建設業を営んでいる方の中には、「左官工事業の建設業許可を取得したい」「自社が行っている工事は左官工事に該当するのだろうか」「左官工事業の許可を取得するには、どのような要件が必要なのだろうか」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
左官工事業は、建物の壁や床などをこてを使って仕上げる工事を中心とする専門工事です。住宅やマンション、店舗、工場など、さまざまな建築物で必要とされる工事ですが、実際の施工内容によっては、ほかの建設業許可の業種との区別が問題になることもあります。
この記事では、左官工事業の基本的な内容から、具体的な工事例、建設業許可が必要になるケース、許可取得の要件まで、わかりやすく解説します。
1.左官工事業とは?
左官工事業とは、建設業法上の専門工事の一つで、工作物に壁土、モルタル、しっくい、プラスターなどをこて塗り、吹付け、または貼り付ける工事をいいます。
左官工事は、建物の壁や床などを仕上げるために欠かせない工事です。見た目を美しく整えるだけでなく、施工箇所や使用する材料によっては、防水性や耐久性などにも関係します。
近年では、伝統的なしっくい壁だけでなく、モルタル仕上げや意匠性の高い塗り壁など、さまざまな仕上げ方法が用いられています。
左官工事業の建設業許可を取得する際には、自社が実際に施工している工事の内容が、左官工事に該当するかどうかを確認することが重要です。
2.左官工事業に該当する工事の具体例
左官工事業に該当する代表的な工事には、次のようなものがあります。
(1)モルタル塗り工事
建物の壁や床などにモルタルを塗り付ける工事です。
住宅の外壁下地や内壁、床面など、さまざまな場所で行われます。仕上げの種類や施工方法によって、建物の外観や質感も変わります。
(2)しっくい塗り工事
しっくいを使用して、壁や天井などを仕上げる工事です。
伝統的な日本家屋だけでなく、意匠性を重視した住宅や店舗などでも採用されています。
(3)プラスター塗り工事
プラスターなどの材料を使用して、壁や天井を仕上げる工事です。
材料の特性や仕上げ方法に応じて、平滑な面をつくったり、独特の質感を表現したりします。
(4)モルタルによる下地調整工事
仕上げ材を施工する前に、壁や床などの下地を整える工事です。
ただし、下地調整を含む工事であっても、実際の施工内容や主たる目的によって業種の判断が異なる場合があります。
(5)吹付けや貼り付けによる仕上げ工事
壁土、モルタル、しっくい、プラスターなどを吹き付けたり、貼り付けたりする工事も、施工内容によって左官工事に該当します。
なお、同じように壁や床を仕上げる工事であっても、使用する材料や施工方法によっては、塗装工事業、タイル・れんが・ブロック工事業など、別の業種に該当することがあります。
工事名だけで判断するのではなく、実際にどのような施工を行っているのかを確認することが大切です。
3.左官工事業とほかの建設業許可の業種との違い
建設業許可は、工事の種類ごとに業種が区分されています。そのため、左官工事と似た工事を行っている場合でも、必ずしも左官工事業の許可が適切とは限りません。
(1)左官工事業と塗装工事業の違い
左官工事業は、モルタルやしっくいなどをこて塗り、吹付け、貼り付けなどによって施工する工事です。
一方、塗装工事業は、塗料などを工作物に塗り付ける工事を中心とします。
例えば、モルタルを塗って壁面を仕上げる工事と、塗料を塗って壁面を仕上げる工事では、該当する業種が異なります。
ただし、実際の工事では複数の工程が組み合わされることもあるため、施工内容を踏まえて判断する必要があります。
(2)左官工事業とタイル・れんが・ブロック工事業の違い
タイル・れんが・ブロック工事業は、タイル、れんが、ブロックなどを用いて工作物を築造したり、仕上げたりする工事を対象とします。
左官工事業は、モルタルやしっくいなどを塗り付ける工事が中心です。
例えば、モルタルを塗って壁を仕上げる工事と、タイルを張り付けて壁面を仕上げる工事では、基本的に該当する業種が異なります。
(3)左官工事業と防水工事業の違い
防水工事業は、アスファルト、モルタル、シーリング材などを使用する工事のうち、防水を目的とする工事を中心とします。
一方、左官工事業は、壁や床などに材料を塗り付けて仕上げる工事を中心とします。
モルタルなどを使用する場合でも、工事の目的や施工内容によって業種の判断が異なることがあります。
重要なのは、材料の名前だけで業種を判断しないことです。 工事の目的、施工方法、実際の作業内容などを総合的に確認する必要があります。
4.左官工事業の建設業許可が必要になるのはどのような場合?
