建設会社が会社設立する場合の目的(定款)

建設会社を設立する際には、会社の商号、本店所在地、資本金、役員など、さまざまな事項を決める必要があります。

その中でも、意外と悩まれる方が多いのが「事業目的」です。

「建設会社の定款には、どのような事業目的を記載すればよいのでしょうか?」

「建設業許可を取得するためには、定款に建設業の業種を記載する必要がありますか?」

「将来行う予定の事業も記載しておいた方がよいのでしょうか?」

「事業目的は多ければ多いほどよいのでしょうか?」

会社設立の際には、このようなご相談をいただくことがあります。

事業目的は、会社がどのような事業を行うのかを示す重要な事項です。

特に建設会社の場合、将来の建設業許可の取得や業種追加、産業廃棄物収集運搬業などの許認可にも関係するため、慎重に決める必要があります。

今回は、建設会社を設立する際の定款の事業目的について、具体的な記載例や注意点を交えながら詳しく解説します。

また、これまで多くの建設会社の設立や建設業許可の手続きをお手伝いしてきた経験から、事業目的についての考え方もお伝えしたいと思います。

1.会社設立時の「事業目的」とは?

会社を設立する場合には、定款を作成する必要があります。

定款とは、会社の基本的なルールを定めた書類です。

株式会社の場合、定款には会社法で定められた事項を記載しなければなりません。

その一つが「目的」です。

ここでいう目的とは、会社がどのような事業を行うのかを示すものです。

例えば、建設会社であれば次のような事業目的が考えられます。

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 管工事業
  • 電気工事業
  • 建築物のリフォーム工事業
  • 建設工事の設計、施工及び管理

このように、会社が営む事業の内容を記載します。

経営理念と事業目的は違う

「会社の目的」というと、

「地域社会に貢献する」

「お客様に喜ばれる会社になる」

「地域で一番の住宅会社を目指す」

といった内容をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、これらは会社経営において非常に大切な考え方です。

しかし、定款に記載する事業目的とは少し意味が異なります。

定款の事業目的には、会社が行う具体的な事業内容を記載します。

一方、地域社会への貢献や顧客満足などは、経営理念や経営方針として定めるものです。

会社設立の際には、この違いを理解しておくとよいでしょう。

2.建設会社の事業目的はどのように決める?

建設会社を設立する場合、まずは現在行っている事業、または会社設立後に行う予定の事業を整理します。

例えば、個人事業主として住宅の新築工事やリフォーム工事を行っている方が、法人化するケースです。

この場合、次のような事業目的が考えられます。

事業目的の記載例

1.建築工事業
2.建築物の増改築及びリフォーム工事業
3.前各号に附帯関連する一切の事業

また、土木工事を中心に行う会社であれば、次のような事業目的も考えられます。

事業目的の記載例

1.土木工事業
2.とび・土工工事業
3.舗装工事業
4.前各号に附帯関連する一切の事業

このように、実際に行う事業に合わせて記載することが基本です。

なお、これらはあくまで一般的な記載例です。

会社の事業内容や取得予定の許認可によって、適切な記載方法は異なります。

3.建設業許可を取得する場合、定款の事業目的は重要?

建設会社を設立する際、将来的に建設業許可を取得する予定がある場合には、事業目的の記載について注意が必要です。

建設業許可は、建設業法に定められた29業種に分かれています。

例えば、次のような業種があります。

  • 土木一式工事業
  • 建築一式工事業
  • 大工工事業
  • 左官工事業
  • とび・土工工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 舗装工事業
  • 内装仕上工事業
  • 解体工事業

建設業許可を取得する場合には、会社がどのような建設工事を請け負うのかを明確にする必要があります。

定款に許可業種を記載していないと許可が取れない?

ここで注意したいのは、定款の事業目的と建設業許可の業種は、必ずしも完全に一致する必要はないということです。

例えば、定款に「建築工事業」と記載されていても、実際には内装仕上工事業や大工工事業の許可を取得できる場合があります。

ただし、許可行政庁によっては、申請する業種が会社の事業目的から読み取れるかどうかを確認することがあります。

そのため、取得予定の建設業許可に対応した事業目的を記載しておくことが望ましいといえます。

特に、会社設立後すぐに建設業許可を申請する予定がある場合には、設立前に事業目的の内容を確認しておくことをおすすめします。

4.建設業許可29業種をすべて事業目的に記載する必要はある?

