名義貸しは違法!経営業務管理責任者・専任技術者の名前を借りるリスクと罰則

建設業許可を取得したいけれど、経営業務管理責任者や専任技術者の要件を満たす人がいない。

そのような場合に、

「建設会社で長年役員をしていた知人に名前を貸してもらえばよいのではないか」

「資格を持っている人に非常勤役員になってもらえば許可が取れるのではないか」

「実際に勤務してもらわなくても、書類上だけ役員にすればよいのではないか」

と考える方がいらっしゃいます。

しかし、実際には勤務していない人を、常勤役員等や営業所技術者等として申請することは、建設業許可の名義貸しに該当するおそれがあります。

名義貸しによる虚偽申請は、建設業法違反として許可の取消しや刑事罰などにつながる可能性がある重大な問題です。

また、名義を借りた会社だけでなく、名前を貸した側にも責任が生じる場合があります。

今回は、実際に当事務所へご相談いただいた事例をもとに、建設業許可における名義貸しとは何か、なぜ禁止されているのか、どのようなリスクがあるのかについて詳しく解説します。

1.【ご相談事例】経営経験のある知人に役員になってもらえば建設業許可を取得できる?

今回ご相談いただいたのは、建設会社を経営するY様です。

Y様は、個人事業主として建設業を始め、2年後に法人化しました。

株式会社を設立してから1年が経過し、事業も順調に進んできたため、そろそろ建設業許可を取得したいと考えていました。

しかし、建設業許可の取得要件について調べてみると、経営業務の管理に関する一定の経験が必要であることが分かりました。

Y様ご自身の建設業の経営経験は、個人事業主として2年間、法人の役員として1年間の合計3年間です。

一般的な5年以上の経営経験という要件には、まだ届いていませんでした。

そこでY様は、以前から付き合いのあるK様に相談しました。

K様は、別の建設会社で長年役員を務めていた経験があり、建設業の経営について十分な知識を持っている方でした。

Y様が事情を説明したところ、K様は快く協力を申し出てくださいました。

そして、お二人で当事務所へご相談に来られました。

最初は順調に進むと思われた建設業許可申請

当初は、K様に新しく会社の取締役に就任していただき、経営業務管理責任者(常勤役員等)として申請する方向でお話を進めていました。

役員変更登記の準備と並行して、建設業許可申請に必要な書類を確認していたところ、Y様から次のようなご質問がありました。

「Kさんは社会保険には加入しない予定ですが、それでも問題ありませんか?」

詳しく事情をお聞きすると、次のようなお考えでした。

  • K様は経営経験があるため、名前を借りれば建設業許可を取得できると思っていた
  • 実際に会社で勤務してもらう予定はない
  • 取締役には就任してもらうが、非常勤役員とする予定
  • 役員報酬は支給しない
  • 役員報酬を支給しないため、社会保険にも加入しない予定

つまり、K様には実際の経営業務を担当してもらう予定がなく、建設業許可を取得するために、役員として名前を貸してもらうというお考えだったのです。

このような状態でK様を常勤役員等として申請することは、認められません。

当事務所からは、その方法は建設業許可の名義貸しに該当するおそれがあり、虚偽申請となるため、そのまま申請することはできないとご説明しました。

2.建設業許可の名義貸しとは?

