は電気工事業、給排水設備工事は管工事業に該当することがあります。
そのため、実際の施工内容によって建設業許可の業種を判断することが重要です。
2.内装仕上工事業に該当する具体的な工事
内装仕上工事業には、主に次のような工事があります。
① インテリア工事
建物内部の装飾や仕上げを行う工事です。
住宅、オフィス、店舗などの内装仕上げが該当します。
ただし、インテリア工事という名称であっても、実際の工事内容によっては他の業種に該当する場合があります。
② 天井仕上工事
天井に石膏ボードや吸音板などを取り付け、仕上げる工事です。
例えば、次のような工事があります。
-
オフィスの天井ボード張り工事
-
店舗の天井仕上工事
-
住宅の天井クロス張り工事
-
吸音板の設置工事
③ 壁張り工事
建物内部の壁を仕上げる工事です。
石膏ボードや化粧板などを使用した壁張り工事が該当します。
マンションのリフォーム工事や店舗改装工事などで行われます。
④ 内装間仕切り工事
建物内部の空間を区切るための間仕切りを設置する工事です。
例えば、オフィスの会議室を新設するための間仕切り工事や、店舗内部の区画を変更する工事などがあります。
軽量鉄骨下地(LGS)を使用した間仕切り工事も、代表的な内装工事の一つです。
⑤ 床仕上工事
建物内部の床を仕上げる工事です。
代表的なものとして、次のような工事があります。
-
フローリング工事
-
クッションフロア張り工事
-
カーペット張り工事
-
ビニール床タイル張り工事
-
タイルカーペット張り工事
なお、床工事であっても、施工内容によっては他の建設業種に区分される場合があります。
⑥ たたみ工事
住宅や和室などで行われる、たたみの設置や交換工事です。
たたみの新設や表替えなどが該当します。
⑦ ふすま工事
ふすまの新設や張り替えなどを行う工事です。
和室の改修工事などで行われます。
⑧ 家具工事
建物に造り付ける家具などの設置工事です。
例えば、造作収納や造り付け家具の設置工事などが該当する場合があります。
ただし、単に完成品の家具を搬入して置くだけの場合には、建設工事に該当しないこともあります。
⑨ 防音工事
建物内部の音の伝わりを抑えるために、吸音材や遮音材などを使用して内装を仕上げる工事です。
例えば、音楽スタジオや会議室などの防音内装工事が考えられます。
なお、道路などに設置する防音壁工事は、内装仕上工事業ではなく、通常はとび・土工・コンクリート工事に区分されます。
3.クロスの張り替え工事にも建設業許可は必要?
クロスの張り替え工事は、内装仕上工事業に該当します。
ただし、すべてのクロス工事に建設業許可が必要になるわけではありません。
建設業法では、軽微な建設工事のみを請け負う場合、建設業許可を取得しなくても営業できるとされています。
内装仕上工事の場合、原則として次のように区分されます。
| 1件の工事の請負金額 | 建設業許可 |
|---|---|
| 500万円未満(税込) | 原則不要 |
| 500万円以上(税込) | 原則必要 |
例えば、住宅のクロス張り替え工事を50万円で請け負う場合には、原則として建設業許可は必要ありません。
一方、オフィスビルの内装仕上工事を800万円で請け負う場合には、原則として内装仕上工事業の建設業許可が必要です。
なお、500万円という基準には消費税が含まれます。
また、材料を注文者が提供する場合には、その材料の市場価格や運送費を請負代金に加算して判断する必要がある場合があります。
工事を複数の契約に分割しても、正当な理由がなければ合計金額で判断されることがあります。
元請工事だけでなく、下請工事についても、この基準は同じです。
4.内装仕上工事業と大工工事業の違い
内装仕上工事業と混同されやすい業種の一つが「大工工事業」です。
どちらも建物内部の工事を行うことがありますが、建設業許可では異なる業種として区分されています。
| 業種 | 主な工事内容 |
|---|---|
| 内装仕上工事業 | 壁、天井、床などの内装仕上げを行う工事 |
| 大工工事業 | 木材の加工や取付けによって工作物を築造し、または木製設備を取り付ける工事 |
例えば、木材を加工して木造の下地や造作を施工する工事は、大工工事業に該当する場合があります。
一方、石膏ボードを張ったり、クロスや床材を施工したりする工事は、内装仕上工事業に該当します。
ただし、木材を使用した工事がすべて大工工事業に該当するわけではありません。
内装仕上工事業にも、木材を用いた内装仕上げが含まれます。
そのため、使用する材料だけでなく、工事の目的や施工内容によって判断する必要があります。
5.内装仕上工事業と建築一式工事業の違い
「建築一式工事業の許可を持っていれば、内装工事も請け負えるのではないか」
このように考えている方もいらっしゃいます。
しかし、建築一式工事業と内装仕上工事業は別の許可業種です。
建築一式工事は、原則として総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事をいいます。
一方、内装仕上工事は、建物内部の仕上げを行う専門工事です。
したがって、建築一式工事業の許可を取得しているだけでは、一定金額以上の内装仕上工事を単独で請け負うことはできません。
例えば、建築一式工事業の許可しか持っていない会社が、単独の内装仕上工事を1,000万円で請け負う場合には、原則として内装仕上工事業の許可が必要になります。
ただし、建築一式工事に附帯する専門工事については、建設業法上の附帯工事の規定が適用される場合があります。
6.店舗の改装工事は内装仕上工事業に該当する?