建設会社を設立する際に、

「将来、いろいろな建設工事を行う可能性があるので、建設業許可の29業種をすべて記載しておきたい」

というご相談をいただくことがあります。

もちろん、将来行う可能性がある事業をあらかじめ定款に記載すること自体は可能です。

しかし、必ずしも29業種すべてを記載する必要はありません。

例えば、住宅の新築工事を中心に行う会社であれば、建築工事業やリフォーム工事業など、事業の実態に合った目的を記載する方法が考えられます。

また、将来的に関連する建設工事を行う可能性がある場合には、必要に応じて事業目的を追加することもできます。

事業目的を増やせば建設業許可を取得できるわけではない

ここで誤解していただきたくないのは、定款に事業目的を記載しただけで、その業種の建設業許可を取得できるわけではないということです。

例えば、定款に「電気工事業」と記載したとしても、それだけで電気工事業の許可を取得できるわけではありません。

建設業許可を取得するためには、常勤役員等の経営経験、営業所技術者等の資格や実務経験、財産的基礎など、所定の要件を満たす必要があります。

つまり、定款に記載する事業目的と、実際に建設業許可を取得できるかどうかは別の問題です。

5.将来行う予定の事業も記載しておくべき?

会社設立時の事業目的には、現在行っている事業だけでなく、将来行う予定の事業を記載することもできます。

例えば、現在は土木工事業を中心に行っている会社が、将来的に産業廃棄物収集運搬業を始めたいと考えている場合です。

この場合、会社設立時に次のような事業目的を記載しておくことが考えられます。

1.土木工事業
2.とび・土工工事業
3.産業廃棄物収集運搬業
4.前各号に附帯関連する一切の事業

このように、将来行う可能性が高い事業をあらかじめ記載しておけば、その事業を開始する際に目的変更登記を行わずに済む場合があります。

将来の事業を記載しておくメリット

将来の事業をあらかじめ記載しておくメリットは、主に次のとおりです。

  • 事業拡大時に目的変更登記を行わずに済む場合がある
  • 登録免許税や司法書士報酬などの費用を抑えられる
  • 新規事業を開始する際の手続き負担を軽減できる
  • 許認可申請の際に目的変更が必要になるリスクを減らせる

ただし、将来行う可能性があるというだけで、まったく関係のない事業まで多数記載することが適切とは限りません。

事業目的は、会社の事業内容を外部に示す役割もあるためです。

6.事業目的を変更すると費用はいくらかかる?

会社設立後に新しい事業を始めることになり、定款の事業目的を変更する場合には、通常、株主総会の特別決議によって定款を変更します。

また、株式会社の事業目的は登記事項であるため、法務局で目的変更登記を行う必要があります。

目的変更登記の登録免許税は、原則として3万円です。

司法書士に登記手続きを依頼する場合には、別途司法書士報酬が発生します。

例えば、会社設立後に次のような事業を追加する場合です。

  • 産業廃棄物収集運搬業
  • 宅地建物取引業
  • 不動産賃貸業
  • 建設資材の販売業

現在の事業目的に新しい事業が含まれていない場合には、目的変更登記が必要になることがあります。

そのため、会社設立時に将来の事業展開をある程度見据えておくことは、費用面でもメリットがあります。

7.建設会社が産業廃棄物収集運搬業を始める場合の事業目的

建設会社では、将来的に産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するケースがあります。

例えば、解体工事業や土木工事業を営む会社が、産業廃棄物の収集運搬業を新たに開始する場合です。

この場合、定款の事業目的に「産業廃棄物収集運搬業」を記載しておくことが考えられます。

記載例

1.土木工事業
2.解体工事業
3.産業廃棄物収集運搬業
4.前各号に附帯関連する一切の事業

ただし、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するには、定款の目的だけでなく、講習会の修了、車両や施設、経理的基礎など、所定の要件を満たす必要があります。