建設業許可における名義貸しとは、一般的に、実際には必要な職務を行っていない人の経歴や資格などを利用し、許可要件を満たしているかのように装う行為をいいます。

例えば、次のようなケースです。

① 経営経験のある知人に名前だけ借りる

建設業許可を取得するため、建設会社で5年以上の役員経験がある知人に、形式上だけ取締役に就任してもらうケースです。

実際には会社に勤務せず、経営業務にも関与しないにもかかわらず、常勤役員等として申請することは認められません。

② 資格を持っている人に名前だけ借りる

建設業許可では、営業所ごとに必要な資格や実務経験を有する営業所技術者等を配置する必要があります。

例えば、施工管理技士などの資格を持っている知人に、資格証の写しを提供してもらい、実際には勤務していないにもかかわらず営業所技術者等として申請するケースです。

これも名義貸しに該当するおそれがあります。

③ 他社で勤務している人を常勤として申請する

他の会社で常勤勤務している方を、自社でも常勤役員等や営業所技術者等として申請するケースです。

実際の勤務状況から常勤性を満たしていないにもかかわらず、常勤していると偽って申請すれば、虚偽申請となる可能性があります。

④ 許可取得後、すぐに退職する予定の人を申請する

建設業許可を取得するためだけに、経営経験や資格を持つ人を一時的に迎え入れ、許可取得後すぐに退職してもらうという相談を受けることもあります。

実際に勤務して必要な職務を行っているのであれば、短期間で退職したという事実だけで直ちに名義貸しになるわけではありません。

しかし、最初から勤務実態がなく、書類上だけ要件を満たすように装っていた場合には問題となります。

また、許可取得後に必要な人員が退職し、後任者もいない場合には、許可要件を欠くことになります。

建設業許可は、取得するときだけ要件を満たしていればよいという制度ではありません。

許可取得後も継続して要件を満たす必要があります。

3.なぜ建設業許可では名義貸しが禁止されているのか?

建設業許可制度は、単に建設会社の営業を許可するためだけの制度ではありません。

建設工事は、多額の請負代金が発生することも多く、施工不良や契約上のトラブルが生じた場合には、発注者や取引先に大きな損害を与える可能性があります。

そのため、建設業法では、建設業者に対して一定の経営管理能力や技術力、財産的基礎などを求めています。

例えば、経営業務の管理体制については、適切に建設業を経営できる体制が整っているかを確認します。

また、営業所技術者等については、建設工事の請負契約に関する技術的な判断や管理を適切に行えるかを確認します。

もし、名前だけ借りることが認められてしまえば、実際には経営能力や技術力を備えていない会社でも、建設業許可を取得できることになってしまいます。

これでは、建設業許可制度そのものの意味がなくなってしまいます。

そのため、経営業務管理責任者や営業所技術者等については、単に経歴や資格を持っているだけではなく、実際に必要な職務を行うことが求められているのです。

4.経営業務管理責任者(常勤役員等)の役割とは?

建設業許可を取得するためには、建設業法で定められた適切な経営管理体制を備える必要があります。

一般的には、建設業に関する一定の経営経験を有する常勤役員等を配置する方法が代表的です。

従来から、この役割を担う人は「経営業務管理責任者(経管)」と呼ばれています。

経営業務管理責任者は何をする人?

経営業務管理責任者は、建設業の経営業務を適切に管理するための重要な役割を担います。

例えば、次のような業務です。

  • 建設業の経営方針や事業計画に関する判断
  • 工事の受注や契約に関する経営上の管理
  • 資金繰りや財務状況の把握
  • 取引先との関係の管理
  • 法令遵守に関する管理
  • 建設業の経営全般に関する意思決定

このような役割を担うため、単に取締役として登記されているだけでは足りません。

実際に経営業務の管理を行う体制が必要になります。

非常勤役員でも経営業務管理責任者になれる?

原則として、非常勤役員は常勤役員等としての要件を満たしません。

常勤役員等には、会社において所定の常勤性を備えていることが求められるからです。

今回のK様は、取締役には就任するものの、実際には勤務せず、非常勤役員となる予定でした。

そのため、経営経験が十分にあったとしても、そのままでは常勤役員等としての要件を満たしません。

役員報酬がゼロでもよい?

役員報酬が支給されていないという事実だけで、直ちに名義貸しと判断されるわけではありません。

また、社会保険への加入の要否についても、報酬や勤務実態などによって判断されます。

しかし、役員報酬がなく、社会保険にも加入せず、実際に会社で勤務する予定もないという場合には、常勤性について重大な問題が生じます。

今回のK様についても、問題だったのは単に社会保険へ加入しないことではありません。

実際に会社で勤務せず、経営業務を担当する予定もなかったことが問題だったのです。

5.営業所技術者等(旧・専任技術者)の役割とは?