店舗の改装工事を行う会社からも、建設業許可についてご相談をいただくことがあります。
例えば、飲食店の改装工事として、次のような工事を請け負うケースです。
-
壁や天井のクロス張り替え
-
間仕切り壁の設置
-
床材の張り替え
-
照明設備の設置
-
給排水設備の変更
-
空調設備の設置
このような工事では、内装仕上工事だけでなく、電気工事や管工事など、複数の業種が関係することがあります。
そのため、店舗改装工事という名称だけで、すべてを内装仕上工事業として判断することはできません。
工事の内容や契約形態、主たる工事と附帯工事の関係などを確認する必要があります。
特に、店舗の全面改装工事など、請負金額が大きくなる場合には注意が必要です。
7.内装仕上工事業の建設業許可を取得するための要件
内装仕上工事業の建設業許可を取得するには、主に次の要件を満たす必要があります。
① 経営業務の管理を適正に行う能力があること
建設業の経営について、一定の経験や管理体制が必要です。
例えば、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験がある場合などが代表的です。
なお、内装仕上工事業以外の建設業種での経営経験でも、要件を満たせる場合があります。
② 営業所技術者等を配置すること
営業所ごとに、一定の資格や実務経験を持つ営業所技術者等を配置する必要があります。
内装仕上工事業では、建築施工管理技士や内装仕上げ施工技能士などの資格によって要件を満たせる場合があります。
また、資格がなくても、一定の実務経験によって要件を満たせる場合があります。
③ 財産的基礎があること
一般建設業許可の場合、代表的な基準として自己資本が500万円以上あることなどが挙げられます。
自己資本が500万円未満でも、500万円以上の資金調達能力を証明する方法などがあります。
④ 誠実性があること
請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが必要です。
⑤ 適切な社会保険に加入していること
健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、加入義務がある場合には適切に加入している必要があります。
⑥ 欠格要件に該当しないこと
役員等について、一定の法令違反や刑罰などに関する欠格要件に該当しないことが必要です。
8.内装仕上工事業の許可取得に必要な資格とは?
内装仕上工事業の一般建設業許可では、例えば次のような資格が営業所技術者等の要件に該当します。
-
1級建築施工管理技士
-
2級建築施工管理技士(仕上げ)
-
1級建築士
-
2級建築士
-
1級内装仕上げ施工技能士
-
2級内装仕上げ施工技能士(原則として合格後3年以上の実務経験が必要)
-
1級表装技能士
-
2級表装技能士(原則として合格後3年以上の実務経験が必要)
このほか、職業能力開発促進法に基づく関連技能検定や、所定の実務経験を伴う資格などによって要件を満たせる場合があります。
なお、2級技能士については、資格取得時期によって必要な実務経験年数の取扱いが異なる場合があります。
資格を持っている場合には、その資格が内装仕上工事業の許可要件に該当するか、事前に確認することが重要です。
9.資格がなくても内装仕上工事業の許可は取得できる?
内装工事を長年行っているものの、国家資格を持っていないという方もいらっしゃいます。
しかし、国家資格がなくても、一定の実務経験があれば建設業許可を取得できる可能性があります。
一般建設業許可では、代表的な方法として次のようなものがあります。
① 10年以上の実務経験
内装仕上工事について10年以上の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
例えば、長年クロス工事や床仕上工事を行ってきた方などが該当する可能性があります。
ただし、単に10年間建設会社に勤務していたというだけでは足りません。
内装仕上工事に関する実務経験が必要です。
② 指定学科卒業後の実務経験
建築学や都市工学に関する指定学科などを卒業している場合には、必要な実務経験年数が短縮されることがあります。
例えば、大学の指定学科を卒業した場合には3年以上、高等学校の指定学科を卒業した場合には5年以上の実務経験が基準となります。
なお、学歴や資格による要件の詳細は個別に確認する必要があります。
10.内装仕上工事の実務経験はどのように証明する?