また、自社が排出した産業廃棄物を自ら運搬する場合と、他社から委託を受けて収集運搬する場合では、許可の必要性が異なります。

そのため、事業目的の記載とあわせて、許可の必要性についても確認することが重要です。

8.建設会社が不動産業を始める場合の事業目的

建設会社では、事業拡大に伴って不動産業を開始するケースもあります。

例えば、注文住宅を建築していた会社が、土地の売買や建売住宅の販売を始める場合です。

この場合、宅地建物取引業の免許が必要になることがあります。

そのため、会社設立時から不動産事業を予定しているのであれば、次のような事業目的を記載しておくことが考えられます。

記載例

1.建築工事業
2.建築物のリフォーム工事業
3.不動産の売買、賃貸、管理及び仲介
4.前各号に附帯関連する一切の事業

ただし、不動産業を行う場合でも、すべての業務に宅地建物取引業の免許が必要になるわけではありません。

例えば、自社所有物件の賃貸のみを行う場合には、原則として宅地建物取引業の免許は必要ありません。

一方、宅地や建物の売買を業として行う場合や、売買・賃貸の代理・媒介を業として行う場合には、宅地建物取引業の免許が必要になることがあります。

事業内容によって必要な許認可が異なるため、注意が必要です。

9.事業目的は多ければ多いほどよいのか?

ここからは、少し経営者としての個人的な考え方になります。

これまで多くの建設会社の設立や建設業許可のお手伝いをしてきました。

その中で、会社の登記事項証明書を確認する機会も数多くあります。

そこで感じることがあります。

それは、事業目的を見ると、その会社がどのような経営を目指しているのか、ある程度見えてくるということです。

もちろん、事業目的の数だけで優良企業かどうかを判断することはできません。

複数の事業を展開し、それぞれで大きな成果を上げている会社もあります。

しかし、特に中小規模の建設会社では、事業目的が非常に多い会社よりも、本業に関連する事業に絞っている会社の方が、経営の方向性が明確に感じられることがあります。

事業目的が20個も30個もある会社

会社設立の際、司法書士から次のようなアドバイスを受けることがあります。

「将来行う可能性がある事業も、あらかじめ目的に入れておいた方がよいですよ」

これは決して間違ったアドバイスではありません。

将来、目的変更登記を行う必要がなくなれば、その分の費用を抑えることができるからです。

しかし、ここぞとばかりに事業目的を20個も30個も記載する会社もあります。

例えば、次のような事業です。

  • 建設業
  • 不動産業
  • 飲食店経営
  • インターネット通販
  • 自動車販売業
  • コンサルティング業
  • 人材紹介業

もちろん、これらの事業をすべて成功させる会社もあるでしょう。

しかし、会社を設立したばかりの段階で、これだけ多くの事業を同時に成功させることは簡単ではありません。

あの大谷翔平選手でさえ、野球では投手と打者の二刀流です。

会社設立時から五刀流、十刀流を目指す必要があるのでしょうか。

私は少し疑問に思います。

10.優良な建設会社ほど本業が明確?

これはあくまでも私の経験から感じていることですが、業績が安定している中小規模の建設会社では、事業目的が比較的シンプルなケースが少なくありません。

例えば、

1.土木工事業
2.舗装工事業
3.前各号に附帯関連する一切の事業

このような会社です。

もちろん、事業目的が少なければ業績がよいというわけではありません。

また、大規模な建設会社や複数の事業を展開している会社では、多数の事業目的が記載されていることもあります。

しかし、事業目的がシンプルな会社を見ると、経営の軸がしっかりしているように感じることがあります。

「自分たちは何の事業でお客様に貢献するのか」

「どの分野で地域から選ばれる会社になるのか」

「どの仕事で他社に負けない強みをつくるのか」

こうしたことが明確な会社は、経営判断にも一貫性があるのではないでしょうか。

11.本業を磨くことが会社の成長につながる

会社を経営していると、さまざまな事業の話が入ってきます。

「今はこの事業が儲かるらしい」

「知り合いが新しい事業で成功した」

「建設業以外にも収益の柱をつくりたい」

このような話を聞くと、新しい事業に挑戦したくなることもあるでしょう。

もちろん、新規事業に挑戦すること自体は悪いことではありません。

むしろ、会社が成長するためには、新しい分野への挑戦が必要になる場合もあります。

しかし、新しい事業を始める前に考えたいことがあります。

それは、現在の本業で、お客様から十分に選ばれる会社になっているかということです。

例えば、土木工事を行っている会社であれば、

「施工品質ではどこにも負けない」

「工期を守ることでは地域一番」

「お客様への対応では他社に負けない」

といった強みを磨くことが重要だと思います。

本業でお客様から信頼される会社になれば、その延長線上に新しい事業が生まれることもあります。

一方、本業がうまくいっていないからといって、次々と新しい事業に手を出しても、必ずしも経営が改善するとは限りません。

私は、まず本業をしっかりと磨くことが、会社の成長につながるのではないかと考えています。

12.会社設立時の事業目的は何個くらいがよい?