建設業許可では、営業所ごとに営業所技術者等を配置する必要があります。

以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、現在は「営業所技術者等」という名称が用いられています。

営業所技術者等は、建設工事の請負契約に関する技術的な判断や管理を行う重要な役割を担っています。

営業所技術者等の主な業務

具体的には、次のような業務が考えられます。

  • 建設工事の見積りに関する技術的な検討
  • 工事の施工方法に関する確認
  • 請負契約の内容についての技術的な検討
  • 必要な技術資料の確認
  • 工事の施工に関する技術的な助言や支援

このような業務を行うため、原則として営業所に常勤し、専らその職務に従事する必要があります。

資格だけ持っていればよいわけではない

例えば、1級建築施工管理技士や2級土木施工管理技士などの資格を持っている方であっても、実際に営業所で勤務していなければ、営業所技術者等として認められない場合があります。

資格証の写しを借りるだけでは、建設業許可の要件を満たすことはできません。

なお、営業所技術者等は原則として営業所において職務を行いますが、一定の要件を満たす場合には工事現場の主任技術者や監理技術者を兼ねることが認められる場合もあります。

そのため、営業所技術者等は絶対に工事現場へ出てはいけないというわけではありません。

重要なのは、建設業法で定められた配置要件や兼務要件を満たしていることです。

6.建設業許可の名義貸しが発覚した場合の罰則

名義貸しによって建設業許可を取得した場合、非常に重い処分を受ける可能性があります。

① 建設業許可が取り消される可能性がある

建設業許可の申請において、常勤役員等や営業所技術者等の勤務実態を偽るなど、不正な手段で許可を取得した場合には、建設業法に基づく許可取消しの対象となります。

建設業許可を取り消されると、原則として許可が必要な規模の建設工事を新たに請け負うことができなくなります。

② 一定期間、建設業許可を取得できなくなる場合がある

不正な手段で建設業許可を取得したことを理由に許可を取り消された場合には、欠格要件に該当し、原則として取消しの日から5年間、新たな建設業許可を受けられなくなる場合があります。

また、一定の役員等についても欠格要件の対象となることがあります。

③ 刑事罰の対象となる可能性がある

不正の手段によって建設業許可を取得した場合には、建設業法上、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。

なお、虚偽の記載や届出に関する違反については、その行為の内容によって適用される罰則が異なります。

すべての虚偽記載について同じ刑罰が適用されるわけではありません。

④ 会社の信用を失う

建設業許可の名義貸しが発覚した場合、法律上の処分だけでなく、取引先からの信用を失う可能性があります。

例えば、元請会社からの取引停止や、新たな工事の受注が難しくなることも考えられます。

建設業では、取引先との信頼関係が非常に重要です。

一度失った信用を回復することは簡単ではありません。

7.名義を貸した人にも責任はある?

名義貸しでは、名前を借りた会社だけでなく、名前を貸した側にも責任が生じる可能性があります。

例えば、実際には勤務していないにもかかわらず、常勤役員等として申請されることを承知のうえで協力した場合です。

その関与の内容によっては、不正な許可取得への関与として法的責任を問われる可能性があります。

また、別の建設会社で役員を務めている方が、他社の許可取得のために名前を貸した場合には、勤務先の会社にも影響が及ぶおそれがあります。

「知人に頼まれたから」

「名前だけなら問題ないと思った」

という理由であっても、安易に協力すべきではありません。

8.なぜ建設業許可の名義貸しを考えてしまうのか?

当事務所に寄せられるご相談の中でも、名義貸しに該当する可能性があるケースには、いくつかの共通点があります。

① 元請会社から急いで建設業許可を取得するよう求められている

最近では、元請会社から下請業者に対して建設業許可の取得を求めるケースがあります。

法律上は許可が不要な軽微な建設工事であっても、元請会社が独自の取引条件として許可取得を求めることがあります。

しかし、許可取得を急ぐあまり、要件を満たしていない人の名前を借りることは認められません。

② 経営業務管理責任者の役割を理解していない

今回のY様も、経営経験のある人に取締役として就任してもらえば、建設業許可を取得できると考えていました。

しかし、常勤役員等には、単に過去の経営経験があるだけでなく、現在の会社で必要な職務を行うことが求められます。

③ 資格者がいれば許可を取得できると思っている

営業所技術者等についても、資格を持っている人の名前を借りればよいと誤解しているケースがあります。

しかし、資格と勤務実態は別の問題です。

④ 許可取得後に交代すればよいと思っている

「とりあえず経験者の名前で許可を取得して、自分が要件を満たしたら交代すればよい」

というご相談をいただくこともあります。

しかし、最初から勤務実態のない人を申請することは認められません。

また、許可取得後に要件を満たす人が退職した場合には、後任者の確保や変更届などの対応が必要になります。

9.経営業務管理責任者がいない場合、建設業許可を取得する方法は?