建設業を営む場合、原則として建設業許可が必要ですが、軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可が不要とされています。
左官工事業のような専門工事では、原則として、1件の請負代金が**500万円未満(税込)**の工事のみを請け負う場合は、建設業許可がなくても営業できます。
一方、1件の請負代金が500万円以上(税込)の左官工事を請け負う場合には、原則として左官工事業の建設業許可が必要です。
なお、注文者から材料の提供を受ける場合や、工事を複数の契約に分けて請け負う場合などには、請負代金の考え方に注意が必要です。正当な理由なく契約を分割しても、許可が不要になるわけではありません。
また、建設業許可には、都道府県知事許可と国土交通大臣許可、一般建設業許可と特定建設業許可という区分があります。
どの許可が必要になるかは、営業所の所在地や請負契約の内容などによって異なります。
5.左官工事業の建設業許可を取得するための要件
左官工事業の建設業許可を取得するには、建設業法に定められた要件を満たす必要があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
(1)経営業務の管理体制
建設業の経営について、一定の経験や管理能力を有する体制が必要です。
建設業の経営経験などを確認し、法令で定められた要件を満たしているかを判断します。
以前の制度で使われていた「経営業務の管理責任者」という言葉だけで判断するのではなく、現在の制度に沿って、経営体制全体を確認する必要があります。
(2)営業所技術者等の配置
営業所ごとに、許可を受けようとする業種について、一定の資格または実務経験などを有する技術者を配置する必要があります。
一般建設業と特定建設業では、求められる技術者の要件が異なります。
左官工事業については、該当する国家資格や、学歴に応じた実務経験、一定期間の実務経験などによって要件を満たせる場合があります。
ただし、資格の種類や実務経験の内容によって判断が異なるため、申請前に確認することが重要です。
(3)誠実性
請負契約の締結や履行に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合には、許可を受けられないことがあります。
(4)財産的基礎など
一般建設業許可では、一定の財産的基礎などを備えていることが求められます。
例えば、自己資本の額や資金調達能力など、法令で定められた基準を満たしているかを確認します。
特定建設業許可では、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件が設けられています。
(5)欠格要件などに該当しないこと
申請者や役員などが、法令で定められた欠格要件に該当しないことも必要です。
これらの要件をすべて満たし、必要書類をそろえて申請することになります。
6.左官工事業の建設業許可を取得するメリット
左官工事業の建設業許可を取得することには、次のようなメリットがあります。
(1)500万円以上の工事を請け負える
建設業許可を取得することで、許可を受けた業種について、軽微な建設工事の範囲を超える工事を原則として請け負えるようになります。
受注できる工事の幅が広がり、事業拡大につながる可能性があります。
(2)元請会社からの信用につながる
元請会社によっては、下請業者に対して建設業許可の取得を求める場合があります。
許可を取得しておくことで、取引先の要望に対応しやすくなり、新たな受注機会につながることもあります。
(3)会社の信頼性を高められる
建設業許可を取得するには、経営体制や技術者、財産的基礎などについて一定の要件を満たす必要があります。
そのため、許可を取得していることが、取引先に自社の体制を説明する際の一つの材料になります。
ただし、許可を取得すれば必ず受注が増えるというわけではありません。自社の施工実績や技術力、取引先との信頼関係なども重要です。
7.左官工事業の建設業許可を取得する際の注意点
建設業許可の申請では、要件を満たしていることを証明するための資料が必要になります。
特に注意したいのが、経営経験と技術者の実務経験です。
経営経験については、過去の役職や事業内容、経営に関与していた期間などを確認します。
技術者については、保有資格や学歴だけでなく、実務経験を証明する場合には、工事の内容や経験期間などを確認する必要があります。
また、請求書、注文書、契約書、確定申告書などの資料が必要になる場合もあります。必要な書類は、申請者の状況や証明する内容によって異なります。
「長年、左官工事を行っているから許可を取得できるだろう」と考えていても、実務経験などを適切に証明できなければ、申請がスムーズに進まないことがあります。
許可取得を検討している場合は、早めに必要書類を確認しておくことをおすすめします。
8.新潟県で左官工事業の建設業許可を取得するならご相談ください
左官工事業の建設業許可を取得するには、自社が行っている工事がどの業種に該当するのかを確認するとともに、経営体制や技術者の資格・実務経験などを整理する必要があります。
また、初めて許可を取得する場合だけでなく、すでに別の業種の許可を取得している会社が、左官工事業を追加する場合にも、確認すべき事項があります。
当事務所では、新潟市および新潟市近郊の建設業者様を対象に、建設業許可の新規取得や業種追加などのご相談を承っております。
当事務所は司法書士法人を併設しており、建設業許可に関する手続きだけでなく、会社の目的変更や役員変更などの登記手続きについても、必要に応じて一体的にご相談いただけます。
「左官工事業の許可を取得できるか確認したい」「技術者の実務経験で要件を満たせるか知りたい」「元請会社から許可取得を求められている」といったお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
建設業許可の取得に向けて、現在の状況を確認しながら、必要な手続きをご案内いたします。