それでは、建設会社を設立する場合、事業目的は何個くらい記載すればよいのでしょうか。

結論として、法律上、事業目的の数に上限があるわけではありません。

また、何個が適切という決まりもありません。

そのため、会社の事業内容や将来の事業計画に応じて判断することになります。

私としては、次のような考え方をおすすめします。

① 現在行っている事業は記載する

まず、会社設立後に実際に行う事業を記載します。

② 近い将来に行う予定の事業も検討する

例えば、数年以内に産業廃棄物収集運搬業や不動産業を始める具体的な計画がある場合には、あらかじめ記載しておくことを検討します。

③ まったく関係のない事業を無理に記載しない

将来行う可能性がほとんどない事業まで、多数記載する必要はないと考えます。

④ 許認可が必要な事業は事前に確認する

建設業許可、宅地建物取引業免許、産業廃棄物収集運搬業許可など、許認可が必要な事業については、申請時の取扱いを確認しておくことが重要です。

⑤ 将来の変更も可能であることを理解する

会社設立時にすべての事業を決める必要はありません。

会社の成長に合わせて、事業目的を追加することも可能です。

13.建設会社の設立では司法書士と行政書士の連携が重要

建設会社を設立する場合、会社設立登記と建設業許可の申請をあわせて検討することが重要です。

例えば、個人事業主として建設業を営んでいた方が、法人化するケースです。

この場合、会社を設立しただけでは、個人で取得していた建設業許可が当然に新会社へ移るわけではありません。

法人化の方法や事業の承継内容によっては、建設業許可の承継認可や新規申請などを検討する必要があります。

また、会社設立時の事業目的についても、将来取得する建設業許可の業種を考慮して決めておくことが望ましいといえます。

会社設立登記は司法書士、建設業許可の申請は行政書士が専門とする業務です。

そのため、両者が連携して手続きを進めることで、会社設立後の許認可申請をスムーズに進めやすくなります。

特に、次のような場合には、会社設立前から相談することをおすすめします。

  • 個人事業から法人化する場合
  • 会社設立後すぐに建設業許可を取得したい場合
  • 将来的に複数の建設業種を取得したい場合
  • 産業廃棄物収集運搬業の許可も取得したい場合
  • 不動産業など関連事業への進出を予定している場合

14.まとめ|建設会社の事業目的は将来を考えながらシンプルに

建設会社を設立する際、定款の事業目的は重要な事項の一つです。

事業目的には、現在行っている事業だけでなく、将来行う予定の事業も記載することができます。

そのため、会社設立時に将来の事業展開を考慮しておけば、後から目的変更登記を行う手間や費用を減らせる場合があります。

一方、事業目的を多く記載すればよいというものでもありません。

特に、建設会社では、本業に関連する事業を中心に、会社の経営方針に合った目的を定めることが重要だと考えます。

また、建設業許可やその他の許認可を取得する予定がある場合には、それらの申請も考慮して事業目的を決める必要があります。

会社の事業目的は、単に登記するための文章ではありません。

その会社が何を本業とし、どのような分野で成長していくのかを示すものでもあります。

会社設立時には、ぜひ事業目的についてもじっくり考えていただきたいと思います。

建設会社の設立・建設業許可の取得はトラスト行政書士事務所へ

トラスト行政書士事務所では、新潟県を中心に建設業許可の新規申請、更新、業種追加、各種変更届などの手続きをサポートしております。

また、司法書士法人を併設しておりますので、会社設立登記と建設業許可の申請をまとめてご相談いただくことが可能です。

「建設会社を設立したいが、事業目的をどのように決めればよいかわからない」

「将来の建設業許可を考慮して定款を作成したい」

「個人事業から法人化したい」

「会社設立後すぐに建設業許可を取得したい」

「事業目的の変更登記と建設業許可の業種追加をまとめて依頼したい」

このようなお悩みがありましたら、トラスト行政書士事務所までお気軽にご相談ください。

会社設立から建設業許可の取得、その後の変更手続きまで、継続してサポートいたします。

建設業の許可に関するお問い合わせ
お電話でのお問い合わせ

「建設業のホームページを見た」とお伝えください。

           
受付時間:平日9:00-12:00 / 13:00-17:45(土日祝休み)
メールでのお問い合わせ

    ページトップへ戻る