実務経験によって建設業許可を取得する場合には、過去の工事実績を証明する必要があります。
例えば、次のような資料が考えられます。
-
内装仕上工事の請負契約書
-
工事注文書・注文請書
-
内装工事の請求書
-
工事代金の入金記録
-
過去に勤務していた会社の建設業許可関係資料
-
在籍期間を確認できる資料
ただし、必要となる資料や証明方法は、申請先の行政庁によって異なります。
特に注意したいのが、工事内容の記載です。
例えば、請求書に「リフォーム工事一式」としか記載されていない場合、その工事が内装仕上工事に該当することを確認できない可能性があります。
一方、「クロス張り替え工事」「床仕上工事」「天井ボード張り工事」など、具体的な工事内容が記載されていれば、工事業種を判断しやすくなります。
将来、建設業許可の取得を考えている場合には、日頃から工事内容がわかる資料を保管しておくことが重要です。
11.内装仕上工事業の許可を取得するメリット
内装仕上工事業の建設業許可を取得すると、さまざまなメリットがあります。
① 500万円以上の内装工事を請け負える
許可を取得することで、これまで請け負うことができなかった規模の内装仕上工事にも対応できるようになります。
オフィスの内装工事や店舗の大規模改装工事など、受注できる案件の幅が広がります。
② 元請会社からの信用につながる
ゼネコンや建設会社などでは、下請会社に対して建設業許可の取得を求めることがあります。
許可を取得することで、取引先からの信用向上につながる可能性があります。
③ 事業拡大につながる
建設業許可を取得することによって、請け負える工事の規模が広がります。
従業員の増員や新たな取引先の開拓など、将来的な事業拡大を考えている会社にとってもメリットがあります。
④ 公共工事への参入を検討できる
建設業許可を取得することで、公共工事への参入を検討することもできます。
ただし、公共工事を直接受注するためには、原則として経営事項審査や入札参加資格審査など、別途必要な手続きがあります。
12.内装仕上工事業の業種追加について
すでに建設業許可を取得している会社が、新たに内装仕上工事業の許可を取得したい場合には、業種追加の手続きを検討することになります。
例えば、次のようなケースです。
-
大工工事業の許可を持っている会社が、内装仕上工事業を追加したい
-
建築一式工事業の許可を持っている会社が、内装仕上工事業を追加したい
-
塗装工事業の許可を持っている会社が、内装仕上工事業を追加したい
このような場合には、既存の許可の内容を確認したうえで、内装仕上工事業に対応する営業所技術者等の要件を満たしているかを確認する必要があります。
なお、同じ一般建設業許可の業種追加であっても、技術者の資格や実務経験によっては、新たな技術者の配置が必要になる場合があります。
また、一般建設業と特定建設業の区分によって、申請手続きが異なることがあります。
13.内装仕上工事業の建設業許可は行政書士に相談を
内装仕上工事業は、住宅や店舗、オフィスなど幅広い建物で必要とされる工事です。
一方で、内装工事には大工工事、電気工事、管工事など、複数の建設業種が関係することがあります。
そのため、建設業許可を取得する際には、実際の工事内容に応じた業種を正しく判断することが重要です。
また、資格を持っていない場合には、実務経験をどのように証明するかが大きなポイントになります。
「内装工事を10年以上行っているが、許可を取得できるかわからない」
「クロス工事だけでも建設業許可を取得できるのか知りたい」
「店舗改装工事を請け負うために、どの業種の許可が必要か確認したい」
「現在の建設業許可に内装仕上工事業を追加したい」
このような場合には、建設業許可申請に詳しい行政書士に相談することをおすすめします。
まとめ
内装仕上工事業は、建物内部の壁、天井、床などの仕上げを行う建設工事です。
クロス工事、床仕上工事、天井仕上工事、間仕切り工事、たたみ工事、ふすま工事などが代表的な工事に該当します。
500万円以上(税込)の内装仕上工事を請け負う場合には、原則として建設業許可が必要です。
また、内装仕上工事業と大工工事業、建築一式工事業は異なる業種であるため、工事内容に応じた許可を取得する必要があります。
資格がない場合でも、一定の実務経験によって許可を取得できる可能性があります。
内装仕上工事業の建設業許可を取得したい方、業種追加を検討している方は、建設業許可申請に詳しい行政書士にご相談ください。