経営業務管理責任者の要件を満たす人がいない場合でも、すぐに建設業許可の取得を諦める必要はありません。

まずは、現在の会社の役員構成や経営経験などを確認することが重要です。

方法① 自分自身が必要な経営経験を積む

最も分かりやすい方法は、事業主や代表取締役自身が必要な経営経験を積むことです。

一般的には、建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験が代表的な要件となります。

例えば、個人事業主として2年間、法人の取締役として3年間の経験がある場合には、両方の経験を通算できる可能性があります。

ただし、それぞれの期間について、建設業の経営経験を証明する必要があります。

方法② 経営経験のある人を実際に常勤役員として迎える

建設業の経営経験を持つ人を、新たに常勤役員として迎える方法もあります。

ただし、この場合には、実際に会社の経営業務に関与してもらう必要があります。

単に役員登記をするだけでは認められません。

常勤性や職務内容、社会保険の加入状況などについても確認が必要です。

方法③ 常勤役員等を補佐する体制による要件を検討する

現在の建設業許可制度では、一定の経営経験を持つ常勤役員等と、その役員を直接補佐する者を配置することで、経営業務の管理体制の要件を満たせる場合があります。

例えば、建設業の経営経験が5年に満たない場合でも、一定の役員経験や補佐体制などの要件を満たすことで、許可取得の可能性があります。

ただし、細かな要件が定められており、すべての会社で利用できるわけではありません。

方法④ 経験や資格の証明方法を見直す

過去に個人事業主として建設業を営んでいた経験や、別の建設会社で役員を務めていた経験などがある場合には、それらを通算できる可能性があります。

また、営業所技術者等についても、国家資格だけでなく、一定の実務経験などによって要件を満たせる場合があります。

自分では要件を満たしていないと思っていても、詳しく経歴を確認すると、許可取得の可能性が見つかることもあります。

10.今回のご相談では、名義貸しをせずに経験を積むことになりました

今回のY様とK様には、経営業務管理責任者の役割や常勤性の要件、名義貸しによるリスクについて詳しくご説明しました。

お二人とも、最初から法律に違反するつもりだったわけではありません。

単に、経営経験のある人に取締役として就任してもらえば、建設業許可を取得できると思っていたのです。

しかし、経営業務管理責任者は名前だけの存在ではなく、実際に会社の経営業務を管理する重要な役割を担っています。

そのことをご理解いただいた結果、今回の役員就任と建設業許可申請はいったん白紙に戻すことになりました。

そして、Y様ご自身が必要な経営経験を積んだうえで、改めて建設業許可の取得を目指すという結論になりました。

当事務所としても、無理に申請を進めるのではなく、正しい方法で許可取得を目指していただくことが重要だと考えています。

建設業許可は、取得することが最終目的ではありません。

取得した後も、適法に建設業を営み、事業を継続していくことが大切だからです。

11.まとめ|建設業許可は名義貸しではなく、正しい方法で取得しましょう

建設業許可を取得するためには、経営業務の管理体制や営業所技術者等について、法律で定められた要件を満たす必要があります。

そのため、経営経験や資格を持っている人の名前を借りるだけでは、建設業許可を取得することはできません。

実際には勤務していない人を常勤役員等や営業所技術者等として申請した場合には、虚偽申請となり、許可取消しや刑事罰などの対象となる可能性があります。

また、名義貸しによって許可を取得したとしても、後から発覚すれば、会社の信用を大きく損なうことになります。

今回のY様のように、経営業務管理責任者の要件を満たしていない場合には、まず現在の経営経験や役員構成などを確認することが重要です。

場合によっては、過去の経験を通算できたり、別の要件によって許可を取得できたりする可能性もあります。

建設業許可は、無理に取得するものではなく、必要な要件を整えたうえで、正しい方法で取得するものです。

そのためにも、建設業許可の取得を検討されている方は、早い段階で専門家に相談されることをお勧めします。

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トラスト行政書士事務所では、建設業許可の新規申請、更新、業種追加、各種変更届など、建設業許可に関するさまざまな手続きをサポートしております。

建設業許可の取得では、経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件を満たしているかどうかが重要になります。

「経営業務管理責任者になれる人がいない」

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「資格者を雇用すれば建設業許可を取得できるのか」

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お客様のこれまでの経歴や会社の状況を丁寧に確認し、建設業法に基づいた適切な許可取得の方法をご提案いたします。

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